弁慶号機関車を先頭に快走する外周列車

 遊園地の鉄道系定番アイテムと言えば、まずは外周列車であろう。

 なぜかカウキャッチャーを装備したアメリカ型蒸気機関車が数両の客車を引っ張っているのが常で、ここ奈良ドリームランドも例外ではないが、原寸大のレプリカを走らせているところは他に例がない。

 外周列車の乗り場は、遊園地正面にそびえるドリームランドステーション。赤煉瓦の立派な建物にみえるが、実は木造である。

 石垣に嵌め込まれた大理石のプレートが目をひく。開園当初の高級遊園地のイメージを今に伝えている。

 この日の列車は、1880年に手宮(小樽市)-札幌間を走った北海道最初の鉄道(幌内鉄道)を模したもの。

 客車(開拓使号)は2両連結で、自動連結器・自動空気ブレーキを装備している。下の写真のように、内部は現代風だが、外観は1/1スケールでホンモノを忠実に復元したとのこと。

 こちらが、客車の内部。

 近鉄電車を思わせる赤いロングシートは少々興ざめだが、客室内部でもダブルルーフが再現されていることは注目に値する。

 ホームから写した弁慶号とその運転席。

 見覚えのあるマスコンハンドルが鎮座していることからわかるように、実は、蒸機の格好をした内燃機関車である。ボイラの乗った機関車は完全な飾りで、テンダの部分にエンジンが載っているらしい。

 計器盤に並ぶ圧力計や速度計は、ホンモノの鉄道車両とまったく同じ部品を使っている。

 持参した巻尺で軌間を確かめてみた。
 多くの資料に書かれているように、日本標準軌(JR在来線と同じ)の1067mmであった。

 我が国には、これより狭い軌間762mmの営業鉄道路線(近鉄内部線・八王子線、三岐鉄道北勢線、黒部峡谷鉄道)もある。

 ちなみに、東京ディズニーランドウェスタンリバー鉄道は、762mmゲージである。

 腕木式の出発信号機。
 6年前に来たときは稼働していたのだけれど、ついにその動きを止めてしまったようだ。列車は、停止現示を無視して出発する。

 機関車牽引列車なので、カブリツキは楽しめない。そこで、最後尾車両から過ぎ去る風景を眺めることにした。

 列車は、落ち葉に埋もれた線路をゆっくりと走る。

 内燃機関車であるからドラフト音はない。けれども、客車特有の静かな車内に響くジョイント音は、今となっては大変貴重である。

 目立たないところにある車庫。マッチ箱スタイルの客車が留置されている。

 実は、外周列車には、もう1編成が在籍している。1972年、新橋-横浜間を走った我が国初の鉄道列車を模したものである。

 "1号機関車"は検修庫の中にいたが、屋外に留め置かれた客車は傷みが激しい。

 トンネルだってあるのだ。"黒髪山トンネル"というらしい。
 煉瓦積みのポータルは蔦に覆われ、扁額の文字は判読不能である。

 島式ホーム1面2線の"幻想の国ステーション"跡を通過。樹木の茂りかたからして、駅の営業が休止されてから、相当の時間が経過している模様である。

 こちらの出発信号機は進行現示のまま、錆び付いてしまっている。

 列車は、更に常緑樹の森をゆっくりと走る。

 申し訳け程度にバラストが撒かれた薄い道床、チョックが添えられた木製枕木....。ホンモノの鉄道では、もう、数十年前に消えてしまった光景だ。

 このあと列車は"第2のトンネル"に入るのだが...。

 約10分の旅を終えて、列車は再び"ドリームランドステーション"に戻ってきた。

 退園間際に撮った写真だが、こうして見るとなかなか立派なものだ。


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制作:2004年12月12日 修正:2005年1月21日