有馬温泉 太閤の湯


太閤の岩風呂


食堂

 昭和40年代、温泉につかってご馳走を食べ、ショーを観る形式の日帰り入浴施設が各地に誕生した。

 "有馬ヘルスセンター"(1962年(昭和37年)開業)はその嚆矢となった施設で、昭和40年代から50年代にかけてはたいへんな人気を博したらしいが、その後のレジャーの多様化と施設の老朽化から、最近は鳴かず飛ばすの状態であったという。2001年には"有馬ビューホテル別館日帰り温泉"として再スタートしたものの、施設自体は旧来のままであったから、毎年巨額の赤字を生む状態に変わりはなかったらしい。

 その有馬ビューホテル別館日帰り温泉"が、この春、大規模なリニューアルを行ったというので、さっそく出かけてみた。
 新しい名前は、"太閤の湯"。阪神大震災で被災した極楽寺の境内から、豊臣秀吉が造らせたとみられる岩風呂と蒸し風呂の遺構が発掘されたが、これをそっくりそのまま再現したお風呂が最大の目玉である。

 エントランスは唐破風の庇がついたいかにもそれらしい造り。箱形のビルそのものは旧来のままだが、外壁に格子状の木材が打ち付けられて、違和感を和らげる工夫がされている。

 館内に足を踏み入れると、木の質感を活かした現代風の癒し空間が広がる。やや暗目の照明は、最近のこの種の施設の流行だ。

 入浴料2,400円と引き換えに、館内着(4色の中から好きなものを選べる)とタオルが入った手提げかばんとロッカーキーが渡される。フロント脇のロッカールームですっぽんぽんになったら、早速湯船にざっぶ〜ん。ああ極楽………とはいかなかった。
 実は、一旦館内着に着替えたあと館内を移動し、別の場所にある浴場付属の脱衣場で裸にならないと風呂には入れないのである。どういう経緯でこういうシステムになったのかは知らないけれど、2つのロッカーを使わねばならないというのはあまありに煩雑かつわかりにくい。実際、最初のロッカールームで、腰にタオルを巻いたまま、風呂を探してウロウロしているおっさんがいっぱいいた。これは改善が望まれるところである。

 さて、肝心の風呂のほうだが、屋内の浴室には2つの湯船があって、一方には金泉+銀泉のミックス泉、もう一方には加水した銀泉が満たされている。常連客によれば、タイルこそ張り替えたものの、盃状の湯口からお湯が注がれる浴槽そのものは以前のままらしい。

 狭くて急な階段を上がると、露天エリアに出る。この露天エリアは、今回のリニューアルの売り物のひとつである。
 と言っても、実態は都会のスーパー銭湯にあるがちな"屋上露天風呂"。高い目隠し塀と日除けのよしずに囲まれているから、解放感はいまひとつだ。
 腰掛け湯や寝ころび足湯、壺湯といった多彩な施設もさることながら、温泉ファンなら太閤の岩風呂に是非とも入ってみたい。金泉100%の掛け流しである。ただ、"有馬の金泉"と言ってもいくつかの源泉があるようで、太閤の湯の金泉は、同じ有馬温泉の市営浴場・金の湯のものよりやや薄い印象をもった。

 いわゆる"おふろ"は以上のとおりだが、別の場所に太閤の蒸し風呂がある。個人的には、サウナ・蒸し風呂の類はあまり好みではないのだが、ものは試しとばかりに覗いてみることにする。

 男女共用の施設なので、専用の上着を着て入る。
 入口の扉を開けると小さなホールがあって、定員3〜4名ほどの小屋みたいなものが2つある。どうやらこれが太閤の蒸し風呂らしい。ただ、施設の目玉だけあって大層な人気で、なかなか空きがない。結局、その脇にある岩盤浴形式の蒸し風呂に入ってみた。
 熱い石板の上に寝転がっていると、数分でじっとり汗が染み出してくる。サウナほど強烈ではないが、なかなか爽快ではあった。

 以前、ショーを見ながら寛いだ大広間は、改装されてセルフサービスの食堂となっている。
 メニューは一般のスーパー銭湯のそれと大きな違いはないようだが、かなり贅沢なスペースの使い方をしており、ゆっくり食事を愉しめた。
 お風呂に入り、お腹が膨れたら、今度は休憩である。ゆったりした安楽椅子が並んだ休憩室が準備されていて、静かに身体を休めることができる。

 ひと眠りして目が覚めたら、午後4時をまわっていた。開店と同時に入ったから、既に6時間も滞在していることになる。最後にもう1回温泉につかって家路についた。

 2,400円という入浴料からして、いわゆるスーパー銭湯とはまったく別物。『ひと風呂浴びる』のではなく、いいお湯につかって、ゆったりした時間を過ごすためのリラクゼーション施設である。

お気に入り指数:★★★☆☆

参考リンク

施設DATA
温泉名 有馬温泉
施設名 太閤の湯
施設の種別 日帰り入浴施設(健康ランド)
所在地 〒651-1401 兵庫県神戸市北区有馬町池の尻292番の2(地図)
電話番号 078-904-2291
公式・参考サイト 有馬温泉 太閤の湯
営業時間 10:00〜23:00(最終受付 22:00)
料金 一般:2,400円、子供(6〜12歳):1,200円、幼児(3〜5歳):400円
無料の備品 ボディーソープ・シャンプー・鍵つきロッカー・ドライヤー・バスタオル・タオル・館内着・綿棒・化粧品
浴場施設 内湯、サウナ、露天風呂、足湯、蒸し風呂など
駐車 可能(4時間まで無料)
入浴日 2005年6月2日
備考 <0140>

温泉DATA

  • 脱衣場の掲示によれば、少なくとも4か所の源泉を使用している。
     
  • 2005年5月24日施行の温泉法に基づく掲示があった。
    それによると、露天エリアにある"太閤の岩風呂"がもっとも上質の温泉浴槽であるようだ。
場所 浴槽名称 特徴 加水 加温 循環・ろ過 入浴剤
添加物
殺菌消毒
3階







東側露天内太閤の岩風呂 金泉100%
掛け流し
--- --- 撹拌装置 --- ---
腰掛け湯 銀泉100% --- ---
座り足湯 金泉 --- --- ---
寝ころび足湯 金泉 --- --- ---
西側露天内太閤の岩風呂 金泉100%
掛け流し
--- --- 撹拌装置 --- ---
ひょうたん風呂(全身浴) 銀泉100% --- ---
ひょうたん風呂(半身浴) 銀泉100% --- ---
足湯 金泉 --- --- ---
寝ころび足湯 金泉 --- --- ---
2階




男子癒しの湯内
天下の湯
源泉100%
(金泉+銀泉)
--- 撹拌装置 --- ---
男子癒しの湯内
くつろぎの湯銀泉(全身浴)
銀泉+ラジウム強化
(ラジウム強化水)
ラジウム強化
男子癒しの湯内
くつろぎの湯銀泉(半身浴)
銀泉100% --- ---
男子癒しの湯内
銀泉岩清水
銀泉100% --- --- ---
女子癒しの湯内
天下の湯
源泉100%
(金泉+銀泉)
--- 撹拌装置 --- ---
女子癒しの湯内
くつろぎの湯銀泉(全身浴)
銀泉+ラジウム強化
(ラジウム強化水)
ラジウム強化
女子癒しの湯内
くつろぎの湯銀泉(半身浴)
銀泉100% --- ---
女子癒しの湯内
銀泉岩清水
銀泉100% --- --- ---
太閤の湯殿足湯 金泉 --- ---

 

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制作:2005年6月5日 修正:2005年6月8日