晩秋の東北旅行---海底駅(3)


竜飛崎のから津軽海峡を望む
遥か彼方に見える山並みは、北海道渡島半島。


『津軽海峡冬景色』の歌碑
ボタンを押すと、本当に歌が流れる。


竜飛崎灯台


青函トンネル記念館
後方はケーブルカー記念館駅

竜飛崎

 地上に出たあと、竜飛崎の展望台に上ってみる。

 今から35年も前の昭和41年、この地で斜坑(ケーブルカーが走るトンネル)の掘削が始まったこと、工事で17名の殉職者が出たことetc、強い北風に吹かれながら、"駅員"が怒鳴るように解説してくれた。

 遥か彼方に北海道渡島半島が霞んで見える。いまさっき、私はこの海の下を列車で通り抜けてきた訳で、改めて青函トンネルの壮大さを実感する。もっとも、青函トンネル工事が世紀の偉業ならば、"駅員"も相当に偉大、というか、妙な仕事をしている。彼は毎日、はるか彼方に霞む北海道から、海底を通って本州に"通勤"しているのだから。

 竜飛崎灯台を見物しているうちに霰が降り始めたので、今度は青函トンネル記念館を見学。青函トンネル断面の実物大模型が目を引く。フル規格・複線新幹線が通過できる断面で、その広さに感嘆した。

 11時45分、観光客3人が再集合して、ケーブルカーの駅へ。

 "駅員"の話によれば、竜飛海底駅見学コースの営業成績があまりに不振である故、昨年から、その業務がJR北海道OBを主体とする再雇用会社に委託されたのだそうだ。彼もその一員だけれど、いつまでも勤められる訳ではなく、年金が貰える年齢になると、いわゆる『肩たたき』があるらしい。

 『今年はお世話になりました。来年も、どうぞよろしく。もっとも、肩たたきがなかったらの話だけど....』

 案内役の"駅員"が帽子を脱ぎ、記念館の受付嬢に深々と一礼する。竜飛海底駅の営業は、11月10日までである。

 私の個人的楽しみである鉄道旅行とはまったく無縁の、あまりにも深刻、かつ、困難な地方経済の実態を垣間見たような気がした。

 来たときと同じケーブルカーに乗って、再び海面下の駅へ潜る。地底から現れ、再び地底に潜る妙な竜飛崎見物であった。

続く

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2001年11月10日 制作 
2001年11月21日 修正