『SLスチーム号』を牽引するC612
目が覚めたら11時。春の訪れを感じさせるぽかぽか陽気の休日だ。近所のファミレスでbrunchを摂ったあと、クルマで京都に出かけた。お目当ては梅小路蒸気機関車館。もう、何度も行ったことがあるが、ここ数年はご無沙汰だ。旧二条駅本屋の移築が完成したこともあり、久々に蒸機に会いに行こうと思う。時間に余裕があるので有料道路は使わず、京都に向かう。
七条通りの山陰線高架下を左折。駐車場の空き待ちの行列が出来ていたのにはびっくりしたが、十数分待ちでクルマを置けた。少し前まで、国鉄精算事業団の所有となっていた空き地は、市営の公園になっている。チンチンとゴングを慣らしてN電が走っているが、これは次回に試乗することにして蒸機機関車館へと急ぐ。
いかにも現業機関といった粗末な木造建物は姿を消し、堂々たる駅舎が目に入った。もとの山陰本線・二条駅の本屋である。1904年に造られたこの建物は、京都市指定の有形文化財になっているそうだ。
自動ドアの玄関から中に入って、400円ナリの入場券を買って入場。
建物の中は壁がほとんど撤去されている。投炭練習機、タブレット、運転時刻表などの展示物は以前とあまり変わらない。目新しい展示品は、日本で活躍した蒸機のHO模型とC11のカットモデルくらいで、あまりぱっとしなかった。
新しく塗装し直された扇形車庫に入る。大正・昭和の時代を駆け抜けた蒸機がずらりとならぶ姿は何度来ても壮観だ。注油を欠かさない足回りは鈍いくろがねの輝きを保ち、磨かれた前照灯がターンテーブルを睨んでいる。広島からやってきたC621も美しく整備されていた。
C621
扇形庫で休むD51200(左)とD50140
500mあまりに延長された展示運転線では、C612が2両のトロッコを牽いて展示運転中。『SLスチーム号』と称するこのミニ列車、入館時に貰ったリーフレットでは1日3回運転となっているが、休日の今日は遊園地のアトラクション同様、客席が埋まった段階で随時運行しているようである。1回200円と手ごろな値段なので、私も試乗してみることにした。
蒸機に連結されているのはテント張りの客車2両。怪しげな台車を履いていて、素性は不明である。製造銘板みたいなものはないようだ。梅小路運転所から大宮通りまで約500mの線路を往復する。蒸機は運転区向きなので、推進運転で発車するのだが、最後尾の客車にはちっちゃな運転台(と言っても放送設備と非常弁があるだけ)があり、係員が前方を注視している。
推進運転中の『SLスチーム号』。隣の東海道線を201系普通電車が駆け抜ける。
『大きな汽笛が鳴ります!』
係員のアナウンスの後、長声汽笛が鳴って出発。亜幹線旅客機として生まれたC612にとって、2両のトロッコは荷が軽すぎるのだろうが、それでも豪快なブラスト音を伴って緩やかに加速していく。山陰線の下をくぐって、左手に東海道線の線路が見えるあたりでおしまい。今度はC612を先頭に梅小路に向けて出発。10分足らずの小旅行は終わった。
15:30分、最終『SLスチーム号』の運転を終えたC612は、ターンテーブルに乗せられて、モーターショウの展示よろしく1.5周する。キャで手を振る機関士はさしずめキャンペーンガールというところか。石炭灰を落としたC612は更に後退して、給炭・給水を受ける。現役機関区当時のコンクリート製のホッパは既になく、小型のフォークリフトで石炭を積み込む。
DE101149に牽かれてターンテーブルに載るC622
このあと、C612が自力で扇形車庫に入って終わりだと思っていたら、車庫の片隅で眠っていたDE101149が出てきた。ターンテーブル上で向きを変え、C622に連結される。エンジン音がひときわ高くなり、C622の巨体がゆっくりと牽き出されてきた。メインロッドが上下する。デフにはおなじみのツバメのエンブレムが輝いている。その美しい姿に思わず見とれてしまった。
ターンテーブルに載せられたC622は90度向きを変えて、今度はC612が後押しするかたちで扇形庫の別の線に押し込まれた。梅小路蒸気機関車館は月曜休館。来週はC622が『SLスチーム号』を牽くのかも知れない。
C622を押し込むC612。期せずして『重連運転』を見ることができた。(C622は無火)
扇形庫からの眺め。1日の運転を終えて休息するC612。転車台の向こうに現役のEF66とDE10が見える。
このあと、DE101149がもと居た場所に戻り、C612が屋根のない留置線に置かれて作業は終了した。
(1998年3月8日訪問)
■梅小路の保存蒸機リストはこちら。
■梅小路蒸気機関車館
京都市下京区観喜寺町 phone:075-314-2996
開館 : 0930〜1700 (入館は1630まで)
月曜休館(祝日にあたる場合は翌日)