鹿教湯温泉　河鹿荘

　"源泉かけ流し"をキーワードに、ネットで予約した旅館。

　温泉街の入口に、古ぼけたアーチがあった。その先に見えるのは、建て増しを重ねた何の風情もない鉄筋コンクリートの建物。外見上は場末の旅館そのもので、気分もぐっと盛り下がる。けれども、チェックイン後は、期待通りの湯につかり、温泉三昧の時間を過ごせた。

　河鹿荘にある浴場は4つ。展望風呂と露天風呂、それに男女別の内湯だ。

　メインとなるのが、展望風呂。
　タイル貼りの四角い浴槽が2つあり、左側の湯船には、きゅうす形の湯口から源泉が豊富にかけ流されている。右側のやや広い湯船とは細いパイプでつながっていて、左側があつめ、右がぬるめに調整されている。
　お湯は、地区の給湯管から配湯される単純温泉。ほのかに硫黄(硫化水素)の匂いを帯びたなめらかなもの。当然のことながら、左側の浴槽のほうが鮮度が高い。

　別のフロアにある男女別の内湯も捨て難い。
　数人入ればいっぱいになる小さな石張り浴槽だが、身を沈めればざざーっと溢れるかけ流しだけの贅沢を愉しめる。

　内村川を望む"渓流露天風呂"は宿最大の目玉商品だが、川には茶色の濁流が渦巻き、浴槽には木の葉が沈んでいた。お湯の温度もややぬるすぎて、あまり高い評価はつけられない。
　もっとも、これは前夜に当地に接近した台風4号の荒天によるものであって、普段なら清流のせせらぎを聞きながら、爽快な湯浴みを楽しめるだろう。

　朝夕とも、食事は別の客室でいただく方式。
　手の込んだ料理ではないけれど、さりげなく地元の食材を使った膳は、質・量ともに満足できるものであった。

　また来たいと思う。

お気に入り指数:★★★★☆