湯巡りトロッコとスイッチバックの旅


備後落合駅で


スイッチバック2段目へ
(左側の線路は宍道方)


上部のスノーシェッド


3段目から見た出雲坂根駅


奥出雲おろちループ(一部)


油木-備後落合間で

出雲坂根→備後落合

 出雲坂根は、三段式スイッチバックの駅として知られている。

 宍道から備後落合を目指して勾配を登ってきた列車は、そのどんつきに位置する出雲坂根に停車。一旦バックして高度を稼ぎ、再び前進する(→mapion地図)。全国のJRでも、同様の線形は、去年訪れた九州の3駅とこの出雲坂根にしかない。

 さっき運転士に尋ねたら、ワンマン運転の気動車では一旦反対側の運転席に移って操縦するが、奥出雲おろち号では車掌が進路の安全確認をするので、席を移すことなくそのまま客車の運転室で操縦するという。つまり、外見上はバック運転ではなく、先頭の機関車(但し、無人!)が2両の客車を引っぱり上げるかたちになるわけだ。

 汽笛が山々にこだまし、列車が後退し始めた。車掌は、進路を注視し、安全を確認しているはず----であったが、現実は違った。間髪入れずに案内放送が始まったのだ。

 出雲坂根と三井野原の標高差が167mあること、1000分の30の急勾配を約800m後退すること等が次々に紹介される。出雲坂根のスイッチバックは木次線最大の見せ場であるから、一段と熱がこもった放送である。

 しかし、かような放送をしながら、同時に安全確認は出来るのであろうか。運転士の話では、時折、線路に木が倒れかかっていることもあるとのことだが....?!?

 数分で列車は上部の引き上げ線に到着。スノーシェッド内に設けられた第二出発信号機に青が灯ると、再び客車を先頭にして進む。

 杉木立の向こう、遥か眼下に出雲坂根の駅舎が見える。

 いくつかの短いトンネルを抜けると、今度は目前に巨大なループ橋が見えてくる。国道314号線・奥出雲おろちループ橋だ。6年前と同じように、列車は停車寸前まで減速。すべての乗客の視線が、右側の車窓に釘付けになる。
 いま、山肌は勢いの失せた暗緑色だが、あと半月もすれば、奥出雲は一気に紅葉の季節を迎えるのだろう。

 是非、また来たい!!----すべての旅行者がそう感じたと思うほど、その車窓は魅力的であった。

 興奮の余韻がさめやらぬうちに、列車は三井野原に着く。標高726.81m、JR西日本最高地点にある駅だ。駅前は中国地方には珍しいスキー場となっている。オフシーズンの今はひっそりとしているけれど、意外なことに10名ほどの下車客がいた。

 分水嶺を越えた列車は広島県に入り、今度は急勾配を下る。12時13分、備後落合着。

 奥出雲おろち号の、備後落合からの先の接続は極めて悪い。

 9月までは、12時45分発の三次行きがあったが、10月1日のダイヤ改正で11時48分発に繰り上げられてしまった。次の列車は、三次行きが14時01分、新見行きは15時38分である。これでは、奥出雲おろち号の乗客はそのまま引き返す以外に選択の余地がない。

 備後落合駅とそれ以東の芸備線は、JR西日本岡山支社の管轄。以西の芸備線は広島支社、木次線は米子支社所属となっている。岡山・広島の両支社は、"米子支社のイベント列車なんか、関係ない"と思っているのかも知れないけれど、もう少し工夫の余地はあるのではないかとも思った。

続く

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2003年10月16日 制作 2003年10月25日 修正