ETCを使った高速代節約術

 鉄道ファンを自称する私も、温泉めぐりはもっぱらマイカー利用である。辺鄙な場所に散在する名湯を訪ねようとすると、事実上、自動車以外の選択肢がないからだ。

 最近は、どんな山奥に行っても立派な二車線道路が整備されていて、車載ナビの指示に従ってクルマを走らせれば、短時間で目的の温泉に到達する。"お酒が呑めない"、"風呂あがりについうとうとしてしまう"という欠点をのぞけば、クルマによる温泉めぐりは極楽である。

 けれども、頭痛の種がない訳ではない。それは、高額な高速道路の通行料である。
 たとえば、私の自宅に近い中国吹田ICから湯原温泉最寄りの米子道湯原ICまで、よっぽどゆっくり走っても3時間足らずだが、通行料(普通車、以下同じ)は4,650円もする。ガソリン代を含めると往復1万円を超える出費になって、マイカーによる温泉めぐりも安くはない。

 ところが、去年(2004年)秋から、日本道路公団(JH)が大幅な料金割引を始めた。

  1. ETC深夜割引
     0時から4時までの間に高速道路を利用すると、通行料が3割引になる。
  2. ETC通勤割引
     6時から9時または17時から20時の間に高速道路(100Km以下)を利用すると、通行料が5割引になる。 (05年1月から)
  3. ETC早朝夜間割引
     22時から翌6時の間に高速道路(100Km以下)を利用すると、通行料が5割引になる。(05年1月から)

 いずれもETCを利用することが条件だが、深夜割引なら30%off、通勤割引や早朝夜間割引に至っては、料金半額という超出血大サービスなのだ。

 この大ディスカウントを利用しない手はない。そこで、JHの割引制度を少し研究してみることにした。

ETC深夜割引

 0時から4時までの間に高速道路を走れば、全区間の通行料が3割引になる制度である。

 つぎの条件をすべて満たす走行に対して適用される。

 割引条件からみて、主として深夜走行する長距離トラック向けの制度と考えられる。
 かつては、夜を徹してハンドルを握ったり、あるいは、自宅に帰り着くのが"午前様"になることがあったけれど、最近はそんな無茶をすることはないので、いまの私にはあまり縁がなさそうである。

例1

例2

浜田IC
(20:30)
中国吹田IC
(01:00)
387.3Km
8,200円 → 5,750円
吹田IC
(23:00)
東京IC
(06:00)
514.6Km
10,650円 → 7,450円
 中国吹田IC着が夜1時なので、割引の対象である。  0時から4時を含む場合でもOK。

ETC通勤割引

 大都市近郊を除けば、今やマイカー通勤があたりまえになった。地方都市では、朝夕のラッシュ時に大都市顔負けの渋滞が起きる。
 そこで、通勤時間帯に高速道路の通行料金を割り引き、高速道路の利用を促すと同時に一般道路の渋滞を少しでも緩和しようという狙いで設けられた制度である。

 つぎの条件をすべて満たす走行に対して適用される。

 ただし、大阪と東京周辺の一部区間(大都市近郊区間:後述)には適用にならない。また、ETC深夜割引と異なり、割引時間帯に必ず入口または出口料金所を通過しないといけない。さらに、割引が適用されるのは、朝夕の時間帯につき、それぞれ1日1回だけである。
 けれども、"通勤"と称していながら、平日に限定されていないことは注目に値する。つまり、休日の温泉めぐりにも活用できる制度なのである。

例3

例4

神戸三田IC
(08:00)
福知山IC
(08:40)
57.2Km
1,650円 → 850円
浜田IC
(16:30)
広島IC
(18:30)
93.4Km
2,550円 → 1,300円
 もっとも基本的な適用例。
 なお、割引後の50円未満の端数は24捨25入することになっている。
 広島の温泉ファンが島根の温泉を訪ねるときも、高速代半額なのだ(広島IC通過が時間内)。

