田沢温泉　有乳湯

　長野県青木村にひっそりと湧く温泉。

　数軒の宿があるだけだが、いずれも大きな老舗旅館で、木造3階建ての古い建物がいまも現役であったりする。最近整備された石畳と相まって、しっとりとした温泉街の風情を醸し出している。

　有乳湯は、田沢温泉の外湯。
　以前は、味気ない鉄筋コンクリートの湯屋であったが、2000年に改築されて、温泉街の雰囲気にマッチした荘厳な木造の建物となった。今はまだ新築然とした表情だが、いずれ時の経過に鞣されて、老舗旅館と遜色のない風格ある外観になるのであろう。

　見た目は古風であっても、その内部はいまふうの機能的な造りで、脱衣場・浴室ともに明るく清潔なものだ。

　浴室には、タイル張りのシンプルな主浴槽があるだけだが、そこにかけ流されるお湯は質・量ともに尋常ではない。

　かすかに硫化水素臭を帯びた透明なお湯だが、湯船につかるなり、肌には細かい気泡がびっしりと付着する。これは、お湯が極めて新鮮な証拠で、思わず笑みがこぼれる。
　浴槽から溢れた湯は音をたてて排水口に消えるが、あらかじめ作り込まれた溝だけでは排水し切れず、洗い場のほうにも流れているのがおわかりいただけるであろう。とにかく大量の源泉投入量である。
　関西人の私にも程よい湯温で、長くつかっていてものぼせないのも気に入った。

　洗い場のブースは、スーパー銭湯も顔負けの仕切り板・シャワーつきの快適な仕様。カランから出る湯も温泉であることは言うまでもない。

　建物の地階には、田沢温泉にまつわるパネルなどを展示した資料室と休憩室がある。

　今回の信州旅行では計7か所の温泉浴場にはいったが、もっともポイントが高かったと思う温泉。★5つを進呈したいと思う。

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