山陽新幹線500系と九州の客車列車

 10日(注:1997年5月10日)に小倉で学会があり、福岡に行ってきました。あまり『鉄』はできなかったけれど、50系客車列車と500系に乗れることができましたので、レポートします。

 10日は、尼ケ辻の上り始発で難波へ。この電車、900系2連。昔、高校に電車通学してたときは、橿原線の普通と言えばたいていこれ。妙に懐かしい感じ。
 新大阪駅には0630すぎに着き、のぞみ501号で9時すぎに小倉着。速い。北九州国際会議場で学会。1700まえに終了。

 この日は博多で友人と会う約束。スーツ姿のままなのであまり妙なことはできないけれど、それまでの間、ちょっと『鉄』することにする。

 日帰りする同僚とわかれたあと、小倉から415系下関行きで門司駅へ。構内はがらんとしていて人影は少ない。後続の813系快速で門司港駅に着く。

門司港駅本屋

プラットホーム

 終端式の長いプラットホームはなかなか風情がある。木造のホーム上屋は煤で真っ黒。もしかしたら、SL時代の煤煙がそのままこびり着いているのかな?

 改札北側に関門連絡船桟橋への通路跡地というのがあり、見物。別にどうということはないが、案内板によれば、国鉄関門航路は1964年10月末まで運航されていたらしい。関門トンネル開通と同時に廃止されたと思っていただけに、ちょっと意外な発見であった。

 昔なつかしいスタイルのトイレで用を足しているうちに、お目当ての2655レが入線。いまや貴重品となった普通客車列車。牽引機は全検あがりの艶やかなDD51871。『門』という区名札が入っている。あとに続くのは冷房改造された50系1000番台6両。

出発を待つ鹿児島本線2655列車

DD51 871

 定刻、門司港出発。すでに冷房が稼働していてその騒音が耳障りだけれど、発車時の前後動や軽いジョイント音は間違いなく客車列車のものである。

 かつての工業地帯の中を、夕陽に向かって列車は進む。EF81やED76が休む東小倉駅、コンテナ車が居並ぶ浜小倉駅など、見逃せないものが多く、車窓に釘付けになる。

 この列車は黒崎から筑豊線に直通する。最後までつきあいたいところだけれど、今日はここまで。後続の811系快速で博多に向かう。

 友人の案内でキャナルシティへ。失礼ながら、福岡にこんな立派な施設があるとは思っていなかった。焼き鳥で日本酒を呑んだあと、中洲の屋台で更に呑んだ。長浜ラーメンも試食。単なるトンコツラーメンだと思っていたのだか、いわば『醤油トンコツ』とも言えるスープで、なかなか旨かった。

 11日は友人の運転するクルマで呼子へ。唐津から先、クルマの車窓から未完成のまま放置された呼子線が見える。新幹線が走るような立派なコンクリート製の高架が続いている。

 呼子では活いかの造りを賞味。皿に盛られたいかの身は透き通っていて、その奇麗さは息をのむ程。ゲソに醤油をかけたらくねくねと動き、これを口に入れると吸盤が舌に吸い付いた。1人前2500円でしたが、これはオススメです。

透き通ったいかの刺し身を切り分けているところ。

水槽で泳ぐ活いか

 1900前、博多駅に着き、友人とわかれる。いよいよ500系試乗である。
 1918頃、博多南方から500系入線。写真を撮る人が多く、警笛を鳴らしながら進入する。私の席は4号車20番E席。目の前が壁というあまり上等とは言えない席だけれど、金曜日に買えたんだから、まあ、よしとしよう。

 定刻、博多発。女性車掌の肉声による放送がある。検札にきた方は『福澤』という名札をつけておられた。さっそく車内を探検。車体断面は円筒形で、まるで飛行機のよう。1号車の先頭寄りは、天井が下がっているのがはっきりわかる。ほとんど空間がない網棚のかわりか、1・2番の列はC席がなくて荷物置場になっていた。

博多駅に入線する500系のぞみ

500系の運転席サイドビュー

 車端に近いせいか、割とよく揺れる。外は真っ暗で、300Km/hのスピード感はあまりない。車内の情報表示器はパックツアーの宣伝ばかりで、速度の表示はなし。もうちょっと工夫があってもいいのにね。広島、岡山と徐々に乗客が増える。とは言え、B席・C席は半分以上が空いたままで新大阪着。

 下車後、車体をじっくり観察。まずは5号車の集電装置。『パンタグラフ』と呼ぶには抵抗を感じるような斬新な形態。300系では非常に巨大なパンタカバーだが、500系のは意外とこぶり。車両間の高圧渡り線も碍子は見えず、空力特性の改善には非常に力が注がれている感じ。

 博多寄りの先頭車では、記念撮影の順番待ちができている。ノーズが長く、広角レンズだとかなり離れないと全容が収まらない。

 後部標識灯はLED式で、ダッシュボード上に置かれたかたちになっている。その前にはなぜか自動車電話のアンテナ。鳥飼基地で問題がおきたら、これで直接博多の担当者の指示を仰ぐってことなのかな?
 JR貨物の機関士も連絡用の携帯電話を持ってるらしいし、他社線内での連絡手段はけっこう問題になるのかも知れない。運転席横の車体には直径10cmくらいの小窓があって、中には何やら光センサーみたいなのがついていた。

新大阪駅到着後も人だかりができる

JR西日本の女性車掌

 回送される500系を見送ってから、乗り換え改札を出る。大阪駅では市内着の周遊券を提示しただけで出場。東西線開業できっぷを確実に手元に残せることになった。御堂筋線、近鉄線を乗り継いで、23時すぎには自宅に着いた。

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 乗車中はそれほど感じない500系のスピードですが、夜の7時すぎまで博多でいて、その日のうちに楽勝で自宅に帰れるというのはやっぱり速いと思います。

 ほんのちょびっと乗っただけの50系客車列車ですが、もしかしたら生涯最後の体験になるかも知れないですね。福岡の街は何だかとてつもなくパワフルな印象で、また行きたいなあ。頻繁に走っているカラフルな特急電車群には一度も乗れなかったけれど、これは夏休みに豪遊券でも使って一気に乗ってみるつもり。
 あと、呼子の活いかの造りはとんでもなく旨かったです。鉄道旅行者には少々不便ですが、唐津に行く機会があれば足を伸ばす価値はあります。(今回の出張の最大の成果はこれだったりして!)

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(1997.10.30制作, 2003.6.12最終修正)