例5

例6

西宮IC
(08:00)
大津IC
(08:50)
61.7Km
2,050円
神戸三田IC
(05:50)
福知山IC
(09:10)
57.2Km
1,650円
 西宮IC-大津ICは、全区間大都市近郊区間内なので、適用外。
 指定時間帯に料金所を通過していない場合は、割引対象にはならない。

例7

神戸三田IC
(07:30)
美作IC
(08:50)
102.7Km
2,800円
 100Kmを超える利用は、全部が割引の対象外。

例8

神戸三田IC
(07:30)
作東IC
(08:35)
94.5Km
2,600円 → 1,300円
作東IC
(08:40)
美作IC
(08:50)
8.2Km
350円
 ETC通勤割引が適用されるのは、朝夕それぞれ1回だけ。この例のように、たとえば朝の時間帯に条件に合致する利用が2回以上あっても、割引が適用されるのは1回目のみである。
 しかし、例7と見比べているあなたは、なかなか鋭い着眼力の持ち主である。

 冒頭で、『通勤割引は大都市近郊区間には適用されない』と書いたが、より正確に言うと、つぎのようなパターンでも、実は割り引きが適用される。

例9

中国吹田IC
(08:50)
山崎IC
(10:15)
99.6Km
2,900円 → 1,900円

 中国吹田ICから山崎ICのうち、西宮北ICまでの区間は、大都市近郊区間に指定されている。中国吹田ICで高速にのった時刻はギリギリ通勤割引の適用時間内。西宮北IC通過は9時を過ぎているが、山崎IC流出時に引き落とされる通行料には、通勤割引が適用されるのである。ただし、割り引き対象になるのは、西宮北IC-山崎ICの通行料に相当する部分のみなので、全区間の正規通行料2,900円が半額の1,450円になるわけではない。

 この例のように、大都市近郊区間とそうでない区間を連続して走行した場合の通勤割引適用通行料に関しては、JHから明確な算定基準は示されていない(少なくともWebsite上では) ので、個々にハイウェイナビゲータで検索するしかない。しかし、概ね、大都市近郊区間でない区間の正規通行料の半額が、全体の正規通行料から差し引かれた額になっているようである。

ETC早朝夜間割引

 大阪や東京近郊の高速道路は、現在でも朝夕の通勤時間帯にかなりの渋滞ができる。ここにETC通勤割引を適用すれば、更に混雑に拍車をかけることになるので、その適用は見送られた。
 その代わりというわけではないのだろうが、ETC通勤割引の恩恵を受けない大都市近郊区間には、早朝夜間の走行が大幅に割引になる制度が設定されることになった。

 つぎの条件をすべて満たす走行に対して適用される。

 朝寝坊の私が、朝6時前にクルマに乗ることはまずないけれど、帰宅が22時をすぎることはままあり、この制度を使うチャンスは少なからずあると思われる。

例10

例11

西宮IC
(22:10)
大津IC
(23:00)
61.7Km
2,050円 → 1,050円
京都東IC
(20:40)
木之本IC
(22:10)
95.9Km
2,650円 → 1,350円
 もっとも基本的な適用例。
 大都市近郊区間が含まれていれば、それ以外の区間も割引になる。木之本IC着が22時を過ぎているので、(大都市近郊区間内の)京都東IC通過時刻は問われない。

例12

神戸三田IC
(20:50)
栗東IC
(22:10)
92.9Km
2,900円 → 1,450円
 大都市近郊区間を通過するかたちになってもかまわない。

例13

例14

大津IC
(20:50)
木之本IC
(22:10)
92.6Km
2,550円
京都南IC
(20:30)
木之本IC
(22:10)
105.8Km
2,900円
 大都市近郊区間を走行しない場合は、適用外である。
 100Kmを超える利用は、全部が割引の対象外。

例15

西宮IC
(21:55)
大津IC
(06:05)
61.7Km
2,050円 → 1,450円
 入口・出口ともに、指定時間帯に通過していない。この場合は、ETC深夜割引の対象となり、3割引。

