三重県四日市港にある末広橋梁は、日本にただ一つ残る現役の鉄道可動橋だ。
 国の重要文化財に指定されるほどの貴重な施設だが、いまも、1日数往復の貨物列車がこの橋を通過し、桁の開閉が見られるという。穏やかな秋の一日(2008年10月16日)、このめずらしい鉄道遺産の見物に出かけた。

※掲載の写真は、2008年10月16日に私が撮影したものです。

末広橋梁について

 末広橋梁は、四日市港内の千歳運河に架かる、全長:57.98mの鉄道可動橋である(→地図)

 1931年12月に開通したこの橋は、この分野の第一人者と言われた山本卯太郎氏の設計で、『山本式跳開橋』と呼ばれる。昭和初期、各地の港に同様の施設が造られたが、今なお現役なのは、この末広橋梁のみである。

 写真の左から2番目の可動桁(長さ:17.6m)が四日市駅方(写真左手)を支点にして跳ね上がる構造で、画面左端に桁の開閉を操作する小屋が見える。

 線路方向から見ると、門型のタワー(高さ:15.6m)が印象的だ。
 ギロチンの刃のように見えるのは、質量:24トンのバランスウェイト。橋を跳ね上げた時には、列車の進路を塞ぐように下がって来る。

 我が国の港湾の近代化を示す施設のひとつとして、現役の鉄道施設としては異例の、重要文化財に指定されている。

※一部を除き、写真のクリックで拡大できます。

貨物列車がやってきた!!

 ひなたぼっこをしていたら、遠くで踏切警報機が鳴りだした。エンジンの轟音がじょじょに近づいてくる。地響きをたて、赤い機関車が現れた。

 機関車のデッキには、無線機を手にした係員がいて、進路の安全を確認している。

 機関車は、ことし喜寿を迎えた可動橋をいたわるように、ゆっくりと進んでいく。
 あとに続くのは、石灰石を満載したホッパ車。重々しいジョイント音が、鋼製桁を振るわせる。

 貨物列車の行き先は、埋め立て地にある太平洋セメント(株)のセメントサイロ。

 貨車を解放した機関車は、今度は荷役の終わった空車を引っ張って、すぐに戻ってくる。

 バラ積みセメント専用のタンク車が続く。

 末広橋梁を渡ったところで一旦停止。踏切の安全を確認したのち、ゆっくりと四日市駅方に走り去った。


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制作:2008年10月19日 修正:2016年05月27日