急行銀河の夜 |
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列車はゆるやかに減速して、米原に着く。 米原は誰でも知っている鉄道の拠点駅だが、町の規模は意外なほど小さい。 長距離を走る夜行列車は、その運転区間が複数の旅客会社にまたがる場合がほとんどで、会社間の思惑の違いから、積極的な営業施策を打ち出しにくいのだともきいた。 米原を出た列車は、関ヶ原に向かって勾配を登っていく。わずか7両の列車は、EF65にとっては軽すぎる荷だろうが、心なしか速度が落ちたような気がする。 0時52分着の名古屋で、『銀河』は約6分の停車。 減光されたホームでは、女性を含む3人の駅員が列車を監視しており、車掌に『お疲れさまです』と声をかけている。たかだか数十人しか乗っていない寝台列車を安全に運転するために、夜を徹してたくさんの職員が働いているのである。 いろいろ思いを巡らせているうちに、1時を過ぎてしまった。せっかくA寝台を奮発したのに、ベッドでいる時間が短いのはもったいない。 減光された通路を通って、1号車8番上段の寝床にもぐりこむ。すっかり酔っぱらった私は、ものの3分もしないうちに深い眠りに落ちたようである。 |
東京へ |
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品川- 東京間で
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5時50分。予定の時刻に目が覚めた。もうすぐ、大船到着まえの"おはよう放送"が始まる時刻である。MDをセットして、アナウンスを待ちかまえる。 録音を終えてもうひと寝入りしたら、『銀河』は既に品川駅を出たところであった。 列車は、林立するオフィスビルの谷間を東京駅に向けてゆっくりと走っている。我々関西人にとっては、東京に来たことを実感するおなじみの車窓風景である。 定刻、東京駅9番線着。『銀河』から降り立った少しの乗客が消えると、ホームにはカメラを手にした数人の鉄道ファンが残るのみとなった。 大阪から『銀河』を牽いてきた機関車はすぐに切り離され、10番線を通って有楽町方の機待線へ入る。係員の誘導で9番線に入り、再度客車と連結。車庫への回送準備が整う。 7時08分、『銀河』の編成が去ったあとのホームに、出雲市・高松からやってくる寝台特急『サンライズ出雲・サンライズ瀬戸』が到着する。ドアが開くと、『銀河』よりもはるかに多くの客がホームに降り立った。 このあと東京駅に着く夜行列車は、9時58分着の寝台特急『富士・はやぶさ』1本のみ。あまりに淋しい現実だが、今後、寝台列車が復活する要素は、鉄道ファンの私が贔屓目にみても皆無に等しいと思う。 |