湯川温泉　きよもん湯

　(南紀)勝浦温泉と言えば、巨大な温泉旅館が思い浮かぶが、同じ町内にある湯川温泉は、これとはまったく性格の異なる静かな温泉地だ。汽水湖であるゆかし潟(周囲:2.2Km)のほとりに、小さな温泉旅館や立ち寄り湯が散在している。

　きよもん湯は、国道42号線沿いにある民営日帰り入浴施設。上品な鉄骨瓦葺きの建物が目印である。
　浴室はそう広いものではないが、タイル貼りの清潔な湯船からは、ほのかな硫化水素臭を帯びた無色透明のお湯が音もなく大量に溢れている。浴槽の底に見えるのは、排水口がひとつだけ。一点の曇りもない、純粋なかけ流し式で、思わず笑みがこぼれてしまう。
　源泉温度が高くないので、冬期を中心に若干加熱しているようだが、比較的ぬるめの湯で、関西人の私でもゆっくり浸かれるのがよい。

　私が訪問したのは、木曜日の夕刻。しばらくの間、この極上温泉を独り占めしたが、午後5時を過ぎたとたんに、急にこみ始めた。どうやら、近所の人たちが公衆浴場として利用しているようなのだ。毎日、こんなお風呂に入れるとは、何たる贅沢かと思う。

　ホールは、ご覧のとおり、全面ガラス張りの開放的なもの。庭園を眺めながら、湯上がりのひとときを過ごすことができる。
　建物内に飲食設備はないが、国道の向かいには"軽食喫茶きよもん"があり、ゆかし潟を望みながら食事をとれるようだ(営業は16時まで)。

　清潔感のある施設と極上の温泉。オススメである。