入来温泉 入来温泉湯之山館


手前:アゼロ浴槽 奥:柴垣浴槽


かかり湯枡と洗い場

 入来温泉は、薩摩川内市の山あいにある温泉地。副田(そえだ)湯として、14世紀の文献に登場するという古湯でもある。

 "アゼロ湯"と"柴垣湯"、それぞれ独自源泉を使う2か所の公営公衆浴場が知られていたが、近年着工した土地区画整理事業で両者とも跡形もなく取り壊されてしまい、後継施設として、2015年4月4日にピカピカの新浴場がオープンした。

 新築された建物は立派な唐破風をもつが、全体的には身の丈にあったシンプルな造りである。

 凝灰岩張りの浴室には、アゼロ、柴垣の2つの浴槽があり、旧来の2か所の源泉が使われている。やや広いアゼロ浴槽は黄土色の濁りのある湯、柴垣浴槽には、比較的透明感のある湯が満たされている。口に含むと、前者は塩味、後者は強い金気を感じた。お湯の好みは人ぞれぞれだが、個人的には、軽い印象の柴垣湯のほうが肌にあう感じだ。
 露天風呂はないが、小さなミストサウナと水風呂があるのは、観光客より地元の人たちの要望を優先した結果であろう。

 以前の浴場には、洗い場に専用の湯枡があって、ここから汲んだ湯で身体を流す仕掛けがあったそうだが、新浴場にもそれに似た設備が受け継がれている。これも、アゼロ、柴垣の2つの湯枡が作られる徹底ぶり。
 もっとも、入浴者は皆、混合水栓とシャワー、仕切りのついた今ふうの新しい洗い場を使っていて、伝統的な洗い場で身体を洗っている人はみかけなかった。

 畳敷きの広い休憩室があり、湯上りにゆっくり休める。

お気に入り指数:★★★★☆

施設DATA
温泉名 入来温泉
施設名 入来温泉湯之山館
施設の種別 日帰り入浴施設
所在地 〒895-1401 鹿児島県薩摩川内市入来町副田6179番地(→地図)
電話番号 0996-44-2301
公式・参考サイト 市営公衆浴場について(薩摩川内市)
営業時間 06:00〜22:00(最終受付 21:40、毎月第1・第3月曜日及び1月1日定休)
料金 大人:270円、小人:80円
無料の備品 鍵つきロッカー・ドライヤー
浴場施設 内湯、ミストサウナ、水風呂
駐車 可能
入浴日 2015年09月21日
備考 <0413>

温泉DATA (アゼロ浴槽)
源泉名 入来5号, 入来6号の混合(湧出地:薩摩川内市入来町副田3681-2, 薩摩川内市入来町副田6732-3)
泉質 ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉[低張性-中性-高温泉]
泉温 57.2℃(気温:16℃)
湧出量 ***L/min
知覚的試験 淡黄色透明、塩味、無臭
pH値 6.3
ラドン 3.3×10-10キュリー
密度 1.0004g/cm3(20℃/4℃)
蒸発残留物 2.733g/Kg(180℃)
溶存物質総計(ガス性のものを除く) 3.015g/Kg
分析年月日 2007年3月27日
情報源 脱衣場の掲示
1Kg中の成分

  
陽イオン mg
リチウムイオン 3.1
ナトリウムイオン 737.7
カリウムイオン 51.4
アンモニウムイオン 0.1
マグネシウムイオン 9.7
カルシウムイオン 143.5
ストロンチウムイオン 2.8
バリウムイオン 0.1
マンガンイオン 0.9
鉄(II)イオン 1.7
陽イオン合計 951.0
陰イオン mg
ふっ化物イオン 0.8
塩化物イオン 999.6
硫酸イオン 319.9
りん酸二水素イオン 0.3
炭酸水素イオン 536.8
陰イオン合計 1857

非解離成分 mg
メタけい酸 162.9
メタほう酸 43.3
メタ亜ひ酸 0.6
非解離成分合計 ***
溶存ガス成分 mg
遊離二酸化炭素 356.3
溶存ガス成分合計 ***

 

温泉DATA (柴垣浴槽)
源泉名 入来2号(湧出地:薩摩川内市入来町副田6210)
泉質 ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉[低張性-中性-温泉]
泉温 34.8℃(気温:30℃)
湧出量 ***L/min
知覚的試験 黄色濁、塩味金気味、無臭
pH値 6.1
ラドン 0.7×10-10キュリー
密度 0.99994g/cm3(20℃/4℃)
蒸発残留物 1.501g/Kg(180℃)
溶存物質総計(ガス性のものを除く) 1.760g/Kg
分析年月日 2009年9月29日
情報源 脱衣場の掲示
1Kg中の成分

  
陽イオン mg
リチウムイオン 1.8
ナトリウムイオン 447.3
カリウムイオン 24.0
マグネシウムイオン 4.9
カルシウムイオン 76.5
ストロンチウムイオン 1.5
アルミニウムイオン 10.5
マンガンイオン 0.4
鉄(II)イオン 10.8
陽イオン合計 577.7
陰イオン mg
ふっ化物イオン 0.8
塩化物イオン 500.3
臭化物イオン 0.4
硫酸イオン 130.1
りん酸水素イオン 0.4
炭酸水素イオン 402.9
陰イオン合計 1035

非解離成分 mg
メタけい酸 121.6
メタほう酸 24.3
メタ亜ひ酸 1.9
非解離成分合計 ***
溶存ガス成分 mg
遊離二酸化炭素 184.2
溶存ガス成分合計 ***

 



亀乃湯


亀乃湯付近の"温泉街"の光景

 入来温泉には、入来温泉湯之山館のほかに、民営の公衆浴場亀乃湯(→地図)がある。
 今回は入浴しなかったが、古い建物が軒並み撤去され、その基礎だけが残った空き地の一角で、いまも細々と営業していた。

 薩摩川内市の資料(温泉場地区土地区画整理事業について)では、亀の湯の建物を斜めにそぐように道路が造られる計画で、そう遠くない時期に、この浴場も姿を消すのであろう。

 ここ数年で何度か鹿児島の温泉地を訪問したが、各所で、この入来温泉のような再開発が行われている印象を受けた。

 一昨年(2013年)に行った湯之元温泉では、駅前で重機がうなりをあげていたし、栗野岳温泉最寄のJR栗野駅は、駅舎こそ旧来のものを改装しただけだが、駅前通りの光景は、100年以上の歴史をもつ駅にまったく似つかわしくないものであった。

 私の住む大阪で"再開発"といえば、郊外や海外に去った工場の跡地を商業施設や集合住宅にする事業---という印象が強いが、ここ鹿児島では、住む人の少なくなった地区をまるごとリセットして、若い世代を引きとめようとしているかのように見える。

 その土地の、過去の記憶を一切消去する再開発は、私のようなB級大好き旅行者には悪夢以外の何者でもない。けれども、そこに住む人々が欲しているのであればやむをえないとも思う。

 もっとも、それが、地域の夢ある未来への再起動なのか、あるいは、土建業者の延命策にしか過ぎないのかは定かではないが。


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制作:2016年05月15日 修正:2016年05月17日