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■十和田湖観光子ノ口からは、遊覧船で休屋に向かう。 遊覧船は二層構造で、上層は特別料金が必要なグリーン船室である。500円の割り増し料金を払って特別船室に乗る人は皆無であったが、古くからの超A級観光地である十和田湖の"格"を伺い知ることができる。 案内放送によると、宇樽部には専用の造船所があり、十和田湖の遊覧船はそこで建造されたという。地下鉄漫才ではないけれど、観光船の謎がひとつ解消した。 十和田湖観光の中心地・休屋は、晩秋のたたずまいであった。紅葉が見事である。団体客に交じって、『乙女の像』などの名所を見物した。 休屋のバスターミナルから、青森行きの最終バスに乗る。 『いやー、今年も終わりだね。』 バスターミナルの係員と運転手の会話が聞こえてきた。 16時10分、夕やみ迫る休屋発。 バスの乗客は、私と中年女性のグループだけであった。運転席の後ろに陣取ったおばさんたちが、まるでタクシーのに乗っているかのごとく、少しハンサムな運転士に話しかける。 『運転手さんも、大変ね。』 子ノ口では、若い女性がバスを見送る。 『さむいねえ...。お客さん、いない?』 軽くクラクションを鳴らして、バスは子ノ口ターミナルを出る。 子ノ口を出ると、バスは午前中歩いた奥入瀬を下る。もう、ほとんど日は暮れているが、それでも運転手は随所で停車して、観光案内をしてくれる。タクシーと同様、車内灯を点けていないから、辛うじて外の景色がわかる。 『奥入瀬ってね、結構がけ崩れが起きるんですよ。ここは去年崩れて、ひと月通行止めになって、大変だった。』 『この辺ね、私は今度はこの辺が危ないって思ってます。』 運転士自らのこんな解説は、妙な真実味があった。バスはこころなしかスピードを上げて、断崖下の道路を走り抜ける。 焼山到着の頃には、あたりは完全な闇になった。車内灯が点き、バスは急カーブの山岳路を青森に向けて走る。『見えるものとして案内する』観光案内テープは、始発から止めたままであった。 18時まえ、酸ケ湯着。バス停は、本日の宿の玄関先である。 ■酸ケ湯温泉 酸ケ湯温泉は、八甲田山麓に湧き出る一軒宿の温泉で、古くから湯治場として知られている。 部屋で旅装を解き、すぐに名物の千人風呂に浸かってみる。 しかし、5分も浸かっているうちに、なぜかリラックスした気分になるところが不思議である。9Kmのハイキングの疲れも、すっかり取れたような気がした。 予想外に豪華な夕食を摂ったあと、再度風呂につかり、そのあと、湯治部を見学する。私の部屋は、1泊2食つきの、いわゆる普通の旅館だが、自炊が原則の湯治部というセクションが併設されているのである。既に閉店しているが、館内には小さな食料品店や炊事場もある。 |
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2001年11月10日 制作
2002年1月11日 修正