例16

彦根IC
(21:00)
茨木IC
(22:10)
98.5Km
2,900円 → 1,450円
茨木IC
(22:15)
福崎IC
(23:10)
81.9Km
2,450円 → 1,250円
 ETC通勤割引と違って、ひと晩に何回でも適用可能である。ちなみに、彦根IC-福崎ICの正規通行料金は、4,600円。

大都市近郊区間について

 JHの定めた大都市近郊区間は、大阪及び東京近郊の下記の区間である。(JHのサイトから引用)

割引対象となる"高速道路"について

 ここで言う高速道路とは、JHが管理する高速自動車国道のことである。
 JH以外の事業者が管理する有料道路、たとえば阪神高速や首都高速、本四連絡道路などの通行料には、ここに掲げた3つの割引制度は適用にならない。
 また、JHが管理する"高速道路"であっても、一般有料道路は適用外である。
 たとえば、京奈和自動車道や京都縦貫自動車道は、一見高速道路のような名前だし、実態もそうなのだが、正確には自動車専用の一般有料道路なので、割引制度は適用にならない。南紀の温泉めぐりに必ず利用する阪和道も、実は吉備ICと御坊ICの間だけが湯浅御坊道路という自動車専用の一般有料道路であり、この区間の料金は割引制度の対象外である。
 ただし、京滋バイパスと東海環状自動車道は、一般有料道路ではあるが、高速自動車国道と一体になったネットワークを形成しているという理由で、例外的に割引制度が適用になる。
 何でこんなややこしいことになっているのか----恐らくは、地元に高速道路を作りたい国会議員センセイと財務官僚の虚々実々の駆け引きの結果だと思うのだが、とにかく厄介なことこのうえない。

 阪和道に代表される高速自動車国道と一般有料道路の料金を一括して収受する場合の扱い、あるいは、西名阪や近畿道のような均一区間に対する扱いなどは、本稿では触れなかった。詳細はJHのサイトを参照していただきたい。

"東海環状問題"

 前のコラムで、『京滋バイパスと東海環状自動車道は、例外的に割引制度が適用になる』と書いたが、この2つの道路は高速自動車国道ではないから、その通行料金は全国一律の基準ではなく、それぞれ独自のローカルルールによって算定されることになる。両道路の通行料算定基準は明らかではないが、全国一律の基準より高いことは疑いがない。

 2つのインターチェンジ間に複数のルートが存在し、かつ、経路ごとに通行料算定基準(距離あたりの単価)が異なると、ETC通勤割引の適用に際してたいへん厄介な問題が起きる。

 上図は、名古屋付近の高速道路網の略図である。ここで、恵那IC-音羽蒲郡ICの通行料を考える。

 ハイウェイナビゲータで検索すると、恵那IC-音羽蒲郡ICは93.8Km、通行料は2,850円である。100Km以下であるから、ETC通勤割引の適用になるかと思いきや、じつはその適用がないのだ。なぜか。

 JHによると、複数のルートが存在するインターチェンジ間の通行料金は、次の条件を満たす限り、実際に走行した経路にかかわらず、もっとも安くなる経路(料金計算経路)の料金が適用される。

  1. 一度通過したインターチェンジまたはジャンクションを2度と通過しないこと。
  2. 距離が最短経路の2倍以内であること。

 東海環状自動車道の料金水準は中央道や東名高速より高いので、恵那IC-音羽蒲郡ICの通行料は、小牧JCT経由で計算したもののほうが安い。2,850円という値段は、より正確に言えば中央道・小牧JCT・東名高速経由で算出したものなのだ。
 他方、インターチェンジ間の距離は、一般的には最短経路(距離表示経路)で示される。恵那IC-音羽蒲郡ICの距離:93.8Kmは、最短経路となる東海環状自動車道経由のものである。

