近江鉄道試乗記(3)


クハ1501(米原駅)


高宮駅で

クハ1500型の運転席
特異なブレーキ設定器に注目

米原駅で

多賀大社前〜高宮〜米原

 多賀大社駅に戻ると、さっき乗った車両が待機中であった。やはり、我々以外に乗客はいない。

 運転席では、一人乗務の運転士が出発信号機を見つめている。運転時刻表によれば、彼の仕業はまる1日、高宮-多賀大社前を往復するだけらしい。相当の忍耐が要求される仕事であろうと思う。

 高宮での連絡は良く、すぐに米原行き列車がやってくる。だいだい色の旧型車である。1回の訪問で3本の釣掛け電車に乗れるのは幸運だが、夏場、冷房車を集中して運用するため、新型車は検修中なのかも知れない。

 南彦根で下り列車と交換。やがて、左手にJR東海道線の太い線路が近づいてくる。

 近江鉄道彦根駅は、JRに隣接した1面2線の構造である。その向こうには、旧貨物ヤードがあって、様々な車両が留置されている。中には、東海道線電化当時の電気機関車などもあるそうだが、今日は見物している暇がない。

 彦根を出た列車は、一旦JRと別れ、小さなサミットを目指して勾配を上る。床下のモーターが重々しく唸り、小さなトンネルの中でノッチオフ。下り勾配を駆け降り、鳥居本駅着。乗降客もない小駅だが、その駅舎は一見の価値があるものらしい。

 鳥居本を出ると、左手に再びJR東海道本線と新幹線が近づいて、終点・米原着。

 かつては、JR米原駅と一体となっていた近江鉄道米原駅だが、貨物ヤード縮小に伴う旅客駅の整備で、現在はJRとは駅前広場を隔てた反対側に位置するかたちになっている。乗り換え旅客は、一旦改札口を出て、駅前広場を歩かなければならない。

 民営・JRとしては、弱小私鉄に塩を送る余裕なぞないのかも知れないけれど、鉄道会社の敵は、もはや同業他社ではなく、自動車のはずだ。運営主体の枠を超え、公共交通機関のネットワークを維持する意味で、何らかの工夫があってもよかったのではないかと思う。

 米原からは、223系新快速で帰途につく。最高速度130Km/h。運賃だけで乗れる列車としては日本最速の列車で、ちょっと居眠りをしたら、もう京都に到着するところであった。

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2001年4月15日 制作