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■アルペン特急4号■宇奈月温泉〜立山目が覚めたら、雲ひとつない快晴であった。私は当初の計画通りアルペンルート横断を決行することにした とは言え、ひさしぶりの温泉旅館であるから、なるべくゆっくりしていたい。午前中、宇奈月温泉からは2本の観光特急が出るが、私はお寝坊旅行者向けのあとの列車で立山に向かうことにした。ゆったりと朝風呂を浴び、たっぷりの朝食をとってから、歩いて宇奈月温泉駅へと向かった。 宇奈月温泉駅は山小屋を模した橋上駅で、駅前広場には温泉の噴水がある。駅と隣り合うように黒部峡谷鉄道の側線が広がっている。えんじとだいだい色に塗り分けられた、関西人にはお馴染みの関電カラーの車両がいくつも留置されている。 黒部峡谷鉄道は、元祖『トロッコ電車』として有名である。けれども、実は電車は1両もなく、すべての営業列車は、電気機関車が客車を牽引するかたちでの運転だ。観光輸送と共に、沿線のダムや発電所への資材輸送も大きな使命のひとつで、ナローゲージながら、無蓋車・有蓋車・長物車・大物車と多彩な貨車を所有している。 私が列車を待っている間、黒部峡谷鉄道の構内では、入れ換え作業が行われていた。 宇奈月温泉09時35分発のアルペン特急4号で立山に向かう。 新魚津を過ぎ、列車はJR北陸線と並走する。 往路と同様、上市でスイッチバックした列車は、寺田で更に進行方向を変え、立山に向かう。 最初は平坦なところを走るが、やがて扇状地の上りにかかり、更には常願寺川の崖っぷちを走るようになる。ついに鉄道のレールを敷けなくなったところが終点立山で、宇奈月温泉への線路と似た線形になっている。 ■立山黒部アルペンルート■立山ケーブルカー(立山開発鉄道・立山〜美女平) 立山からは、ケーブルカーで美女平に向かう。 出発時刻が近づくと、乗務員が"運転席"に座る。一見、運転士のようだが、彼は車掌である。一般にケーブルカーの動力(運転)室は山頂側の駅にあって、列車を動かす係員はそこに勤務している。車両に乗務する係員の任務は、旅客の安全確保と万一の際の非常停止の手配だけであるから、運転士とは言わない。 ブザーが鳴って、発車。車両に動力源はついていないから、運転中は静かである。構造的には2軸客車であるから乗り心地はいまひとつで、ゴツンゴツンというジョイント音だけが脳天に響く。 立山駅を出てすぐのところで、右手にか細い線路が見える。"18段連続スイッチバック"で有名な国土交通省の砂防用専用軌道である。さすがは国の施設だけあって、予想外に立派な軌道である。一度乗ってみたいと思っているが、現在のところは便乗厳禁らしい。もっとも、この先、国の財政状況が悪化したら、国土交通省がなりふり構わぬ商売に打って出る可能性があると私はひそかに期待している。 ■立山高原バス(立山開発鉄道・美女平〜室堂)美女平からは、バスで室堂に向かうことになる。黄金週間前に必ずテレビに登場する、『雪の峡谷』を走るあのバスである。 もちろん、いまは残雪はない。山の天気は変わりやすく、富山平野はあれほどの快晴であったにもかかわらず、ガスがたちこめている。景色を見ることもできず退屈で、私はうかつにも居眠りをしてしまった。次に目が覚めたら、バスは室堂に到着するところであった。
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2001年10月2日 制作
2001年10月3日 訂補