天橋立→木津温泉 : 特急タンゴエクスプローラー


KTR8000系(木津温泉駅)


風呂上がりは、やっぱコレ!!


KTR8000系の車内

 『温泉でひと風呂浴びたあとは、ビールに限る。ビールが呑みたいっ!!』-----マイカーでの温泉巡りで、何度この欲求を抑えてきたことか。

 しかし、今日は違う。大手を振ってビールが呑める。天橋立駅売店で、キンキンに冷えた缶ビールを買い込み、私は13時23分発の特急タンゴエクスプローラー1号の乗客となった。

 タンゴエクスプローラー1号は、11時04分に新大阪を発ち、東海道本線、福知山線、北近畿タンゴ鉄道宮福線、同宮津線を経由して久美浜に向かう観光列車である。
 ほんらいはKTR001系というハイデッカー構造の専用車両が充当されるが、今日は普段特急タンゴディスカバリーに使われるKTR8000系4両編成で運転されている。夏休み中の増発・増結に対応するためだと思うが、運用変更の理由は定かではない。

 自由席車の乗客は数えるほどしかいなかった。丹後ちりめんの枕カバーがついた快適なリクライニングシートに腰を下ろして、私は早速缶ビールのプルトップに指をかけた。
 風呂上がり、脱水状態にある身体に冷えたビールが一気にしみこむ。列車の適度な揺れが加わり、私はあっという間に極楽気分である。

 いい気持ちになったところで、丹後探検ならぬ車内探検に出かけることにする。

 KTR8000型は、2両を基本とする特急型気動車で、今日はこれを2編成連結した4両編成である。
 貫通幌をプラグドアで隠したぬめっとした外観は、クジラかウミボウズを思わせる。下り方の運転席直後には、ちょっとした展望室が設けられていて、カブリツキの車窓を楽しめるようになっていた。

 後ろ2両は指定席車だが、こちらはまだ半分以上の座席が塞がっている。用務客が主体の列車では、自由席から混むのが普通だが、観光列車ではその逆だ。私ならさっさと空いた自由席車に移るが、そういうことを考える人は多くないようであった。

 14時ちょうど、木津温泉着。
 次の豊岡行き普通列車までは半時間。この間を利用して、ちょっとマニアックな木津温泉に入ることにする。

木津温泉


木津温泉駅


木津温泉しらさぎ荘


しらさぎ荘の浴室

 源泉掛け流しという言葉をご存じであろうか。

 源泉、つまり、湧き出た(あるいは、汲み出した)湯をそのまま湯船に注ぎ、溢れた湯はそのまま捨ててしまう方式のお風呂で、ファンの間では、最上級の温泉を指す呼称とされている。

 何でこんな言葉が話題になるかいうと、源泉掛け流しの温泉は、そう多くないからである。大抵の温泉浴場では、湯船から吸い上げたお湯をろ過・加熱し、再び浴槽に戻すこと(循環)が普通に行われているのだ。
 広い浴槽に豊富に注がれるお湯。しかし、その多くは、湧き出た温泉ではなく、いま、貴方が入っている湯船から汲み上げたものであることを知っているであろうか。たとえば、JRが募集する『特急北近畿で行くカニと温泉の旅』なんかで連れて行かれる温泉は、まず間違いなく循環式であると思っていい。

 木津温泉は、京都府でも屈指の歴史をもつ古い温泉で、源泉掛け流しの公衆浴場が今も残っている。

 駅から徒歩数分のところに、目指す浴場がある。地図を見ることなく到達できるのは、以前、クルマで下見をしてあったからだが、田畑のなかに数軒の温泉旅館が点在するだけだから、初めてでも道に迷うことはないと思う。

 木津温泉しらさぎ荘は、地区唯一の公衆浴場。ご覧のとおり、相当年季の入った建物で、その浴室もお世辞にも奇麗とは言えない。

 しかし、わざわざ古い車両に乗って悦に入るのが鉄道ファンであるように、ボロくても源泉掛け流しであることに感激するのが温泉ファンである。

 なめらかで清冽なその湯の感触は、源泉掛け流し特有のもの。浴槽から惜しげもなく溢れる湯の音を聞きながら、わたしは恍惚のひとときを過ごした。

 なおこの浴場、源泉温度は36.1℃しかない。だから、浴槽の湯の温度もそれ以下である。狂信的な温泉ファンでない限り、訪問は夏場に限られるので念のため。(詳細はこちら。)


前へ | TOPへ | 次へ


Copyright (C) 2005 Heian Software Engineering. Allrights Reserved.

制作:2005年8月21日 修正:2005年8月31日