長湯温泉　大丸旅館

　温泉旅館は、単なる宿泊施設ではなく、ひと晩ゆっくり温泉を楽しむ場所である。

　至極当然のことだが、私がそのことに気づいたのは、温泉巡りを始めて数年してからであった。
　早めに旅装を解いてゆっくりお湯につかっても、夕食時刻ぎりぎりに到着しても、宿泊料は同じである。ならば、温泉旅行の計画は極力欲張らず、なるべく早い時刻に宿に着いて、自慢のお湯をたっぷり愉しんだほうがよい。

　大丸旅館は、長湯温泉の老舗旅館。芹川沿いにある建物は、高級料亭のような佇まいである。上記の原則に従い、15時すぎに到着。

　館内には、"テイの湯"と"ミドリの湯"の2つの浴場がある。前者がいわゆる大浴場、後者が家族湯だ。

　"テイの湯"は、床も含めて全面板張りの浴室。大きな窓があり、芹川を望める。小さな露天岩風呂も付属。
　自家源泉からのお湯は、わずかに灰緑色に濁ったもので、口に含むと強い苦味と金気を感じる。法律上の炭酸泉(単純二酸化炭素泉)には該当しないが、遊離二酸化炭素が735mg/Kgも含まれており、しばらくつかっていると、手足がぽかぽかしてくるのがわかった。

　"ミドリの湯"には2つの浴室があるが、茶室を模したという家族湯1が秀逸である。シンプルかつ狭い半露天風呂なのだが、外気に触れながらの爽快な入浴を愉しめる。

　食事は、朝夕ともに食事処。一見素朴だが、実は結構手の込んだ料理がタイミングよく運ばれてくる。朝食の温泉粥が旨かった。

　いい湯を落ち着いて楽しめる湯宿。
　なお、宿泊者は、この旅館が経営する日帰り入浴施設ラムネ温泉館に無料で入浴可である。

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