由布院温泉　荒木共同温泉

　今や九州ナンバーワンの人気を誇る由布院温泉。
　従来の温泉のイメージとは相容れない、若い女性や家族連れが闊歩する湯の坪街道には、バブル期の清里のような雰囲気が漂い始めていると感じるのは私だけであろうか。

　けれども、その由布院市街地をちょっと外れると、今でも素朴な共同浴場が数多く残っている。

　JR由布院駅西方にある荒木共同温泉もそのひとつ。駅から、久大本線沿いの道を日田方に走ると、線路の向こうに湯気抜きのついた建物が見つかった。

　"賽銭箱"に100円硬貨を投入して、さっそく入浴。

　軽合金の扉を開けると、いきなり浴室。片隅に、脱衣棚が置かれている。
　コンクリート打ちっぱなしの床に、これまたコンクリート製の無骨な方形の浴槽がひとつ。透明な湯がかけ流しになっていた。

　かかり湯をしてその湯に身を委ねる。無味無臭、さらっとした感触の湯がざばーっと溢れるかけ流しだけの贅沢。湯の坪街道の喧騒が別世界のように思える、おだやかな時間を過ごせた。

　すばらしい温泉を一般開放している地域の方々に感謝。

　湯小屋の横には、源泉らしき貯湯槽があって、お湯がざんざん溢れている。その向こうには、大きなコンクリート製の水槽がいくつか。上にネットが張られているから、温泉を利用して、魚の養殖でもしているのだろうか。

　昭和50年代、大分県では、温泉を利用した鰻やすっぽんの養殖がブームになったのだという。由布院に鰻やすっぽん料理をウリにする店が多いのは、その名残らしい(→参考)。

お気に入り指数:★★★★☆