MOTOROLA HT1000 / JT1000


HT1000

HT1000

 "JEDIシリーズ"は、同社のミドルクラスの業務用無線機で、米国では消防/救急/電力/ガス/鉄道といった公共性の強い業務で使用されることが多いという。我が国ではマスコミ関係で多用されているし、一部の私鉄や大規模な事業所等でも使用されているようだ。

 HT1000は、"JEDIシリーズ"の基本となるモデルで、最大16chの設定ができる。VHFモデル(136〜174MHz)は5W、UHFモデル(403〜470MHzと470〜520MHzの2種類がある)は4W、800MHzモデル(806〜870MHz)は3Wの出力だ。VHFモデルとUHFモデル(403〜470MHz)は、そのままアマチュア無線機として使える。

 さて、最近のアマチュア用ハンディ機には、トーンスケルチ、ディジタルコードスケルチ、スキャン、プライオリティ受信etc、驚くほど多彩な機能がついている。他方、無線機自体はたいへん小型化されているから、これらの機能を利用するためには、ちっちゃなキーを何回も押さねばならない。
 けれども、無線機に備わった機能のすべてを常時フル活用する人は稀で、無線機を買った直後はいろいろ試してみるものの、しばらくすると、自分が必要な機能以外は使わないのが普通ではないか。すなわち、アマチュア無線機の実使用にあたっては、その機能のうち、自分が必要とするものだけをワンタッチで利用できればいいのだけれど、現実には、何回もキーを押さないと目的の操作ができない。

 実は、HT1000をはじめとするMotorolaの業務用無線機には、最近のアマチュア用ハンディ機にも決してひけをとらない位の多彩な機能が備わっている。もちろん、一定の周波数範囲内で自由に周波数を変更できるアマチュア無線と違って、業務用無線では、当局から割り当てられた周波数以外の電波を使うことはできないから、周波数の設定に関してはまったく自由が利かないけれど、それ以外の機能は、実に豊富だ。特に、特定の無線機を呼び出す機能(Signalling)については、アマチュア無線機の比ではない。

 しかし、業務用無線機はプロの道具であるから、使いやすくてはならない。使用者の意図した操作がワンタッチで行える必要がある。そこで、無線機がユーザーに納入される際に、カスタマイズが行われる。つまり、ユーザーの使用目的に照らして、必要な機能だけを迅速に利用できるようにプログラムするのである。

 HT1000の操作系は、DTMF信号送信用のキーパッドを除けば、つぎの8つである。

 このうち、最初から機能が決まっているのは無線機として必須の前3者だけであって、サイドボタン、トップボタン、トグルスイッチについては、あらかじめユーザーが指定した機能を割り付けることになっている。

 これらスイッチの機能の割り付けをはじめ、周波数の設定、各種の調整などは、例によってすべてソフトウエア的に行ことになっている。見方を変えれば、メーカー出荷時点のHT1000は単なる"素材"であって、ユーザーの手に渡る段階で、ディーラーによって"加工"がなされるわけだ。

 この無線機、当然のことながら、"未知の無線局を発見する"ような用途にはまったく向いていない。けれども、本来の目的どおり、特定の周波数で特定の局と通信する、あるいは、特定の周波数をワッチする際には、絶大な威力を発揮する。

 VISARの解説で書いたとおり、強電界下での耐妨害性は特筆すべきものがある。隣接チャネルで強力な電波が発射されていても、目的の通信を確実に受信できる。
 IFフィルタを周波数ステップ(25KHz/20KHz/12.5KHz)に合わせて3段階に調整できるのも大きい。たとえば、430MHzのFMアマチュア無線機は、20KHzステップに最適のIFフィルタが装着されているのが普通で、12.5KHzステップの業務通信をワッチするには不都合が多い。強力な電波を常時発射している集中基地局方式のタクシー無線を受信すると、その隣接チャネルではいわゆる"カブリ"が生じるが、HT1000/JT1000では、そのような現象は皆無である。
 高速PLLを活かしたスキャンも快適だ。最大16chのスキャンが可能。動作が非常に速いので頭切れが少なく、あたかも全波を同時ワッチしているような感覚である。しかも、これらの動作がスイッチひとつでon/offできる。(アマチュア無線機ならば、液晶表示を見ながら、何回もボタンを押さねばならないところである。)

 

