その他のtips

ストロボ機能

 無線機の性能とは何の関係もない機能だが、コンシューマ市場で勝ち抜くためには、こういう"お遊び"も必要なのだろう。

 要するに多色発光ダイオードを用いたインジケータで、1) MAINバンドスケルチオープン、2) SUBバンドスケルチオープン、3) MAIN・SUBバンドスケルチオープン、4) MAINバンド送信、5) SUBバンド送信、6) 充電完了 の各状態で、何色の表示をするか、自由に選択できる訳だ。

 これがまた非常に凝った設定方法になっており、まず、10個の色パレットがあり、R・G・Bの各色について256段階、つまり、俗に言う"1677万色"の中から1つの色を設定できる。つぎに、前述の6つの状態について、希望するパレットの番号を指定することにより、最終的なインジケータの発色が決まるというわけだ。

 現実には、チップ内での各色の混合がうまくいかず、中間色を表現しようと思うと、何やら妙なグラデュエーションがついてしまう。

 デフォルトでの色設定は、つぎのとおり。

MAINバンドスケルチオープン:緑(R:0, G:45, B:0)
SUBバンドスケルチオープン:青(R:0, G:0, B:48)
MAIN・SUBバンドスケルチオープン:橙(R:57, G:46, B:0)
MAINバンド送信:赤(R:51, G:0, B:0)
SUBバンド送信:紫(R:50, G:0, B:44)
充電完了:青(R:0, G:0, B:48)

 純色であっても、発色程度が50前後になっているのは、一種の明るさ調整と共に消費電力の抑制をはかっていると思われる。各色とも発色最大(255)にすると、ランプは眩しいくらいに輝くが、相当の電力を消費しているようにも思う。徹底的に電池を長持ちさせたい方は、RGBすべてに0を設定すればよい(インジケータは一切点灯しない)。

 PC-9800時代のディジタルRGBの世界で育った私は、MAIN・SUBバンドスケルチオープンで橙色になるというのが直感的に理解できないので、シアン(G+Bの混色)に変更した。

防水機能

 VX-7のウリのひとつが、その防水性能である。
 JIS保護等級7種防浸形(相当)というもので、定められた条件(水面下1mに30分間放置)で内部に水が入らないというものだ。これは、万一水中に没してもダメージを受けないという意味であり、水中での使用を目的としたものではない。まさか"水中トランシーバ"として試用してみる人はいないと思うが、一般に環境中の"水"は導体であるから、仮に水中で使用しても、電波は飛ばないし何の信号も受信できないであろう。

 なお、"受信改造"もしくはオプションの気圧センサーユニット(SU-1)の取り付けは、電池パック取り付け位置にあるシールを剥して行う。これで気密が保たれるのかと危惧したが、実機をみると、電池パックと本体の間にゴムパッキンがついている。JIS保護等級7種防浸形(相当)というのは、電池パックを装着した状態での性能のようだ。

 

左:気圧センサーユニット取り付け部のシール

 電池パックを外したところ。
 "受信改造"ポイントもこの下。

空線信号キャンセラ

 受信音声に特定の可聴周波数の信号がある場合、低周波出力をマスクするだけの単純な機能だが、"鉄チャン無線家"にとっては、VX-7のおおいなる魅力のひとつであろう。広帯域受信機では、すでにこの機能を持つものはあったが、アマチュア無線機としては初の装備である。

 『法律に別段の定めがある場合を除くほか、この無線局の無線設備を使用し、特定の相手方に対して行われる無線通信を傍受してその存在若しくは内容を漏らし、又はこれを窃用してはならない。』----無線局免許状に必ず記載されている注意書きである。JRの列車無線という"特定の相手方に対して行われる無線通信"を傍受するための機能をアマチュア局の無線設備に付加することは、法律上の疑念が拭い切れない。そのニーズは十分に認識しつつも、これまでその機能をもった無線機が登場しなかったのは、無線機メーカーにそれなりの慎重さがあったからであろう。

