霧島温泉　ふたり静

　霧島温泉郷にある、高級温泉宿。
　テレビ番組でしばしば取り上げられているから、名前だけは聞いたことがあるという方も少なくなかろう。

　国道223号線から少し入った住宅地の中に、小振りな看板がある。道に迷いかけたが、規制が厳しく、目立つ看板は立てられないとの由。

　駐車場から、竹林を抜ける小径を登ったところに、赤壁の建物がある。ここがフロント兼食堂。ちょうどその裏庭にあたるところに、定員2名の離れが5棟散在している。
　これがこの宿の客室のすべて。従って、宿の宿泊定員はたったの10名ということになる。部屋の設備は建物によって若干違うが、リビングとベッドルーム、内湯と露天風呂があるのは共通だという。このほか、共用の貸し切りの露天家族湯がひとつあるが、入る人はあまり多くないようであった。

　私が泊まった客室(風の音)にある露天風呂は、2畳くらいの広さ。貴重な温泉を無駄にせず、かつ、開放感のある湯浴みを楽しめる適度な大きさである。内湯はタイル貼りの比較的小さなもので、やや狭い。両者とも、お湯はほのかな硫黄臭を伴う透明なもので、さらっとした感触が心地良い。
　完全なプライベート空間だから、風呂からベッドルームへの移動は素っ裸でもOK。温泉入浴と仰臥を心置きなく繰り返せる。これは、いい。

　夕食は、艶やかな洋風創作懐石。完全個室のテーブル席で賞味することになる。他の客の姿をまったく見ることなく、静かな時間を過ごすことができる。
　翌朝の食事は、昨夜とは一転した田舎ふうのもの。かごの中に盛られたおかずはどれも手抜きがなく、ご飯を何杯でもおかわりできた。

　朝食のあと、最後にもう一回、名残りの湯浴みをしてチェックアウトした。

　いい湯といい料理を完全プライベートでたのしめる宿。無論、その料金は相応のものではあるけれど。

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