1997年9月24日(水)-その1
■釧路湿原
目が覚めたら、天気は快晴。今日午前中は釧路湿原見物に充てようと思う。
釧路駅で朝食のドーナツとコーヒーを買い、やや小振りな定期観光バスに乗り込む。予想してたより乗客は多く、半分くらいの座席が埋まっている。
JR釧路駅 |
湿原めぐりの定期観光バス(阿寒バス) |
バスは釧網本線と並行する国道391号線を細岡の展望台に向かう。都心部はちょっと寂れた感じの釧路だが、郊外には大型のショッピングセンターが立ち並び、交差点では渋滞すら起きている。ヒトの移動が鉄道から自動車に移ったことを象徴するような光景であった。
細岡展望台は釧路湿原の東端に位置するビューポイントで、JRの釧路湿原駅が近い。眼下には茶色く色付き始めた湿原とうねうねと流れる釧路川が一望できる。遥か彼方に製紙工場の煙突が見える。
20分ほど見物したあと、今度はコッタロ展望台に向かう。塘路駅をすぎたところで、バスは湿原を突っ切る未舗装道路へと左折する。対向する車はなく、バスは砂煙をあげながら走る。 15分ほどで着いた場所は、ちっちゃなトイレがあるだけの広場で、我々以外に人の姿はない。もちろん、土産物屋も自販機もない。展望台へはここから200段近い急な階段を上ることになる。息を弾ませながら振り返ると、すぐ下にコッタロ沼が見える。水面は鏡のように静かで、青い空が写っている。南に目を転じると、遥か遠くまで湿原が続いている。ガイドが『鶴がいます』という。よく目を凝らすと、タンチョウのつがいが餌をついばんでいた。
コッタロ沼 |
コッタロ展望台から更に行くと、やがてバスは鶴居村の酪農地帯へと入っていく。穫り入れの終わった牧草地には、冬の間、牛の餌となる干し草が大きなロール状になって置かれている。1つが約500〜700Kgで、牛1頭のひと月ぶんだそうである。
突然、バスが急停車した。事故でも起こしたのかと思ったら、遥か向こうの牧草地に鶴がいるという。ひと組のタンチョウ夫婦がこちらを見ている。ガイドによれば、なかなか見る機会はないと言うのだが、その後もたびたび目撃できて、最後にはバスも止まらなくなってしまった。
次の見学地は、釧路市営の釧路湿原展望台。入場料金を徴収する立派な施設であるが、湿原西南端の比較的開発が進んだ場所にあり、もっとも感動が少ない。タンチョウを飼育している鶴公園(こちらも有料)にも行くが、野生の鶴を幾度も見ているから別にどうということもない。雄別鉄道や鶴居村営軌道雪裡線の廃線跡ははっきりせず、13時まえ、釧路駅に戻った。
■和商市場
列車の発車時刻まで若干間があるので、駅近くの和商市場に向かう。
戦後のヤミ市から始まった市場で、道東の海産物・農産物が集まっている。函館朝市・札幌二条市場と並ぶ北海道三大市場とされているが、阿寒や弟子屈の温泉旅館の板前さんも仕入れに来るのだそうで、もっとも観光化されていない市場でもある。今日はここで昼食を調達する予定でいる。
いちばん奥の総菜屋では、好みの分量のご飯だけを発泡スチロールの容器に入れてくれる。つぎに市場の中で好みの『具』を買ってこれに載せれば、自分だけの『海鮮丼』を作ることができる訳である。
プロ相手の市場でもあるので切り身のパックなどはないが、店によっては寿司ネタ程度の大きさの切り身が数切れ盛られた小皿が準備されている。自分の好みを言えば、威勢のいい店員がトレイに盛り付けてくれるわけである。てんこ盛りのウニとイクラ、ホタテ、鮭、甘海老を買ったが、総額3000円弱であった。
和商市場 |
『海鮮丼』のネタを買う |
おおぞら3号の乗客を受けた3745Dは、立ち客も出る状態で釧路を出発する。周囲の乗客の視線が気にならないわけでもないが、早速、包みを開けて、海鮮丼の調理にかかる。さきほど買った具を熱いご飯にのせ、醤油をかけると『特撰釧路海鮮丼弁当(?)』の出来上がり。無論、恐ろしく旨い。車窓に広がる湿原を眺めるのも忘れてこの弁当を食べた。