黒川温泉　山河旅館

　黒川温泉の温泉宿。
　温泉街の中心から、1Km以上離れたところにある。温泉街の散策には不向きだが、そのかわり、落ち着いた雰囲気で湯を楽しめる。日本秘湯を守る会会員施設。

　雑木林の中に、茶色の土壁を模した黒川規格(?)の母屋があって、その周囲に、離れや貸切風呂、露天風呂などが点在している。天気が悪いと難儀だが、その不便も風情のうち---ということだろう。

　全部で6か所のお風呂のうち、メインとなるのは、"もやいの湯"。
　混浴ではあるが、別に女性用露天風呂があるので、実質的には男性専用だ。かなり大きな露天風呂で、初冬の里山の風景を眺めながら、開放的な湯浴みができた。宿の宿泊客よりも、入湯手形持参の湯めぐり客がひっきりなしにやってくるから、彼らがいない朝風呂のほうがゆったりできるようである。

　3つの貸切家族湯(宿泊者専用)もある。
　このうち、"六尺桶風呂"は半露天式のお風呂。湯船からの眺めがすばらしいから、明るいうちの入浴がお勧め。
　"桧風呂"と"切り石風呂"は名前のとおりのしつらえで、湯船に身体を沈めると、ざばーっとお湯が溢れるかけ流しを堪能できる。

　内湯は、古い土蔵をイメージした造り。洗い場には、ボディーソープではなく、液体石鹸が置かれていたが、下水道のない黒川で、環境に最大限配慮した結果とのこと。

　宿には2本の源泉があるが、混浴露天と"六尺桶風呂"で使われているお湯(ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩温泉(硫化水素型))が気に入った。わずかに白濁したなめらかなお湯で、かすかに硫黄の匂いがする。
　もうひとつの源泉は、鉄分がやや多い湯で、やや硬い感じの肌触り。口に含むとかすかな金気を感じた。
　源泉ごとの微妙な違いを肌で感じるのも湯めぐりの楽しみのひとつだが、宿、あるいは温泉街全体として、そういうアピールはしていないようである。

　部屋は質素ではあるがセンス溢れる"黒川流"。金庫やテレビがさりげなく隠れるようになっているのもよい。

　夕は部屋食。肥後牛のステーキ、地鶏鍋など、肉を使ったメニューが多い。仲居さんがこまめに配膳してくれるので、熱い料理は熱いままいただける。名物馬刺しも登場したが、申し訳け程度の量であったのが幸いであった。なお、朝食は広間での提供である。

　日々の喧騒を忘れて、ゆったりした時間を過ごすには最適の宿。おすすめである。

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