温泉津温泉　薬師湯

　温泉津(ゆのつ)は、島根県大田市にある温泉。

　かつて、石見銀山の製品移出で活気を呈した港から続く道の両側に、小さい旅館や民家が軒を連ねている。

　石見銀山が世界遺産に指定されたのをきっかけとして(2007年)、いくつかの旅館は、観光客向けにちょっとお洒落に改装している。
　しかし、全体としては、数十年前から時間が止まったような町並みで、2004年には温泉街としてはじめて、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。

　2つの外湯があるが、このうち1872年の浜田地震で新たに噴出したという『薬師湯』に入ってみることにした。

　戦前に建てられた建物は、鉄筋コンクリートの瀟洒なもの。玄関は男女別で、古い映画館の窓口みたいなところで入浴料を払う。

　浴場の床は、全面に茶色い析出物が付着していて、その真ん中に小判型のこぶりな浴槽がひとつある。ナマズを模した湯口から、強い塩味と苦味、金気を感じる熱い湯がかけ流しになっていた。

　世界遺産指定の結果であろうが、来場者の大半は遠来の観光客のようで、カラスの行水のような入浴をして去っていく。残念ながら、地元の老人がゆっくり湯につかっている...という光景は見かけなかった。
　もうひとつの外湯である元湯泉薬湯とあわせて、平日に再訪せねばなるまい。

　かなり濃い食塩泉だけあって、風呂から上がっても、なかなか汗が引かない。
　レトロな建物の屋上が開放されているので、温泉街を眺めながら涼むのも一興。

お気に入り指数:★★★★☆