外観

 (H)160mm×(W)59mm×(D)38mm、573g(電池含む)。

 正直言って、重くてデカい。大柄な西洋人ならともかく、日本人が常時持ち歩くのは少々苦痛である。外部スピーカマイク(NMN6193)ですら、VX-1より大きい。

 写真に示したのは、キーパッド付きのモデル。
 キーパッドは、フォーンパッチのためのDTMF信号送信のためだけに使用され、周波数設定その他の機能は持たない。

 

トップパネル

 チャネル選択つまみ(channel selector)で16chの中から希望の周波数を選ぶ。
 このスイッチ、左に回し切った位置が1chで、右に回し切ると16chである。だから、たとえば4chに切り替えたいときは、一旦左に回し切ったあと、カチ、カチ、カチと3chぶん右に回せばよい。無線機に視線を遣ることなく感触だけで操作ができるわけだ。
 トグルスイッチ(three position toggle switch)も同じ効果を狙っている。

 オレンジ色のボタン(orange top button)は、非常発報用。外部スピーカマイクは、特殊なロック付きコネクタで接続される。

 トップパネルには、赤/緑の2色LEDがあり、無線機の動作状況を確認できる。

 

アンテナ

 アンテナは、VISARと同じSMAタイプ。(写真は、JT1000)

 

PTTスイッチとサイドボタン(Side button)

 PTTスイッチと3つのサイドボタン。

 青色がサイドボタン1(SB1)、その下がSB2とSB3。SB1〜SB3の機能は、ソフトウエアで割り当てる。

 

ユニバーサルコネクタ(universal connector)

 外部スピーカマイク等を接続する端子。もちろん、金メッキの高信頼設計。アンテナ関係の信号線も引き出されているので、外部ブースタ等を接続することも可能である。

 無線機をプログラムする際も、この端子を利用する。

 

リヤパネル

 放熱板を兼ねたダイキャスト製。例によって、ネジを1本も使わない構造。

内部を見る(JT1000)

 ツマミ類を外し、リヤパネルの下方をマイナスドライバーでこじると、簡単に分解できる。
 強化プラスチックのボディ側には、スピーカとLCD/キーボード関連の若干の部品があるだけ。
 本体側のメイン基板は、ほぼ全体がシールドケースに納められていることがわかる。オレンジ色のヒモ状の部品は、Oリング。容易に水滴が侵入しない構造だ。

 

現場で見かけたJEDIシリーズ

 高松琴平電鉄で列車無線機として使用されるJEDIシリーズ。恐らく、HT1000。VHF用のワイドバンドホイップアンテナと外部スピーカマイクがついている。
 2003年9月撮影。

JT1000

 JT1000は、HT1000をベースに、ユーザーによる周波数設定(field programming)を可能にしたモデルである。
 と言っても、現場で実際に無線機を扱う人が周波数を自由に設定することは想定していない。あくまでも、しかるべき管理者が周波数を設定するのである。すなわち、キーボードからの周波数設定には、"programming key"と呼ばれる治具をユニバーサルコネクタに取り付けた上で、更に暗証番号を入力する必要がある。したがって、ユーザーによる周波数設定に関しては、アマチュア無線機と同等の操作性をもつわけではない。
 この"programming key"、さぞかし大層な仕組みであると思われるであろうが、中身はダイオード1本である。だから、サードパーティー製の"programming key"が数多く出回っている。

 なお、RSSを使うことによって、この周波数設定機能を禁止することもできるし、ユーザーが設定できる周波数の範囲を制限することも可能である。メーカー出荷時の暗証番号は"581000"だが、これも変更可能。


JT1000

免許申請

 TSSの保証を受けることによって、アマチュア局の無線設備として免許を受けることができる。
 下記は、申請書類の記載例。私がサービスマニュアルなどを参考に作成し、実際に免許申請に使用したもので、Motorola社の公式スペックとは異なる可能性がある。

機 種 VHFモデル UHFモデル
発射可能な電波の形式、周波数の範囲 F2D,F3E 144MHz帯 F2D,F3E 430MHz帯
変調の方式 リアクタンス変調 リアクタンス変調
定格出力 5W 4W
終段管 名称個数 5105625U03×1 5105625U04×1
終段管 電圧 7.5V 7.5V
送信機系統図(PDFファイル) JEDI_VHF.pdf JEDI_UHF.pdf

