私鉄特急乗り継いで...

立山黒部アルペンルート


特急うなづき号(電鉄富山駅で)


入れ換え作業(高山駅)


富山駅で


電鉄富山で


特急うなづきの車内


電鉄黒部駅で


元西武レッドアロー
(電鉄黒部駅)

ワイドビューひだ

高山〜富山

 高山からは、後続のワイドビューひだ9号で富山に向かう。
 高山本線全線を走破するこの列車も、高山で後部4両が切り離され、わずか3両の特急列車となって富山に向かう。乗客は少なく、自由席特急券を持った私は、文字通り自由に座席を選べる情況であった。

 飛騨細江で高山盆地が尽きたあと、列車は宮川が刻んだ深いV字谷に沿って進むことは一昨年と同じだ。けれども、この前来たときは工事中あった国道が、今日は立派な姿を現している。
 わずかな集落を従えただけの小駅を通過し、列車は猪谷に向かう。車窓に見えるのは、立ちはだかる山々と走る車のない道路、それに宮川の流れだけである。人の姿は見えない。高山を出る頃に降り始めた雨と相まって、何とも言えぬ寂寥感が漂っている。

 14時58分、猪谷着。小さな集落の中に、鉱業会社の社宅があるだけの場所である。ここから列車はJR西日本の領地に入る。特急がこの駅に停車するのは、神岡鉄道への乗り継ぎ客のため、そして、乗務員の交代のためである。けれども、神岡鉄道の下り列車は、17時15分までない。ワイドビューひだ9号の乗降客はゼロで、乗務を終えたJR東海の運転士だけがホームに残された。

 笹津の手前でぱっと視界が開け、列車は神通川が形成した扇状地をゆるやかに下る。雨はますます激しくなり、広い窓に何本もの水滴が走っていた。

特急うなづき

電鉄富山〜宇奈月温泉

 富山からは、富山地方鉄道で宇奈月温泉に向かう。

 電鉄富山駅は、JR富山駅を出て左手の商業ビルの一角にある。都市部に多い駅ビルである。2階から上の店舗は結構賑わっているようであったが、地階の駅部分は照明も暗く、閑散としている。
 ホームには、黄色と緑に塗り分けられた2両編成が待っていた。16時35分発の特急うなづき号である。
 私が乗ってきた特急ワイドビューひだ9号、大阪からのサンダーバード21号の乗客を宇奈月温泉に運ぶ使命を持った観光特急であるが、鉄道会社の意に反して、車内に観光客らしい人の姿はない。高校生や買い物袋を持ったおばさんが合わせて十数名乗っているだけである。観光特急と言いながら、実のところは地元客向けの列車なのだ。会社のほうもそのあたりは心得ているようで、この列車の特急料金は、終点宇奈月温泉まで200円、途中駅までならば100円となっている。
 それでも別料金が必要な特急であるから車掌が乗務しており、肉声の放送がある。近ごろは地方線区のワンマン化が進み、肉声放送を聞くことは滅多になくなった。

 電鉄富山を出た列車は、しばらくJR北陸線と並走したのち、大きく右に曲がる。カーブを曲がったところが稲荷町で、車両基地がある。
 新しい住宅街の裏のようなところを走ったあと、列車は常願寺川を渡る。河口に近いから川幅は広い。けれども、河原の石は皆スイカ程もある大きなもので、ただならぬ雰囲気が漂っている。常願寺川は、明日訪れる予定の立山を源流とする河川で、名だたる暴れ川ときく。上流では現在でも砂防工事が営々と続けられているという。

 寺田駅の手前で一旦停車。誘導信号機の現示に従って、列車は最徐行で進入する。特急うなづき号は、この駅で立山からの特急アルペン号を併結し、宇奈月温泉に向かうのである。
 ホームには数人の駅員が待ちかまえていた。JRでは併結作業専任の係員がいることが多いが、ここでは、営業の制服を着た駅員がヘルメットを被り、にわか作業員となっている。降り続く雨の中、大変な作業だと思う。

 列車はこのあと上市駅で進行方向を変える。本線上にスイッチバックがあるのは、珍しい。この付近は、富山平野の平坦地であるから、地形的な理由でそうなっているのではなさそうである。私は、石北本線・遠軽駅のように、分岐する路線が廃止された結果、どんづまりの駅になってしまったのだと勝手に思っていたが、実際には行き止まり式のホームがあり、その先に立派な駅舎がそびえ立っていた。上市駅の謎は深まるばかりである。

 上市を出ると、いよいよ薄暗くなって、写真撮影が難しくなる。

 このサイトの読者は、私を列車に乗ってお酒を呑んでいるだけの男のように思うかも知れない。鉄道雑誌でこのサイトと同様の企画を見かけるが(と言うより、このサイトが鉄道雑誌の二番煎じであるが)、これらは、鉄道会社の協力を得たうえで、専任のライターが文章を書き、プロのカメラマンが数日にわたって撮影をして仕上げる分業体制である。
 これに対して、このサイトの制作者である私は、ライター兼カメラマンであり、要所要所では録音もしなければならない。旅行中の私は人が思っているほどぼーっとしてる訳ではないのである。(単なる趣味でやってることだから、別にぼーっとしてても構わないけれど。)

 滑川から魚津まで、再びJR北陸本線と並走したのち、大築堤でオーバークロス、列車は電鉄黒部に着く。列車をも覆う巨大なホーム上屋がある。小さな車庫もあって、富山地方鉄道の東の拠点といった風情である。

 ここで、上り普通列車と交換。車両は、西武の特急レッドアロー号のお古で、こちらより設備がいい。

 電鉄黒部からは、黒部川が作った扇状地を遡ることになる。あたりはすっかり暗くなって、民家の明かりと街灯しか見えなくなった。

 17時43分、宇奈月温泉着。

 コンコースには、温泉旅館の番頭がずらりと並んでお客を迎えていた。

 

続く


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2001年10月2日 制作 
2001年10月3日 訂補