藺牟田温泉　下ノ湯

　藺牟田（いむた)温泉は、鹿児島県薩摩川内市(2004年の合併以前は薩摩郡祁答院町(けどういんちょう))にある温泉。
　別名砂石(さざらし)温泉ともいい、江戸時代には、領主の保護を受け、湯守も置かれたのだという。
　明治の初め頃には、上ノ湯・下ノ湯の村営浴場2か所しかなかったが、1905年からは、民間の浴場も営業を始め、一時はたいへん繁盛したらしい。
　けれども、現在は民営の浴場数か所と小さな旅館などがあるだけの静かな温泉地となっている。

　薩摩川内市から鹿児島空港に向かう県道42号線(空港道路)の沿道に、ちょっと色あせた歓迎アーチがあった。わくわくしながらクルマを走らせるが、温泉街らしきものを見当たらない。『???』と思っているうちに、目的地である下ノ湯に着いてしまった。

　後川内川に架かる、その名も下之湯橋のたもとにある木造の建物は、湯気抜きのついた伝統的な造り。周囲ののどかな風景にすっかり溶け込んだ、好ましい外観である。

　玄関脇には、飲み物の自販機とテーブルが置かれ、湯上りの休憩ができるようになっている。ちょっとした受付があって、ここで入浴料を支払い、男女別の更衣室に入る仕組み。

　タイル張りの浴室は、シャワーも完備された清潔かつ快適な造り。長方形の浴槽には、ライオンの形をした湯口から、無色透明のクセのないお湯が注がれている。もちろん、かけ流しであることは言うまでもない。

　前述のごとく、もとは公営の浴場であったが、2007年からは民間の経営になっている。この際、建物に手を加えたらしいが、都会のスーパー銭湯のような、ギラギラした商売っ気は皆無。

　極上の湯につかって、ゆったりした時間の流れを楽しめた。

お気に入り指数:★★★★☆