下風呂温泉 長谷旅館


井上靖が滞在した客室


夕食の一品

 下風呂温泉は、北海道渡島半島を望む本州最北の温泉地である。

 地名は、アイヌ語のシュマ(岩)・フラ(匂い)に由来し、こぢんまりとした温泉街には、イオウ(硫化水素)と潮の匂いが漂っている。

 20軒弱の旅館があるが、今回は長谷旅館に宿をとった。1958年、井上靖が小説『海峡』を執筆するために滞在した老舗である。
 通されたのは、2階いちばん奥の部屋。かの大作家とその家族が使ったという、言わばこの宿の看板客室だ。すぐ下を国道のバイパスが通り、クルマの音が少し耳障りだが、防波堤の先には津軽海峡と北海道・渡島半島が見える。

 風呂は内湯一つのみ。タイル張りの浴槽に満たされるのは、強い硫化水素臭を伴った大湯2号源泉。灰緑色に濁った硫黄泉で、口に含むと強い酸味を感じる。特に温度調節はしていないようで、適温になるまで加水して入るようにとの注意書きがあった。無論、かけ流しである。
 大阪から1300Km。"高速1,000円"の恩恵を最大限享受すべくここまで一人でクルマを走らせてきたが、熱い湯の中で手足を伸ばしていると、不意に最果ての旅情がこみ上げてきた。

 食事は決して手の込んだものではないが、その代わり、地元の海の幸がこれでもかと言う位に供される。ホタテなどの造りや殻いっぱいに盛り付けられた生ウニが殊に旨い。朝食には名物のイカ刺しもつく。

 ピカピカの施設をお望みの方には向かないが、ホンモノの湯と旨い海の幸を堪能したい人には格好の宿。なお、海が見える客室は数室しかないようなので、希望する場合は早めの予約が賢明だろう。

お気に入り指数:★★★★☆

施設DATA
温泉名 下風呂温泉
施設名 長谷旅館
施設の種別 旅館
所在地 〒039-4501 青森県下北郡風間浦村大字下風呂字下風呂75(→地図)
電話番号 0175-36-2221
公式・参考サイト 長谷旅館
ぐるりんしもきた(下北観光協議会)
下北ナビ
営業時間 (宿泊で利用)
料金 (宿泊で利用)
無料の備品 ボディーソープ・シャンプー・ドライヤー・バスタオル・タオル・館内着
浴場施設 内湯
駐車 可能
入浴日 2010年9月20日
備考 <0344>

温泉DATA
源泉名 下風呂温泉(大湯2号)
青森県下北郡風間浦村大字下風呂字下風呂22番地
泉質 含石膏-食塩硫化水素泉[緊張低張性高温泉]
※新泉質名では、含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉(硫化水素型)
泉温 60.5℃(気温:17℃)
湧出量 ---L/min
知覚的試験 無色透明硫化水素臭塩味
pH値 3.0
ラドン ---
比重 1.0014g/cm3(20℃/4℃)
固形物総量 3.867g/Kg
溶存物質総計(ガス性のものを除く) 4021.6g/Kg
分析年月日 1974年9月25日
情報源 脱衣場の掲示
1Kg中の成分

  
陽イオン mg
水素イオン 3.229
ナトリウムイオン 909.7
カリウムイオン 92.00
アンモニウムイオン 2.323
マグネシウムイオン 63.27
カルシウムイオン 204.3
アルミニウムイオン 4.406
マンガンイオン 10.01
鉄(II)イオン 6.309
鉄(III)イオン ---
陽イオン合計 1296
陰イオン mg
塩素イオン 1722
チオ硫酸イオン 0.022
硫酸イオン 634.0
ヒドロリン酸イオン 0.251
ヒドロヒ酸イオン 0.011
陰イオン合計 2356

非解離成分 mg
メタケイ酸 131.9
メタホウ酸 237.7
非解離成分合計 369.6
溶存ガス成分 mg
遊離二酸化炭素 215.2
遊離硫化水素 33.91
溶存ガス成分合計 249.11

 


 旅のメモ
 下風呂温泉のウリのひとつが、夏から秋にかけての漁火。

 闇の中にほのかな明かりがチラチラ見える----という情緒的な光景を想像していたのだが、現代の漁火はいかにも人工的な強烈な灯火で、上空の雲までもが照らし出されている(写真は私が泊った部屋から撮影したもの)。

  メタルハライド灯という一種の水銀灯で、 1隻あたり最大180KWという途方もない明るさ(出力)だそうだ。(漁火を考える…イカ釣り集魚灯の改善を)


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制作:2010年10月24日 修正:2010年10月24日