 ここで、中央道・小牧JCT・東名高速を経由した場合の恵那IC-音羽蒲郡ICの距離が100Km以下であれば何の問題も起きないのだが、これが106.2Kmあるので話がややこしくなる。恵那IC-音羽蒲郡ICの通行料:2,850円は小牧JCT経由のものであり、その算定根拠となる両インターチェンジ間の小牧JCT経由(=料金計算経路)の距離が100Kmを超えているので、ETC通勤割引の適用はないというのである。

 ならば、東海環状自動車道経由で計算した通行料の半額を恵那IC-音羽蒲郡ICのETC通勤割引適用通行料とすればいいと思うのだが、全国展開のJHとすると、そこまで細かい例外規定は設定できないということなのだろう。

 土岐JCT-豊田JCT間の料金計算経路と距離表示経路が異なることに端を発した"東海環状問題"、恵那IC-音羽蒲郡ICに限らず、中央道対東名と中央道対伊勢湾岸自動車道の多くのインターチェンジ間で起きるようなので、中京圏にお住まいの方は注意したほうがよい。

 なお、関西の瀬田東IC-上山崎JCT間も、名神高速に較べてより料金水準の高い京滋バイパス経由のほうが距離が短い。けれども、その差は僅少(0.1Km)なので、影響を受けるのは久御山淀IC-長浜ICを走行する場合だけである。

割引制度の活用を考える

 これまでに述べた各種割引制度の要点を踏まえた上で、温泉めぐりの高速代を少しでも安くする方法を考察する。

例17

湯原IC
(19:30)
中国吹田IC
(22:15)
190.5Km
4,650円

 湯原温泉最寄りの米子道湯原ICから、自宅最寄りの中国吹田ICまでは、190.5Kmある。途中、休憩をはさんで、約3時間弱のドライブだ。
 休日の夕方、宝塚東トンネルを先頭とする中国道上りの渋滞は有名で、通過に1時間以上を要することも少なくない。そこで、混雑が解消しつつある時間帯に通過できるよう、わざと帰宅を遅くすることが多い。
 けれども、これまで示した割引制度はいずれも適用にならず、通行料は正規料金の4,650円である。

 そこで、ちょっと工夫して、途中の山崎ICで一旦高速道路をおりることにする。

例18

湯原IC
(19:30)
山崎IC
(20:45)
90.9Km
2,500円 → 1,250円
山崎IC
(20:50)
中国吹田IC
(22:15)
99.6Km
2,900円 → 1,450円

 湯原ICで高速にのったのが20時まえであるから、ETC通勤割引の条件に合致し、湯原IC-山崎ICの通行料は、正規料金の半額:1,250円になる。
 もっとも、山崎ICに用があるわけではないので、すぐさま踵を返して再び山崎ICから中国道に入る。
 大都市近郊区間内にある中国吹田IC到着が22時を過ぎているから、ETC早朝夜間割引の適用を受ける。その結果、山崎IC-中国吹田ICの通行料は、正規料金の半額:1,450円だ。

 結局、湯原ICから中国吹田ICまでの走行に要した通行料は、1,250円 + 1,450円 = 2,700円。山崎ICでのりおりしなかった場合の4,650円と較べて、40%以上安くなってしまう。

 このようなETC通勤割引+ETC早朝夜間割引の"ダブル割引"が成立するのは、つぎのすべての条件に合致する場合である。

  1. 郊外のAインターチェンジから、都心(大都市近郊区間内)のBインターチェンジに行く。
  2. A-B間の距離は、100Kmを超え、200Km以下である。
  3. A・Bからの距離が共に100Km以下の"途中下車"インターチェンジが存在すること。
  4. Aを17時から20時までの間に通過すること。
  5. Bを22時から6時までの間に通過すること。

注:早朝、大都市近郊区間内から郊外に向かう場合にも成立しうるが、私がETC早朝深夜割引適用の朝6時前に出発することはありえない。

 

 次は湯郷温泉最寄りの美作ICからの帰路を考えてみよう。

 美作IC-中国吹田ICは、139.4Kmある。"ダブル割引"の適用を検討すべき距離だ。美作IC・中国吹田ICからともに100Km以下の"途中下車"インターチェンジ候補は、山崎IC・福崎IC・加西IC・滝野社IC・ひょうご東条IC・吉川ICの6つであり、各インターチェンジでのりおりした場合の合計通行料の試算は、下表のごとくとなる。

