富山地方鉄道市内線 : 富山駅前→大学前→南富山駅前


富山駅前で


大学前で


南富山駅前で


JR富山駅で

 電車に夢中のたのしい休日は、瞬く間に過ぎる。

 17時をまわり、だいぶ暗くなってきたが、最後に富山地方鉄道市内線に乗ることにする。JR富山駅南側の旧市街地を走る昔ながらの路面電車である。7年前に一度試乗しているが、このときは富山駅前-南富山駅前だけだったので、富山駅前から先、大学前までの区間も乗っておきたい。

 富山駅前からは、南富山駅前行きは5分ごと、大学前行きは10分ごとに電車が出ている。なかなかの高頻度運転だが、どこへでも、行きたいときにすぐに行ける自動車に対抗するには、乗車率には目をつむり、この程度の運転本数を確保しないといけないのだろう。

 万葉線の旧型車と同じスタイルの、おへそに丸形前照灯がついた典型的な車両がお客を待っていた。車体はもちろん、屋根の上にも行灯式の広告看板がついている。乗客は全部で10人ほどで、空席が目立つ。

 自動車と同じ交通信号機に従って発車。女性運転士がしなやかな手付きでハンドルを動かすたびに、軽いショックを伴いながら速度をつけていく。"非自動式"と呼ばれるもっとも原始的な仕組みの電車である。

 県庁前、丸の内...。一介の旅行者であっても、どんな街かが予想できるような停留所名が続く。休日のきょう、富山の官庁街は通り過ぎるクルマばかりで、街を歩く人の姿はほとんどない。従って、電車に乗降する人も、いない。

 丸の内交差点で右折した線路は、安野屋から単線となって神通川を渡る。富山大橋の西詰にあるのが新富山。ここは、万葉線の一部となった射水線の始発駅があったところである。

 終点の大学前は、近くに富山大学のキャンパスがある、静閑な感じのところにあった。富山駅前から乗り通したのは数人だったが、折り返しの電車には、クラブ活動を終わったばかりの学生がたくさん乗ってきた。

 いま来た軌道を富山駅前まで戻り、更に反対側の終点である南富山駅前まで乗り通す。富山駅前で客の大半が入れ替わり、ネオンが瞬き始めた繁華街をゆっくり進んでいく。御影石を敷いた古典的な軌道はかなりくたびれていて、その乗り心地は富山ライトレールとは大いに違っていた。

★  ★  ★

 南富山駅からタクシーで城南天然温泉に向かい、ひと風呂浴びた。モール泉と呼ばれるなめらかな湯で、一日中歩き回った身体の疲れが一気に取れる。

 路線バスで富山駅に戻れば、あとは特急サンダーバード50号に乗るだけである。

 職場に電話を入れたら、気になっていた受け持ち患者の容態が悪化しているという。明日、様子を見に出勤する旨を伝えて、電話を切る。病棟のスタッフは、まさか主治医が遠く富山で電車三昧の休日を過ごしていたとは夢にも思っていないだろう。

 鱒寿司と缶ビール・缶チューハイを買って、改札を受ける。
 世間はあしたも休日だから、薄暗い富山駅のホームで上り最終特急を待つ人はほとんどいなかった。

参考リンク

 本稿の作成にあたっては、下記のサイトを参考にしました。


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制作:2006年4月30日 修正:2006年5月16日