Test Mode

 HT1000/JT1000は、電源投入時のSelf Testのほかに、Test Modeが装備されている。その概要は次のとおり。

  1. 電源を入れる。
  2. Self Testが終わって(beep音が鳴って)から10秒以内に、side button 3(SB3)を5回押す。JT1000の場合は、液晶ディスプレイにファームウエアのバージョンが表示される。
  3. beep音が1回鳴って、Test Channel 1にセットされる。
  4. キャリアスケルチとなっているので、受信周波数の信号があるとスケルチが開く。PTTを押すと、マイクからの音声が送信される。
  5. side button 2(SB2)を1回押すと、beep音が2回鳴る。トーンスケルチとなっているので、受信周波数の信号にトーンが乗っているとスケルチが開く。PTTを押すと、マイクからの音声及びトーン信号が送信される。
  6. 以下、fig2のとおり、SB2を押すたびにキャリアスケルチ→トーンスケルチ→ディジタルコードスケルチと切り替わる。
  7. SB3を1回押す。beep音が2回鳴って、Test Channel 2にセットされるので、4.から6.の操作を行う。
  8. 以下、fig1のとおり、SB3を押すたびにTest Channelの周波数が切り替わる。
  9. SB3を3秒以上続けて押すと、Control Head Test Modeになる。全てのボタンを押す/トグルスイッチ及び周波数切替えつまみを操作する/音量つまみを動かすたびに、beep音が鳴る。スイッチ類の不良を検査できる。
  10. 電源offとすると、Test Mode終了。
beep音の数 Channel VHF UHF1 UHF2
1 TX 1 136.025 403.100 450.025
RX 1 136.075 403.150 450.075
2 TX 2 142.125 424.850 465.225
RX 2 142.075 424.900 465.275
3 TX 3 154.225 438.050 475.225
RX 3 154.275 438.100 475.275
4 TX 4 160.125 444.050 484.975
RX 4 160.175 444.100 485.025
5 TX 5 168.075 456.350 500.275
RX 5 168.125 456.400 500.225
6 TX 6 173.975 463.700 511.975
RX 6 173.925 463.750 511.925
SB3を押すたびに、1→2→3→4→5→6→1→2...と切り替わる。

fig1 : Test Mode周波数(MHz)

beep音の数 操 作 動 作
1 TX マイクからの音声を送信
RX キャリアスケルチ
2 TX マイクからの音声+トーンスケルチ信号(192.8Hz)を送信
RX トーンスケルチ(192.8Hz)
4 TX マイクからの音声+ディジタルコードスケルチ信号(131)を送信
RX ディジタルコードスケルチ(131)
SB2を押すたびに、1→2→4→1→2...と切り替わる。

fig2 : SB2を押したときの動作

オプション

 Motorola社のサイトを見ると、膨大な種類のオプションが準備されている。主なものは下記のとおり。

NAD6566 ヘリカルアンテナ(136〜151MHz, 全長:195mm) [絶縁体色:黄]
NAD6567 ヘリカルアンテナ(151〜162MHz, 全長:183mm) [絶縁体色:黒]
NAD6568 ヘリカルアンテナ(162〜174MHz, 全長:172mm) [絶縁体色:青]
NAD6563 ワイドバンドヘリカルアンテナ(136〜174MHz, 全長:203mm) [絶縁体色:赤]
NAE6546 ヘリカルアンテナ(403〜435MHz, 全長:83mm) [絶縁体色:赤]
NAE6547 ヘリカルアンテナ(435〜470MHz, 全長:80mm) [絶縁体色:緑]
NAE6548 ヘリカルアンテナ(470〜520MHz, 全長:79mm) [絶縁体色:黒]
NAE6549 ワイドバンドホイップアンテナ(403〜520MHz, 全長:130mm) [絶縁体色:灰]
NTN7143 大容量(High-Capacity)NiCd電池
NTN7144 超大容量(Ultra-High-Capacity)NiCd電池
NTN7146 大容量NiCd電池(防爆型)
NTN7147 超大容量NiCd電池(防爆型)
NTN7341 超大容量NiCd電池(防爆型)
NTN7372 超大容量NiCd電池(防爆型)
NTN7319 アルカリ電池パック(電池交換不可, JT1000専用)
NMN6191 外部スピーカマイク(ノイズキャンセリング型)
NMN6193 外部スピーカマイク
NMN6228 外部スピーカマイク(アンテナ端子付, "Public Safty Speaker/Microphone")

     
 

注 意

 ここに記載された情報は、私が独自に収集したものです。内容の正確性については保証しません。あなたの自己責任でご利用ください。

 
     

 

     
 

警 告

 この無線機を使用する場合、総務大臣の免許が必要です。アマチュア無線機として使用する場合は、自作無線機としてTSSの保証を受ける必要があります。

 
     

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2004年3月14日 制作 2006年2月23日 修正