"途中下車"するIC
山崎 福崎 加西 滝野社 ひょうご
東条
吉川
美作から 1,200円
600円
(39.8Km)
1,700円
850円
(60.2Km)
1,950円
1,000円
(70.3Km)
2,200円
1,100円
(80.0Km)
2,550円
1,300円
(91.8Km)
2,650円
1,350円
(95.7Km)
2,900円
1,450円
(99.6Km)
2,350円
1,200円
(79.2Km)
2,100円
1,050円
(69.1Km)
1,850円
950円
(59.4Km)
1,550円
800円
(47.6Km)
1,450円
750円
(43.7Km)
中国吹田へ
2,050円 2,050円 2,050円 2,050円 2,100円 2,100円
合計の通行料金(赤字、黒字は正規通行料)
"途中下車"しない場合
美作から 3,650円
(139.4Km)
中国吹田へ

 道路がすいていれば、美作IC-中国吹田IC間は1時間半くらい。18時過ぎに美作ICを通過すると、宝塚付近の渋滞がなければ20時まえには中国吹田ICに着いてしまう。

 そこで、上記のいずれかのICで"途中下車"して、ひと風呂浴びるのはいかがであろうか。
 滝野社ICなら滝野温泉ぽかぽ、吉川ICなら吉川温泉よかたんが至近距離にある。ゆっくりお湯につかって、なおかつ夕食を摂っても、"途中下車"しないときの通行料でお釣りがくる。

 なお、早めに帰宅したい(中国吹田IC通過が22時以前)の場合も、吉川ICでかたちだけの"途中下車"をしたほうがトクである。吉川IC-中国吹田ICの通行料(1,450円)は割引にはならないけれど、美作IC-吉川ICの通行料がETC通勤割引の対象となり(2,650円 → 1,350円)、"途中下車"しない場合(3,650円)に較べて850円安くなることがおわかりいただけよう。

 

 調子に乗って、今度は200Kmを超える例を考える。

例19

浜田IC
(17:30)
中国吹田IC
(22:30)
387.3Km
8,200円

 例1で、中国吹田IC着が0時前の場合である。この場合、ETC深夜割引は適用にならない。そこで、浜田IC-中国吹田ICを3分割してみる。

例20

浜田IC
(17:30)
三次IC
(18:40)
93.7Km
2,600円 → 1,300円
三次IC
(18:45)
山崎IC
(21:00)
194.0Km
4,550円
山崎IC
(21:05)
中国吹田IC
(22:30)
99.6Km
2,900円 → 1,450円

 1,300円 + 4,550円 + 1,450円 = 7,300円。正規料金(8,200円)より安くなることは確かだが、料金所を出たとたんにUターンするという危険かつ不審な運転を2回も要する割には得られるものが少ない。ここまでやると、温泉でほっこりあたたまった心が、再び寒々としたものになってしまいそうだ。

 やはり、過ぎたるは及ばざるが如し、というところであろうか。

 

 さて、先ほどは湯郷温泉からの帰路を考察したが、今度は逆に中国吹田ICから美作ICに行く場合を考える。

 中国吹田ICを朝6時まえに通過し、かつ、6時から9時(=通勤割引の適用時間帯)の間に前述の6つの"途中下車"インターチェンジ候補のうちのいずれか1か所でのりおりすれば、ETC早朝夜間割引+ETC通勤割引の"ダブル割引"が成立する。
 しかし、残念ながら私には5時起きしてまで通行料を節約するほどの気力はないので、中国吹田ICから高速にのるのは、どんなに早くても7時半であろう。例によって、中国吹田ICから100Km以内の最遠インターチェンジ---山崎ICで"途中下車"をする。

例21

中国吹田IC
(07:30)
山崎IC
(08:50)
99.6Km
2,900円 → 1,900円
山崎IC
(08:55)
美作IC
(09:20)
39.8Km
1,200円

