■松江〜木次
弁当を買い、トイレを済ませてから息を切らしてホームに上がると、京都方からキハ120が入線してきた。残念ながらロングシートの車両で、しかも1両きりの列車であった。
松江駅で出発を待つ549D |
松江で買った駅弁 |
10時45分、松江を出発。太いレールの山陰本線を快走し、宍道駅5番ホームに到着。
宍道駅では、タブレットを持った木次鉄道部の運転士と交代。『票』の看板がついた出発信号機が進行現示となって、11時13分、いよいよ木次線に乗り入れる。
宍道駅にて |
宍道駅の木次線出発信号機 『票』の看板は通票が必要なことを示している。 |
大きく左にカーブすると、すぐに25〜30パーミルの上り勾配となる。半径200m以下の急カーブが続き、さすがのキハ120も30〜40Km/hしか出ない。南宍道は勾配の途中に設けられた停留所で、ホームの有効長は2両ぶんしかない。この先の各駅も非常に規模が小さく、どれもまるで遊園地の外周列車の駅のようであった。
切通しの小さなサミットを越えると色灯式の場内信号機が現れ、加茂中に着く。程なく行き違いとなる548Dが到着、タブレットを交換してすぐに発車していった。
549Dの運転席 |
加茂中駅のプラットホーム |
上り列車の発車を見送った運転担当助役がタブレットを持って乗り込んでくる。
『木次まで通票マルです。』
『はい、マルーッ。』
規則通りの通票確認が終わったあとは、助役はお国訛りで運転士と歓談している。発車時刻が近づき、ホームに戻った助役は懐中時計と改札口を相互に注視する。定刻、助役の右手が上がる。運転士はドアを閉め、『出発進行!』の喚呼とともにノッチ投入。小さな車体がぶるぶると揺れ、1両の列車はゆっくり動きだす。振り返ると、後部運転台の窓から、直立不動で列車を見送る助役の姿が見えた。
11時53分、広い構内をもった木次に到着。
緩やかな曲線を描くホーム中ほどに構内踏切がある。列車到着時は階段を鉄板でふさぐ、昔なつかしい仕組みが健在であった。この駅では後部に回送車両を1両増結。車掌のほか便乗の社員らしい2人も乗り込んできた。彼らの会話を聞いていると、今日は貸切の臨時列車が走るようで、2人はその乗務員らしい。
木次駅の場内信号機 |
木次駅にて |
赤線入りの制帽を着た助役がタブレットを持ってくる。木次−出雲三成、出雲三成−出雲横田がそれぞれひとつの閉塞区間となっているのだが、出雲三成での行き違いは朝夕のみ。昼間は2つの閉塞区間を併合する取り扱いを行っている。
運転時刻表の木次−出雲横田間は青鉛筆で直線が引かれ、楕円形のマークが記されている。タブレットキャリアの中には、楕円形の穴が開いたステンレスの円盤が入っていた。あまり見慣れぬものだが、これが併合時用の木次−出雲横田の通票らしい。