山田温泉　風景館

　信州山田温泉は、私のお気に入りの温泉地のひとつである。
　前回、山田館に泊まって以来約4年ぶりの再訪となったが、立派な大湯と火の見櫓がある集落は、まったく変わっていなかった。

　さて、今回宿をとったのは、山田温泉最大の収容力をもつ風景館。ウリは150段の階段を降りていく仙人露天岩風呂である。チェックイン早々、その名物温泉に入ってみることにした。

　松川が造った渓谷は思いのほか深く険しい。厳冬の2月、階段はテカテカに凍結している。
　きれいに除雪されてはいるけれど、一杯入ったあとに雪見風呂---なんぞとは考えないほうが良いだろう。足を滑らせると、命はあるまい。

　足下に注意して歩くこと5分ほどで、お目当ての岩風呂に到着。シンプルなコンクリート造の浴槽の傍らに小さな脱衣小屋がある。凍りついた滝を眺めながら、開放的な入浴を楽しめた。

　メインとなる内湯も、大きな窓から渓谷を見ることができる。木製の浴槽に張られたお湯は、強い硫化水素臭を伴うさらっとしたもの。露天風呂ではほとんど匂わなかったが、こちらは湿気の高い浴室内にいかにも温泉らしい臭気が充満していて、個人的には内湯のほうが気に入った。

　そのほか、別の場所に『天空の小鳥風呂』と称する風呂がある。家族湯を兼ねた浴場で、木製の湯船が備わっている。ここでも渓谷を望めるらしいが、入浴したのが深夜だったので、眺望の評価は不能。

　夕食は部屋、朝食は食事処で提供される。
　洗練された---という感じはないが、信州牛のミニ鍋など、内容はそれなりに豪華で、満足した。

　今度は、深緑の盛夏に泊まってみたい。

お気に入り指数:★★★★☆