上田→長野 特急あさま3号


上田駅で


長野駅で

 上田からは、たったひと駅だけ長野新幹線に試乗してみることにした。

 高架上にある上田駅の新幹線ホームは、待避線のないシンプルな造りであった。東海道新幹線などと較べると、ホームの幅もずっと狭い。需要の見込めない地方に新幹線を通すには、思い切った経費節減が必要ということか。
 しかし、長野新幹線は、北陸方面への延伸が予定されているはずである。将来の列車増発にもじゅうぶん対応できるのか、ちょっと気になった。

 程なく、長野行きのあさま3号がホームに滑り込んできた。
 関西に住んでいる私にとって、JR東日本の新幹線はまったく非日常的な乗り物である。柔かな曲線で構成された紫色のシートなぞは、JR東海/西日本の新幹線では見られない造形である。
 その、自由席車のシートに腰を下ろすと、列車はぐんぐん加速していく。高架橋の防音壁とトンネルの闇がめまぐるしく入れ替わり、車窓を眺めていると吐き気がしそうだ。

 上田を出て10分もしないうちに、長野到着の車内放送が流れ始める。
 列車に乗ったというより、遊園地のジェットコースターに乗った気分で、私は長野駅の新幹線ホームに降り立った。

 偶然ではあろうが、長野駅の4つの新幹線ホームすべてに列車が停まっていて、自由席車の乗車位置には、休暇を終えて首都圏に帰る人たちの長い行列ができていた。

長野→名古屋 特急ワイドビューしなの24号


長野駅で


"川中島合戦笹ずし"と信州ワイン


名古屋駅で

 長野からは、18時ちょうどの特急ワイドビューしなの24号で名古屋に向かう予定である。
 終着は21時前になるので、車内で食べる夕食を買っておこうと思う。

 新幹線改札口の目の前に、駅弁を売るワゴンがあった。見ると、盛岡や仙台など、東日本各地の名物駅弁が並んでいる。どうやら、JR東日本の系列会社が、管内の有名駅弁を取り揃えて販売しているようだ。
 各地の駅弁を集めた百貨店の催しはいつも盛況。ならば、駅でも...という魂胆なのだろうが、信州を旅して、なぜ、みちのくの駅弁なのだろう。私はおおいに気分を害した。
 駅を最大限利用して収益を上げねばならぬJRの事情もわからないではないが、これはちょっとやりすぎではないか。

 本来の長野駅弁は...と見回すと、より客の少ない在来線改札口に小さなブースがあった。
 古くからこの駅で構内営業を手がけてきた業者で、郷土色豊かな駅弁が数種類置かれている。そのなかから、"川中島合戦笹ずし"を買い、列車に乗り込んだ。

 夕闇が迫り、車窓には街の明かりしか見えない。車窓を眺める楽しみがない以上、次は食べるしかない。
 というわけで、早速、さっきの弁当を開ける。
 イクラやマス、山菜の佃煮などを乗せた笹寿司で、これまた駅で買った信州ワインとよく合う。やはり、駅弁は、その土地土地のものを旅先で買い、列車の中で食すのがいちばんである。

 松本では、あいた座席がなくなるほどの乗車がある。
 塩尻では、遅れている中央東線の特急あずさと接続をとるため、約5分の延発。塩尻で、中央東線の特急から名古屋行きのワイドビューしなのに乗り継ぐ人がいるのには驚いたが、よくよく考えると、甲府以東から名古屋・大阪へは、塩尻経由のほうが速いのである。

 塩尻を出た列車は、右に左に車体を傾けながら、木曽路を駈けていく。
 信州ワインに続いて、ビールと缶チューハイをも飲み干した私は、傾いているのが電車なのか自分なのか、どうもよく分からなからない事態となっていたようである。


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制作:2005年10月18日 修正:2005年11月2日