 中国吹田IC-山崎ICの利用は、通勤割引の適用である。ただし、大都市近郊区間を含んでいるから、半額にはならない。山崎ICで再び高速にのった時刻は通勤割引の適用時間内だが、2回目の利用は適用にならないのは前述のとおりである。それでも、通行料のトータルは3,100円で、正規通行料3,650円より550円安い。西宮名塩SA(下り)のドトールで、香り高いモーニングコーヒーを味わう費用を捻出できたことになる。

 ここで、少し悪知恵(---決して"不法行為"ではないが!)を働かせてみる。

 まず、中国吹田ICではETC車載器からカードを抜き去り、非ETC車と同じように通行券を受け取って高速にのる。そして、吉川ICで"途中下車"。通行券にETCカードを添えてブースのおじさんに渡す。
 ここに掲げたETC関連の割り引きは、すべて、入口料金所をETC無線通信により通過することが条件となっていることに注目願いたい。つまり、中国吹田ICから吉川ICまでの走行は通勤割引の対象にはならない。あなたのETCカードからは、正規通行料1,450円が引き落とされるはずである。

 おじさんからETCカードを返してもらったら、今度はこれをETC車載器にセットして直ちにUターン。ETCゲートを通過して一気に美作ICに向かおう。山崎IC-美作ICの利用にはめでたく通勤割引が適用され、正規通行料2,650円が1,350円になる。合計2,800円で、例21より更に300円安くなった。

例22

中国吹田IC
(07:30)
吉川IC
(08:05)
43.7Km
1,450円
吉川IC
(08:10)
美作IC
(09:20)
95.7Km
2,650円 → 1,350円
※中国吹田ICでは、ETCゲートを使わない。

 この裏技(?)、中国吹田ICでETCゲートを使わないで意図的にETC通勤割引の適用を回避し、全区間がETC通勤割引の対象となる吉川IC-美作ICの通行に割り引きを適用させているわけだが、ちょっと注意をしておかないと悲惨なことになる可能性がある。

 連休初日の朝など、中国道下り線は、吉川JCTあたりを先頭にトンデモナイ渋滞が起きることがある。もし、不幸にも渋滞に巻き込まれて吉川IC到着が9時を過ぎると、吉川IC-美作ICの通行に通勤割引を適用させることができない。中国吹田IC-吉川IC間については最初から通勤割引適用を辞退しているわけだから、結局、何の割り引きも受けることができなくなってしまう。

 例21では、山崎ICでののりおりが何時になろうとも、中国吹田ICを9時まえに通過している限り、中国吹田IC-山崎IC間は通勤割引の適用である。

参考情報

 ETC通勤割引・ETC早朝夜間割引は、ともに100Km以下の区間に限り適用になる。
 そこで、近畿の主要ICを起点として、100Km以下の最遠ICを調べてみた。下表に掲げる区間内であれば、ETC通勤割引やETC早朝夜間割引の適用を受けることができる。

