沓掛温泉　小倉乃湯

　標高1,250mの夫神岳の山麓にある静かな温泉。田沢温泉とともに、環境省の国民保養温泉地に指定されている。

　その歴史は古く、平安時代、国司がこの湯に入ったところ、眼病が治ったという話が残っている。

　現在の共同浴場は、鉄骨造のわりと新しい建物である。申し訳け程度に唐破風の庇がついているのが面白い。当地(長野)では、ほかにも真新しい唐破風の湯屋をみかけた。今でも唐破風の荘厳な建物とするのが共同浴場のステータスなのであろうか。

　清潔かつ機能的な浴室には、2つの湯船がある。
　手前が源泉をそのまま満たした浴槽、奥が加熱浴槽である。いずれも源泉かけ流しだ。
　お湯は、細かい湯の花が舞う単純温泉。pH9.53とかなり高いアルカリ度を誇り、肌触りはなめらか。
　殊に体温とほぼ同じ温度の非加熱の湯船は秀逸で、かすかに漂う硫黄臭を嗅ぎながら、浮遊感のある入浴を愉しめる。

　建物の脇には、温泉を利用した洗濯場がある。洗濯から乾燥までやってのける全自動洗濯機が普及しつつある今日、いくら何でも手洗い洗濯をする人がいるのかと思うが、真新しい液体洗剤の容器がいくつも置かれているところを見ると、少なからぬ利用者がいるようだ。

お気に入り指数:★★★★☆