渋温泉・湯田中駅前温泉


渋温泉街


渋温泉・大湯の浴室


湯田中駅前温泉・楓の湯

 渋温泉は、小さな旅館や土産物屋が軒を連ねる、昔ながらの温泉地である。

 38か所の源泉から、46〜98℃の高温のお湯が、毎分3.1トンも湧いていて、すべての宿に源泉かけ流しの風呂があるという。豪華な設備を持った巨大温泉旅館はないけれど、それゆえ、本当の温泉を楽しみたい人には、かなり魅力的な温泉地と言えよう。

 温泉街には9つの外湯が点在しており、宿泊者は無料で入浴できる。3連休の中日とあって、石畳の通りは、浴衣姿で外湯を巡る人たちの下駄の音が絶えなかった。
 外湯は、それぞれに個性があったが、一番印象に残るのはやはり大湯。鉄分を含んだわずかに白濁した湯が、敷地内からわき出ているのだという。風格ある木製の湯船につかると、多忙な日々のなかでうっ積したストレスがふうっと霧消するような気がした。

 時間の都合で全部の外湯に入ることはできなかったけれど、7つの外湯と旅館の風呂につかり、私は温泉三昧の一夜を過ごした。

 翌日は、バスで湯田中駅に向かい、駅裏にある湯田中駅前温泉・楓の湯に入った。

 最近できた公営の"駅前温泉"。長い歴史が醸し出す風情はないけれど、真新しい施設は清潔かつ快適であった。
 一旦浴槽に入れた湯を循環させないかけ流し方式を採っているのはさすがで、全線乗り潰しを目指す鉄ちゃんにも、せっかく湯田中まで来たのなら、是非ホンモノの温泉を賞味していただきたいと思う。

参考リンク

湯田中→小布施→須坂


長野行き普通列車(信州中野駅)


小布施駅で


小布施駅で

 ゆっくり朝風呂を愉しんだあと、湯田中発11時17分の長野行き特急に乗った。

 列車は、リンゴ畑の中の線路を慎重に下っていく。信州中野到着前、右から新しい廃線跡が近づいてくる。と言うか、より正確に言えば、こちらが廃線跡に近づいていく。2002年に廃止された木島線の跡だろう。
 歴史的に言えば、屋代から木島に至る路線が長野電鉄の本線格で、長野や湯田中に至る路線は支線であった。信州中野からまっすぐ伸びた廃線跡は、その歴史を無言のうちに今に伝えている。

 信州中野で普通列車に乗り換えたが、車両は見覚えのある、旧営団地下鉄日比谷線の電車であった。オリンピックに向けた輸送力増強の一環として、1993年から順次導入されたのだという。
 私が10年に渡る学生生活・研修医生活を終えて奈良に帰郷したのは1991年。私の意識の中の東京は、今でも当時のままである。
 だから、秋葉原や六本木を走っているはずの車両が、のどかなリンゴ畑の中を行く様子には相当な違和感を覚える。実際には、彼らがこの地に来て既に干支がひとまわりするだけの時間が過ぎ、東京メトロと名を変えた地下鉄線では、もっとスマートな03系電車が活躍しているのだけれど。

 ステンレスの車体はまだピカピカで、車内も東京でいた当時のままだが、地下鉄用に造られた車両は窓が小さく、ちょっとうっとおしい感じがした。

 小布施では、列車を1本落として、構内にある『ながでん電車の広場』を見物した。

 まだ本線とつながっている線路に、かつて長野電鉄で活躍した電気機関車1両(ED502)と電車2両(デハニ201・モハ1003)が置かれている。
 このほか、通過信号機のついた腕木式信号機や、古風なトラス橋も展示されていたが、説明文がなかったので、詳細は不明。

 私の鉄道車両に関する知識は、旧国鉄と近鉄に限られるので、これらの車両にいかなる歴史的価値があるのかはわからないが、古い車両を屋根つきの線路の上で大切に保存してくれるのは有り難いことである。


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制作:2005年10月18日 修正:2005年10月28日