晩秋の東北旅行---奥入瀬を歩く(2)


乙女の像(十和田湖畔・休屋)


十和田湖の観光船(第3十和田丸)


十和田湖畔の紅葉(休屋)


JRバス東北・休屋バスターミナル


酸ケ湯温泉旅館


千人風呂

十和田湖観光

 子ノ口からは、遊覧船で休屋に向かう。

 遊覧船は二層構造で、上層は特別料金が必要なグリーン船室である。500円の割り増し料金を払って特別船室に乗る人は皆無であったが、古くからの超A級観光地である十和田湖の"格"を伺い知ることができる。

 案内放送によると、宇樽部には専用の造船所があり、十和田湖の遊覧船はそこで建造されたという。地下鉄漫才ではないけれど、観光船の謎がひとつ解消した。

 十和田湖観光の中心地・休屋は、晩秋のたたずまいであった。紅葉が見事である。団体客に交じって、『乙女の像』などの名所を見物した。

 休屋のバスターミナルから、青森行きの最終バスに乗る。
 八甲田山麓を走る青森行きの路線は、来週末をもって冬季運休になる。

 『いやー、今年も終わりだね。』
 『もうすぐ雪が降るね。』

 バスターミナルの係員と運転手の会話が聞こえてきた。

 16時10分、夕やみ迫る休屋発。

 バスの乗客は、私と中年女性のグループだけであった。運転席の後ろに陣取ったおばさんたちが、まるでタクシーのに乗っているかのごとく、少しハンサムな運転士に話しかける。

 『運転手さんも、大変ね。』
 『いやー、市内を運転するより楽です。』
 『1日何キロ位走るの?』
 『200キロくらいかな。市内を走ってから十和田湖を往復することもあるし、十和田湖で泊まりの勤務もありますよ。』
 『でも、十和田湖って、いつ来てもいいわね。』
 『そう、十和田はいつ来ても、いいよね。紅葉ももう終わりだけど、先々週あたりはすごかった。バスは全部1時間遅れ。』
 『へええ..』

 子ノ口では、若い女性がバスを見送る。
 JRバスの切符を売っている女の子らしい。

 『さむいねえ...。お客さん、いない?』
 『あ、大丈夫。じゃ、気をつけて!』
 『また来年、かな?』

 軽くクラクションを鳴らして、バスは子ノ口ターミナルを出る。

 子ノ口を出ると、バスは午前中歩いた奥入瀬を下る。もう、ほとんど日は暮れているが、それでも運転手は随所で停車して、観光案内をしてくれる。タクシーと同様、車内灯を点けていないから、辛うじて外の景色がわかる。

 『奥入瀬ってね、結構がけ崩れが起きるんですよ。ここは去年崩れて、ひと月通行止めになって、大変だった。』

 『この辺ね、私は今度はこの辺が危ないって思ってます。』

 運転士自らのこんな解説は、妙な真実味があった。バスはこころなしかスピードを上げて、断崖下の道路を走り抜ける。

 焼山到着の頃には、あたりは完全な闇になった。車内灯が点き、バスは急カーブの山岳路を青森に向けて走る。『見えるものとして案内する』観光案内テープは、始発から止めたままであった。

 18時まえ、酸ケ湯着。バス停は、本日の宿の玄関先である。

酸ケ湯温泉

 酸ケ湯温泉は、八甲田山麓に湧き出る一軒宿の温泉で、古くから湯治場として知られている。
 泉源の温度は52.3℃、泉質は『酸性・含二酸化炭素・鉄・硫黄- アルミニウム-硫酸・塩化物泉(硫化水素型)<<低張性,酸性,高温泉>>』(以上、浴場に掲げられていた温泉分析書による)となっている。要するに、多くの温泉成分が溶けた硫黄泉である。

 部屋で旅装を解き、すぐに名物の千人風呂に浸かってみる。
 青森ヒバでできた浴場は、薄暗く、ぷうんと硫黄の匂いが漂っている。脱衣所は別々、浴場はひとつの混浴であるが、浴槽のすぐ近くまで衝立があり、若い女性も何人かいた。白い濁り湯だから、湯につかってしまえば関係ないらしい。
 泉質は前述したとおりだが、pH2.0という強烈な酸性の湯であることが酸ケ湯の特徴である。広い湯船に浸かってしばらくすると、尻の穴がヒリヒリしてきた。試しに湯を舐めてみると、恐ろしく苦酸っぱい味がする。(なお、酸ケ湯の名前は、無論この強烈な酸性に由来している。)

 しかし、5分も浸かっているうちに、なぜかリラックスした気分になるところが不思議である。9Kmのハイキングの疲れも、すっかり取れたような気がした。

 予想外に豪華な夕食を摂ったあと、再度風呂につかり、そのあと、湯治部を見学する。私の部屋は、1泊2食つきの、いわゆる普通の旅館だが、自炊が原則の湯治部というセクションが併設されているのである。既に閉店しているが、館内には小さな食料品店や炊事場もある。
 さすがに部屋の中までのぞくことはできなかったけれど、多くの部屋に明かりが点いていた。

続く

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2001年11月10日 制作 
2002年1月11日 修正