起点IC 100Km以内の最遠IC
(距離 正規通行料 ETC通勤割引通行料 ETC早朝夜間割引通行料)
備考
西宮 竜王(89.1Km 2,800円 2,350円 1,400円)
豊中 八日市(90.0Km 2,750円 2,150円 1,400円)
西宮(11.8Km 500円 ***円 250円)
吹田 八日市(80.4Km 2,450円 1,850円 1,250円)
西宮(21.4Km 800円 ***円 450円)
茨木 彦根(98.5Km 2,900円 2,000円 1,450円)
西宮(24.6Km 900円 ***円 450円)
福崎(81.9Km 2,450円 1,700円 1,250円)
福知山(96.6Km 2,800円 1,900円 1,400円)
山陽姫路西(97.0Km 2,850円 1,900円 1,450円)
神戸西(59.3Km 1,850円 1,450円 950円)
京都南 関ヶ原(98.1Km 2,750円 1,600円 1,400円)
長浜(92.0Km 2,600円 1,500円 1,300円)
西宮(48.5Km 1,650円 ***円 850円)
加西(95.7Km 2,900円 2,350円 1,450円)
丹南篠山口(89.5Km 2,750円 2,250円 1,400円)
加古川北(99.4Km 3,000円 2,400円 1,500円)
神戸西(83.2Km 2,600円 2,150円 1,300円)
京都東 関ヶ原(88.2Km 2,450円 1,300円 1,250円)
木之本(95.9Km 2,650円 1,400円 1,350円)
西宮(58.4Km 1,950円 ***円 1,000円)
滝野社(95.9Km 3,000円 2,500円 1,500円)
丹南篠山口(99.4Km 3,050円 2,250円 1,550円)
三木小野(95.8Km 2,950円 2,500円 1,500円)
神戸西(93.1Km 2,900円 2,500円 1,450円)
大津 大垣(99.4Km 2,750円 1,400円 ***円)
木之本(92.6Km 2,550円 1,300円 ***円)
西宮(61.7Km 2,050円 ***円 1,050円)
滝野社(99.2Km 3,100円 2,600円 1,550円)
三田西(84.5Km 2,700円 2,450円 1,350円)
三木小野(99.1Km 3,100円 2,600円 1,550円)
神戸西(96.4Km 3,000円 2,600円 1,500円)
中国吹田 山崎(99.6Km 2,900円 1,900円 1,450円)
福知山(93.9Km 2,750円 1,850円 1,400円)
山陽姫路西(94.3Km 2,750円 1,850円 1,400円)
神戸西(56.6Km 1,750円 1,350円 900円)
中国豊中 八日市(89.3Km 2,700円 2,100円 1,350円)
中国池田 山崎(90.2Km 2,600円 1,600円 1,300円)
綾部北本線(99.3Km 2,850円 1,750円 1,450円)
竜野西(95.9Km 2,750円 1,700円 1,400円)
神戸西(47.2Km 1,500円 1,050円 750円)
注1
宝塚 八日市(96.4Km 2,950円 2,350円 1,500円)
山崎(83.0Km 2,350 1,400円 1,200円)
綾部北本線(91.2Km 2,600円 1,500円 1,300円)
竜野西(88.7Km 2,500円 1,450円 1,250円)
神戸西(40.0Km 1,250円 850円 650円)
注1
西宮北 竜王(97.0Km 3,000円 2,600円 1,500円)
佐用(89.4Km 2,450 1,250円 ***円)
舞鶴東(97.6Km 2,700円 1,350円 ***円)
舞鶴大江(91.0Km 2,600円 1,500円 ***円)
神戸西(26.8Km 850円 450円 ***円)
舞鶴大江は、綾部宮津道路を含む。
竜王 一宮(91.9Km 2,650円 1,350円 ***円)
一宮木曽川(95.0Km 2,600円 1,300円 ***円)
敦賀(88.4Km 2,450円 1,250円 ***円)
西宮(89.1Km 2,800円 2,350円 1,400円)
("途中下車"候補IC)
八日市 春日井(96.6Km 2,550円 1,300円 ***円)
岐阜各務原(87.9Km 2,450円 1,250円 ***円)
今庄(97.2Km 2,650円 1,350円 ***円)
尼崎(94.8Km 2,900円 1,450円 2,300円)
宝塚(96.4Km 2,950円 2,350円 1,500円)
("途中下車"候補IC)
彦根 東名三好(97.1Km 2,650円 1,350円 ***円)
土岐(97.1Km 2,650円 1,350円 ***円)
美濃(85.7Km 2,350円 1,200円 ***円)
美濃加茂(97.7Km 2,850円 1,450円 ***円)
土岐南多治見(97.5Km 2,700円 1,350円 ***円)
鯖江(93.8Km 2,600円 1,300円 ***円)
茨木(98.5Km 2,900円 2,000円 1,450円)
("途中下車"候補IC)

可児御嵩ICは100Km超!

