富山ライトレール:富山駅北


富山駅北口で


JR富山駅北口駅舎内で


富山駅北で


富山駅北で

 今日(2006年4月29日)開業した富山ライトレールは、JR富山港線(富山-岩瀬浜間 7.6Km)を引き継いだ路面電車だ。
 JR富山駅北口から旧富山港線の奥田中学校前踏切付近まで、市道に単線の軌道(延長約1.1Km)を新設、ここから旧富山港線の線路に乗り入れて、終点岩瀬浜まで行く。運行主体は、富山市や地元企業が出資する第三セクターである。

 JRの鉄道路線を廃止して路面電車に置き換えるという手法は過去に例がなく、2003年春にラジオニュースでその計画を聞いたときは、我が耳を疑った。
 こうした転換が行われた背後には、JRの赤字ローカル線問題や北陸新幹線建設とそれに伴う平行在来線切り離しの問題など、深刻かつ複雑な事情があることは間違いない。けれども、いち鉄道ファンの私には荷が重すぎるテーマなので、今日は楽しく新しい路面電車の誕生を祝い、開業初日の街の様子を観察したいと思う。

 富山駅北口は真新しいビルが林立し、さながらミニ東京のようでもあった。2014年度末に予定されている新幹線開通を見越して、既に多額の投資が行われているようである。美しく整備された駅前通りには目障りな電柱がなく、ぱっと見たところでは、路面電車の線路があるとはわからない。ビルのすき間に、残雪を被った立山連峰がわずかに見える。

 期待の新路線開業だから富山駅には派手な飾り付けがあると思いきや、小さなポスターが張ってあるだけで、特にそれを祝う雰囲気はないようであった。JR西日本は富山ライトレール(株)に出資しておらず、"手切れ金"を渡して富山港線を廃止したあとは、もはやわれ関せずという態度のようにも見える。
 駅舎の片隅には富山ライトレールの窓口がある。垢抜けたデザインだが、仮設の域を抜けないもので、ICカード式の乗車券や記念グッズなどを売っている。

 改札口を出て、ライトレールののりばはどこかと見回したところ、左手に長い長い行列があった。列の先には、ダークグリーンに塗られた洒落たデザインの上屋がある。派手な看板などはなく、良く言えば周りの風景にとけ込んでいるが、悪く言えば、ぱっと見、そこが電車のりばであるとは分からない。

 程なく、2面2線の停留所に真新しい電車が入線してきた。
 新潟トランシス製のTLR0600型電車で、さっき乗った万葉線の車両と基本的に同じ構造。立山をイメージしたという純白のボディ。扉付近が紫色に塗られ、印象的なアクセントになっているが、この部分の色は編成ごとに異なるのだという。
 『今日乗ったのはXX型のYY編成で...』なぞと全車両の完乗を目指したりするのが鉄道ファンだが、これなら、一般の客にも『今日乗ったのは紫の電車』とか、『あと乗ったことないのは、赤い電車』というような話題を提供できるであろう。
 なかなか面白いアイデアである。

富山ライトレール:富山駅北→奥田中学校前


インデックス前-奥田中学校前間で


中学校踏切跡から路面区間に入る電車


奥田中学校前で


中学校踏切跡から富山口方を見る

 さっそく電車に乗ってみたいところだが、聞けば乗車まで45分も待つらしい。
 そこで、新設された軌道に沿って散歩してみることにした。無論、途中の停留所からなら、やってくる電車にすぐに乗れるであろうとの計算もあってのことである。

 駅前の電車通りでは何やら催しが行われていて、大層な人出である。仮設ステージには『とやま昆布祭り』という横断幕が掲げられているから、路面電車の開業とは直接関係ないのだろうが、実質的にはその協賛イベントだろう。

 単線の線路は最初の大きな交差点で右折、ビルが立ち並ぶ市街地を東に向かう。程なく見えてくるのが『インテック本社前』電停。交換設備はないが、上下とも上屋のついた安全地帯がある。

 この停留所、富山ライトレールが販売した『命名権』を買った企業の名前である。赤字を少しでも減らすため、新設する4駅(富山駅北を除く)の名前が1駅1,500万円で売りに出されたのだ。結局、売れたのはこの駅と『粟島(大阪屋ショップ前)』の2駅だけだったようだが、従来の鉄道では考えられなかった新しい試みだと思う(参考)。

 時折やってくる電車にカメラを向けながら、更に通りを歩く。
 路面電車は普通の鉄道に較べてゆっくり走るので、楽に写真が撮れるかというと、そうでもない。絶好のシャッターチャンスに、手前を走るクルマが被ったりする。レールがないから、その動きは読み辛い。
 クルマに神経を使うのは、電車の運転士だって同じだろう。盛んに電気笛を鳴らして、しずしずと進んでいく。富山市内には昔から路面電車があったから、当地のドライバーは道路を行く電車に不慣れなわけではないだろうが、何せまったくの新規路線だから、この通りで電車に出くわすとは夢にも思ってない運転者がいても不思議ではない。

 やがて、路面電車の線路は左に大きく曲がる。旧富山港線の中学校前踏切跡だ。電車はここから旧富山港線の線路の上を走って岩瀬浜まで行くことになっている。

 踏切跡から富山駅方を眺めてみたが、架線はもちろん、レールや枕木、電柱までもがきれいさっぱり撤去され、2条の鉄粉に染まったバラストだけが残されていた。


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制作:2006年4月30日 修正:2006年5月16日