夢の片上鉄道(4)
--保守作業--

 

 

保守作業

 安全な鉄道輸送は、地道な保守点検で支えられている。保存鉄道では、華やかな運転業務だけでなく、保線だってボランティアの仕事なのだ。

 一見物人に過ぎない私には、どういう必要性があったのかわからないけれど、保存運転の合間に突然車両を移動して、レールの運搬作業が行われた。
 駅構内にレールが並べて置かれているのはよく見かけるが、それを動かす作業を見るのは初めてである。

 ローカル線のレールの質量は、1mあたり、だいたい30〜40Kgである。長さ10mのレールなら、1本300〜400Kg。想像以上に重い。
 しかも、一塊の物体ではなく、適当な弾性をもった"棒"であるから、なかなか思ったようには動いてくれないようである。

 黄色いヘルメットを被った"にわか作業員"たちは、長いバールのような棒を使って、慣れない手つきでレールをこじるように動かす。

 次に、車輪のついた摩訶不思議な道具(実際の鉄道で、保線基地の片隅に放置されているのは何度も目撃しているが、正式名称は不明)を使ってレールを吊り上げ、一気に移動させる。
 テコの原理で、少しの力でレールを持ち上げようというのだが、私が観察したところ、大人の全体重をかけないとレールは動かない。

 

車両補修

 駅のはずれのピットでは、キハ312が補修作業を受けていた。キハ312は、1953年に製造された片上鉄道の自社発注車両である。

 列車を動かすだけなら、わずかな軽油代だけで済むが、車両の補修には、時として大金が必要になるらしい。

 日々の私の仕事は、"耐用期間を過ぎた人間"の修理・調整(!?)だが、同様の状況にある鉄道車両を健全な状態に保つのは、いろいろな意味で容易なことではなかろうと思った。

 

続く


Copyright (C) 2002 Heian Software Engineering / Allrights reserved
2002年9月2日制作 2002年9月16日訂補