関ヶ原 岡崎(96.0Km 2,650円 1,350円 ***円)
恵那(96.2Km 2,650円 1,350円 ***円)
ぎふ大和(95.8Km 2,650円 1,350円 ***円)
京都南(98.1Km 2,750円 1,600円 1,400円)
("途中下車"候補IC)

東海環状自動車道の全ICが100Km以内

長浜 福井北(94.0Km 2,600円 1,300円 ***円)
京都南(92.0Km 2,600円 1,500円 1,300円)
("途中下車"候補IC)
木之本 金津(97.5Km 2,700円 1,350円 ***円)
京都東(95.9Km 2,650円 1,400円 1,350円)
("途中下車"候補IC)
滝野社 津山(91.3Km 2,500円 1,250円 ***円)
大津(99.2Km 3,100円 2,600円 1,550円)
("途中下車"候補IC)
加西 院庄(92.0Km 2,550円 1,300円 ***円)
京都南(95.7Km 2,900円 2,350円 1,450円)
("途中下車"候補IC)
福崎 院庄(81.9Km 2,250円 1,150円 ***円)
茨木(81.9Km 2,450円 1,700円 1,250円)
("途中下車"候補IC)
山崎 北房(93.8Km 2,600円 1,300円 ***円)
湯原(90.9Km 2,500円 1,250円 ***円)
有漢(99.6Km 2,750円 1,400円 ***円)(北房JCT経由)
中国吹田(99.6Km 2,900円 1,900円 1,450円)
("途中下車"候補IC)
三木小野 山陽(95.5Km 2,600円 1,300円 ***円)
播磨新宮(60.3Km 1,700円 850円 ***円)
京都東(95.8Km 2,950円 2,500円 1,500円)
("途中下車"候補IC)
山陽姫路西 玉島(99.2Km 2,700円 1,350円)
早島(91.0Km 2,500円 1,250円)
岡山総社(83.9Km 2,300円 1,150円)(岡山JCT経由)
茨木(97.0Km 2,850円 1,450円)
("途中下車"候補IC)
竜野西 鴨方(98.2Km 2,700円 1,350円 ***円)
早島(80.0Km 2,200円 1,100円 ***円)
賀陽(92.8Km 2,550円 1,300円 ***円)(岡山JCT経由)
中国池田(95.9Km 2,750円 1,700円 1,400円)
("途中下車"候補IC)
岸和田和泉 みなべ(99.9Km 3,000円 1,850円 ***円) 湯浅御坊道路を含む。
伊勢(67.0Km 1,900円 850円 ***円)
亀山 名古屋西(53.2Km 1,550円 800円 ***円)
橙色は、大都市近郊区間を含み、ETC通勤割引またはETC早朝深夜割引の適用を受ける可能性がある区間。
赤色は、大都市近郊区間だけを通り、ETC通勤割引の適用がない区間。
黒色は、大都市近郊区間を含まず、ETC早朝深夜割引の適用がない区間。
斜体は、ETC割引の適用を受けない一般有料道路等が含まれる区間。

ETC深夜割引は、以上すべての区間に適用がある。

注1:綾部北本線料金所は綾部宮津道路の料金所で、インターチェンジ名としては綾部安国寺ICに相当する。中国池田IC・宝塚ICから宮津IC・舞鶴大江ICに行く場合、一旦綾部安国寺ICでのりおりすると、割引の適用を受けることができる。

※高速道路の通行料算定ルールは、こちらを参照。


 本稿に記した内容は、2005年5月現在、JHから発表されている内容をもとに、私が試算したものです。ご利用にあたっては、必ずご自身でJHに確認されますようお願いします。

 参考リンク

公団の分割・株式会社化について

 2005年10月1日付けで、道路関係4公団が分割・株式会社化されました。

 今後、利用者の利便性を高める様々な施策が行われると思われますが、当面は、(利用者の立場では)公団時代と何ら変わるところがありません。

 本文中では次のように読み替えてください。

(2005年10月13日)  


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制作:2005年1月12日 修正:2005年10月13日