南海歴史散歩 in 和歌山


特急サザン(和歌山市駅にて)


紀和駅本屋


紀和駅旅客上屋


和歌山市駅のホーム


和歌山市駅2番線を出発するJR列車


和歌山市駅で


難波駅で

紀和(旧和歌山)駅

 紀和駅に至る通りには、時計屋、洋服屋、肉屋、本屋など、懐かしい感じがする木造商店が建ち並んでいる。"駅前商店街"が活況を呈した1950〜60年代がそのまま残っているかのような眺めだが、通りを歩く人の姿はほとんど見られず、大半の店はシャッターを下ろしたままだ。

 寂れたを通り越して、死んでしまったかのような"駅前商店街"の突き当たりが紀和駅、1968年までは、和歌山駅であった建物である。
 直線を基調とした木造モルタル2階建ては規模も大きく、かつて県都を代表した国鉄駅の格が感じられる。恐らくは1950年前後の建築だろうと推測する。もっとも、無人化されて久しいようで、庇の内張りは剥がれ落ち、半ば廃虚のようだ。何もない待合室には、タバコの吸い殻が散らかっていた。
 改札口を通ってホームに入ると、古レールを支柱にした大きな旅客上屋がある。やはりこれは並の無人駅ではない。しかし、ホームは1面1線のみで、かつては広大であったであろう構内の大半は駐車場になっていた。

 一般に、西日本では、駅を無人化しても、古い駅舎をそのまま残す例が多いようである。私のごとき旅行者にとっては、線区の歴史を垣間見ることができて、楽しい。けれども、使い込まれた出札窓口が安っぽいベニヤ板で塞がれ、そこに心無い落書きがあったりするのを見ると、長い駅舎の一生の最期が汚されたようで、悲しくなる。
 これとは逆に、東日本、特に北海道では、無人化した駅の建物はさっさと取り壊して、跡に簡易なプレハブ式の小屋みたいなものを設置する例が多いようである。雪下ろしなどで、駅舎の維持管理に想像以上の経費がかかるからかも知れないが、地面に残された旧駅舎の床を見つけたりすると、これはこれで無性にわびしい。

 午後6時をまわり、だいだいいろの太陽が、団地の建物の向こうに隠れようとしている。その光を正面に浴びながら、2両編成の和歌山市駅行きがやってくる。

 私のほかに、この駅での乗降はなかった。

南海特急サザン

和歌山市駅→難波

 今日4度目の和歌山市駅に到着。電車の時刻まで多少の余裕があるので、由緒ありそうなこの駅のホームを観察することにする。

 和歌山市駅の本屋は、大手百貨店が入居する"駅ビル"である。自動改札機が並ぶ改札口はいかにも現代風だけれど、ホームに下りると、あちこちに"戦前"の匂いを嗅ぐことができる。
 古レールを再利用した上屋は、架線を支えるビームと一体となっている。まあ、これだけならそう珍しくはないが、和歌山市駅の上屋は、骨組み(柱)の下部が化粧タイルで装飾されており、これは、相応の"格"がある駅でしか見られない造作である。ホーム難波方にある列車扱室も、木造の趣のあるものであった。
 南海の歴史には詳しくないけれど、恐らくは1930年代の建築ではないかと思う。

 和歌山市駅は、開設時から駅全体が南海の管理下にあるので、JR線のホームも他と同じデザインの優美な上屋をもっている。しかし、かつては、紀勢本線の終着駅として長距離客車列車が着発したであろうホームは、1本はレールが剥がされ、もう1本も有効長は大幅に短縮されていて、残りは駐車場になっていた。化粧タイル張りの旅客上屋の下には、乗客に代わって乗用車が並んでいる。

 クラシックな和歌山市駅のホームに、特急サザン22号が入線してきた。新造後15年以上を経た車両が、まるで最新の車両のようにも見える。女性乗務員に迎えられて、指定席券に示された席に座る。

 発車時刻になっても、乗客の数はまばらである。こんな時刻の上り列車に8両編成を充てるのは、恐らくは回送を兼ねているからであろう。この列車の難波到着は19時59分。折り返し列車は、残業を終えたサラリーマンで満席になるのだろうと思う。

 和歌山市駅を出た列車は、今日3回目の紀ノ川を渡り、難波に向けて快走する。

 南海本線は、明治時代に敷設された路線である。その後、施設の建て替えなどが進んで、拠点駅は皆新しくなっているが、改修の手が回らない小駅には、一見に値する施設が数多く残っているという。もう、すっかり日も落ちたので今日は見ることができないけれど、たとえば浜寺公園駅の本屋は国の登録文化財となっているし、蛸地蔵駅の本屋は、その駅名同様、小規模ながら愛嬌ある建物らしい。また日を改めて、各駅を見物したいと思う。

 岸里玉出から高野線と並走し、通天閣を右手にみながら、難波着。

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 本稿の作成にあたっては、つぎのサイトを参考にさせていただきました。丹念に収集された地元の情報を整理して提供されている皆さんに敬意を表します。

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2002年5月25日 制作 2002年6月5日 修正