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■名鉄北アルプス■駅弁調達名古屋では、40分余りの乗り継ぎ余裕がある。近鉄名古屋駅と名鉄新名古屋駅は、専用の乗り換え改札で結ばれているが、私は一旦改札を出てJR名古屋駅のコンコースに向かった。 昨春、駅舎が超高層ビルに改築されたJR名古屋駅構内は、以前と様相が一変している。古くさい構内食堂や土産物店は姿を消し、しゃれた雑貨店や喫茶店が目立つ。駅が、旅行者のための施設から、都市とその近郊に住む人の集う場所に変わってきていることを実感する。 ■新名古屋駅名鉄新名古屋駅もまた、近鉄名古屋駅と並行するように設けられた地下駅である。近鉄のほうは行き止まり式のターミナル駅だが、豊橋と岐阜を結ぶ名鉄は、3面2線の中間駅型の構造だ。追い越しはできず、後続列車が迫っているから、どの列車も最小限の停車時間で次々と出発していく。 上下線に挟まれた島式ホームが有料特急乗り場である。 『2番線に特急北アルプス高山行きがまいりります。白線の内側までお下がりくださいっ!!』 自動音声の合間に、駅員の肉声放送が響く。 豊橋方に2つのヘッドライトの見えた。お目当ての列車の入線だ。自由席の行列が乱れる。カメラマンのストロボが閃光する。 ■新名古屋〜美濃太田私が飛び乗ると同時に折り戸が閉まり、列車が動きだした。 北アルプスに充当されるキハ8500型気動車は、JR東海のキハ85系を手本に1991年に製作された比較的新しい車両である。軽やかで力強い走りが自慢だが、加速中はエンジンの振動が伝わり、淡い排気が車体にまとわりつくように流れ去るのが見える。やはり、電車とはかなり趣が違う。 先頭の1号車自由席は、通路まで立錐の余地もない。かぶりつき乗車は、早々に断念した。2号車・3号車は指定席車で、無論、こちらも満席である。 ざっと見たところ、乗客の約2/3は鉄ちゃん、残り1/3はたまたまこの列車に乗りあわせた行楽客のように見える。前者は、車内をウロウロしたり、感慨深げに車窓を眺めているのが多い。後者は、さっそく飲み物を手に、観光ガイドブックを広げたりしている。 鉄ちゃん・行楽の異夢同床組もいる。私の3列ほど前に座った家族連れだ。 名鉄乗務員が検札が来た。若い車掌は、汗だくになって切符をチェックをしている。新聞報道によると、ふだん、この列車の乗客数は数十人程度だという。 犬山公園を出ると、列車は極低速でトラス橋を渡る。 車窓には、カメラを構える人の姿がますます目立つようになった。列車はこれから専用の渡り線に進み、JR高山本線に乗り入れるのである。 車内に異様な緊張が走る。皆、息をこらして、渡り線への乗り入れの瞬間を待っているのがわかる。立ち上がって、ビデオを回す人多数。 がくんと車体が揺れて、列車は左に曲がった。今にも止まりそうな速度である。ぎぎぎぎぎと、線路が軋む音がする。恐らく、老朽化した急曲線で、とんでもない速度制限がかかっているに違いない。やがて列車は、路地裏みたいなところで止まってしまった。何のアナウンスもないから脱線でもしたのかと思ったが、これは単に停止信号にひっかかったためらしい。 高山本線に乗り入れた列車は、突然速度を上げ、美濃太田に向かって快走する。貨物側線がある坂祝を通過、大きく右に曲がって、12時26分、美濃太田着。 ■美濃太田〜高山美濃太田到着直前、右手の引き上げ線に乗客を乗せたままのキハ85系気動車が見えた。これから併結するワイドビューひだ7号である。11時43分、北アルプスより3分早く名古屋を出たこの列車は、岐阜でスイッチバックしたのち、12時21分に既にこの駅に着いている。 私は遅れて到着する北アルプスが、ワイドビューひだの後部に併結されるものだとばかり思っていたが、現実は逆であった。恐らく、誘導信号機がないので、入換えのかたちでないと併結作業ができないのだろう。 美濃太田に到着すると、乗客は一斉に下車する。ホームに併結作業を見守る幾重もの人垣ができた。 程なく岐阜方からワイドビューひだがそろそろと近づいて、一旦停止。微速で前進し、連結器が噛みあった。慌ただしくホロが伸ばされ、ジャンパホースが接続される。 車掌が、乗客に車内に戻るように促すが、かなりの数の乗客は、依然として列車にカメラを向けている。何のことない、新名古屋出発時に乗っていた多くの旅客は、運賃・料金が格安な美濃太田までの試乗組であったのだ。 美濃太田を出ると、車内には空席も見られるようになった。車内の緊張が一気に解けて、普通の行楽列車に戻った感じだ。くだんの父親も、良きパパに戻って、家族で弁当を広げ始めた。私も、名古屋で買った弁当を食べることにする。 美濃太田から先の車窓風景は、ちょうど2年前に急行たかやまに乗車したときと同じであった。あの時と同じように、初秋の日差しを浴びて、山々は静かに息を潜めている。 13時28分、下呂着。乗客の半数が下車する。 14時12分、終点高山着。 列車の先頭部では、記念撮影の人垣ができている。純粋な鉄道ファンよりも、コンパクトカメラ片手の家族連れなどが多い。 |
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2001年10月2日 制作
2001年10月3日 訂補