晩秋の東北旅行---函館駅


函館駅本屋


『海峡3号』の車内


『海峡3号』の車内案内装置
青函トンネルの最深部を通過中!


知内付近の車窓


函館山を望む
函館市街は、向かって左側に広がっている。


EH500-9(五稜郭駅)

津軽海峡線

 青森からは、快速列車で函館に向かう。

 開通直後はブームに沸いた津軽海峡線であるが、その後、青函間の旅客数は減少の一途をたどり、最近は連絡船時代の最低旅客数をも下回る状態であるという。時刻表を見ても、快速海峡号は4〜6両編成となっている。けれども、この日の快速海峡3号は、50系5000番代12両編成という長大編成であった。

 快速海峡3号は、定刻、青森を発車。

 客車の車体や天井には、大きなどらえもんのステッカーが貼られている。人気キャラクターの力を借りてでも、乗客を増やそうという涙ぐましい努力である。キャンペーンは10月28日で終了したが、車両の飾り付けはそのままであった。

 青森を出た列車は、陸奥湾に沿って進む。

 津軽海峡線は、青森-函館間の路線につけられた愛称である。青函トンネルを含む中小国-木古内間は、まったくの新線だが、青森-中小国、木古内-函館間は、既存のローカル線を改良しただけなので、現在でも単線で、カーブも多い。

 列車は、駅ごとに長いコンテナ貨物列車とすれちがう。
 青函間を行き来する旅客は減るいっぽうだが、貨物については微増傾向にあるらしい。単線区間は、ほとんどネットダイヤになっているという話もきいた。

 蟹田に停車し、乗務員が交代する。新しく乗り込んできたJR北海道の車掌が、さっそく青函トンネルについての解説放送を始める。
 
 中小国を出ると、列車は新線区間に入る。新幹線規格で造られた線路だがら、踏切は皆無。地形を無視するが如く、高架橋とトンネルの線路が一直線に延びている。
 いくつかの小トンネルを抜けたあと、青函トンネルに入る。
 全長約53.9Kmの長大トンネルだが、入ってしまえばほかのトンネルと変わるところはない。『かーっ』というスラブ軌道特有の騒音が車内に侵入する。高い湿気のため、窓が曇る。

 海面下240mの最深部を過ぎると、列車は北海道に向けて、勾配を上り始める。これまでは、先頭の機関車が客車の加速度を抑えるために踏ん張っていたのが、今度は機関車が客車を引っぱり上げる立場になる。心なしか、私の身体が背ずりに押し付けられたようにも思えた。

 約40分の退屈極まりない時間に耐えると、車窓には北海道の風景がぱっと広がる。奇麗に枝打ちされた杉の人工林があったりして、道東の荒涼とした風景とはかなり趣が違うが、広い牧場にサイロが点在する風景は、やはり北海道のものだ。

 高規格の線路は木古内で終わり、ここからは既存の江差線を改良した区間を行く。

 江差線は、もともと、函館と日本海側の漁港である江差を結んでいたローカル線である。青函トンネルの開通でにわかに脚光を浴び、突然、北海道と本州を結ぶ最重要線に格上げされた訳だが、それが旧国鉄の財政が最悪であった時期と重なってしまったため、幹線化のための投資は最小限で済まされている。従って、列車は津軽海峡を望みながら、昔と同じく海岸線を忠実にトレースしていく。車輪は軋み、速度は上がらない。

 けれども、鉄道旅行を愉しむものにとっては、新幹線のような味も素っ気もない路線より、こちらのほうがずうっと都合が良い。
 車窓右手に函館山が見えている。
 市内から見る函館山は、なだらかな稜線を持つ美しい山だが、こうして違う方角から見ると、平べったい高台が断崖絶壁でストンと海に落ちる台地状の山であることが分かる。
 函館山は、もとは津軽海峡に浮かぶ島であり、海流の加減で打ち寄せられた砂によって北海道本体と陸続きになった陸繋島だ。現在の函館市街は、その砂(トンボロ)の上に広がっている。

 新しい住宅が目に付くようになり、列車は五稜郭に到着。
 五稜郭には、津軽海峡線を走る列車の大半を牽引する機関車の基地があり、海峡を往来する貨物列車は、ここで機関車の付け替えを行っている。
 国鉄時代に造られた古い機関車に混じって、EH500やDF200など、民営化後に登場した機関車もかなり多く止まっていた。

 13時49分、函館着。

 函館駅は、2003年度の完成に向けて、改築工事が始まっている。
 不要になった車両航送用引き込み線跡に旅客ホームを移し、ホームの位置に新駅舎を建てる。現駅舎は取り壊して、駅前広場を拡張する計画らしい。
 すでに、新ホームの一部が使用を開始しており、旧0〜3番ホームは廃止されている。この工事が完成すると、函館駅から連絡線時代の面影は完全に消えることになる。

 既に跨線橋は解体済みで、地上の仮設通路を通って出口に向かう。自動改札機が並んでいるのは時代の流れだが、駅舎とその内部の雰囲気は、まだ、昔のままであった。

 連絡船の低い汽笛が聞こえるような気がした。 

続く

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2001年11月10日 制作 
2001年11月21日 修正