別府・鉄輪温泉　粋房 おぐら

　別府・鉄輪温泉の高台にある旅館。

　シンプルな切妻屋根の建物で、内部は高い吹き抜けになっている。
　通されたのは別府市街を一望できる2階の部屋。旅装を解いて、さっそくお湯を賞味することにした。

　いわゆる大浴場は存在せず、風情ある露天風呂、石や木の浴槽がある内湯、特産の柑橘類を浮かべたお風呂など、多彩な貸切家族湯形式の浴場だけが7つある。部屋数7、そのうち2部屋は専用風呂つきだから、入るお風呂がなかった---ということはないだろう。

　これらのうち、最大のウリは『照湯』と称する露天風呂である。
　自家源泉から湧き出る蒼い湯が幻想的だ。味や匂いのほとんどない、なめらかな肌触りであった。暗くなるとお湯の色が分からなくなるから、是非、明るいうちに入浴されるのがよいだろう。
　柑橘類の実が浮く『新湯』は、この規模の旅館の主浴場と言っていいほどの広さがある。ざんざん溢れるかけ流しをたっぷり楽しめた。

　食事は朝夕ともに部屋食である。
　同じ敷地内にイタリアンレストランがあり、和伊折衷の創作懐石が供される。特に注文したわけではないのだが、普通に関アジのお造りが出たのは嬉しい誤算であった。引き締まった身は、さすがに旨い。

　腹がくちくなったところで、再びお湯へ。
　『へびん湯』と名づけられた、ジャグジーのある露天岩風呂に入ってみる。私は温泉に泡風呂は邪道だと思っていたが、ほろ酔い気分で入浴すると、案外いい気分になれるモノだと感じた。

　ロビーには小さなカウンターバーがあって、湯上りにアルコールをふくむ飲み物を楽しめる。

　いい湯につかって、プライベートな一夜を過ごせる小粋な宿だ。

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