 しかし、VX-7では、特長のひとつとして堂々とPRされている。このあたりに、タテマエをかなぐり捨ててでも"商売"に走らねばならない現在のアマチュア無線機器メーカーの置かれた苦しい立場が透けて見えるような気がする。

 さて、現在JR本州3社の主要線区で用いられている列車無線は、400MHz帯・小ゾーン方式・アナログ複信式の無線電話である。線路に沿って数Kmおきに指向性アンテナをもつ基地局が配置されるいっぽう、各列車の運転席には、1Wという比較的低出力の無線機が設備されており、150MHz帯・大ゾーン方式の大手民鉄の列車無線とは少々異なったシステムとなっている。

 無線回線の制御には、比較的単純なアナログ信号が用いられている。"まるぴのページ"等、いくつかのサイトによれば、その詳細はつぎのとおりである。

基地局送信信号

2280Hz 空線信号
2400Hz 個別呼
1960Hz 一斉呼
800Hz 試験良好

※上記以外に無線ゾーンの識別の目的で、88.5Hz、107.2Hzもしくは131.8Hzの低周波信号が重畳されている。他方、車両に搭載されている無線機は、送信の際、直前に受信した電波に重畳されていたのと同じトーンを送信する仕組みになっている。基地局側の受信機には、いわゆるトーンスケルチが組み込まれており、このメカニズムによって、ゾーン外の基地局に誤って信号が受信されること(オーバーリーチ)を防いでいる。

移動局送信信号

2300Hz 中央呼および応答
1600Hz 割込
800Hz 試験

 通話がないときは、基地局からは2280Hzの空線信号が常時送信されているので、常時"ピー"という音声が聞こえて耳障りだ。VX-7の空線信号キャンセラは、この2280Hzを検出し、低周波出力をマスクする仕組みになっている。

 JR列車無線専用の空線信号キャンセラは、10年程まえに自作したことがある。PLL ICの"定番"、NE567を用いたものだが、時定数のとりかたがまずく、誤動作が多かった。その点、VX-7の回路はなかなかよく練られていて、通話音声に含まれる低周波信号で誤動作するようなことはない。ただし、"特定信号が検出されたら低周波出力を断とする"という単純なロジックであるため、受信信号が弱い場合や小ゾーンの境界で複数の基地局からの電波が干渉する場所では、空線信号の検出ができず、ノイズ混じりの"ピー"音が出ることもある。

 JR車両の運転席に積まれている実際の無線機では、恐らく、次のようなロジックで回線制御を行っていると思われる。

1) 電源投入時点では、AFアンプOFF。

2) 一定時間以上、一斉呼信号(1960Hz)を受信したら、AFアンプをONにする。一度AFアンプをONにしたら、空線信号(後述)を受信するか、あるいは通常のノイズスケルチがOFFになる(=基地局からの電波を受信できなくなる)まで、これを維持する。

3) 一定時間以上、個別呼信号(2400Hz)を受信したら、AFアンプをONにする。その後、乗務員が"応答"ボタンを押さない限り、数十秒でAFアンプがOFFになる。空線信号の受信受信もしくはノイズスケルチOFFでもAFアンプはOFFになる。

4) 一定時間以上、空線信号(2280Hz)を受信したら、AFアンプをOFFにする。一度AFアンプをOFFにしたらこれを維持し、空線信号を受信できなくなっても、AFアンプONにはしない。AFアンプONの条件は、上記2)、3)のみ。

 つまり、空線信号は、AFアンプをOFFとするためのトリガにしか過ぎない。下線を付した部分が単なる空線信号キャンセラとの違いであり、弱電界地区でも誤動作しないのは、このためである。

 VX-7の空線信号キャンセラON/OFFは、セットモード([F] + [0])で行うが、常時ONにしておいても特段の支障はなかった。

注意

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2002年7月3日 制作 2002年10月13日 修正