霊泉寺温泉　共同浴場

　長野県丸子町にある鹿教湯(かけゆ)は、保養向きの静かな温泉地として知られているが、同じ町内にもっと鄙びた温泉があると聞いて訪ねてみることにした。

　国道254号線から脇道に入って2Kmほど行くと、小さな集落がある。道路右手に鬱蒼とした杜が見えるが、これが鎌倉時代に創建されたという霊泉寺(れいせんじ)である。
　霊泉寺温泉は、霊泉寺の寺湯として始まった。その後、湯治場として栄えたというが、現在は8軒の温泉旅館がひっそりと営業しているのみ。どの宿も、昭和レトロという言葉がぴったりの枯れ切った温泉街だ。

　その中心にある共同浴場は、築30〜40年と見受けられる鉄筋コンクリート造。これまた相当に枯れた建物ではあるが、そこには、今でもこんこんと良質の温泉が湧いている。

　青い豆タイル貼りの浴槽に注がれるのは、43.8℃のアルカリ性単純温泉。無色透明、ほとんど無臭の静謐な湯だが、カルシウムイオンと硫酸イオンが多く含まれ、もう少しで"石膏泉"を名乗れるレベルである。口に含むと、わずかに苦味を感じた。もちろん、循環ろ過装置などあるはずもなく、浴槽から溢れた湯は惜しげもなく捨てられるかけ流しである。

　浴室はゆったりした造りだが、脱衣場は少し窮屈で、湿っぽい。
　休憩室などはないので、湯上がりには玄関軒下に置かれたベンチで、涼やかな高原の風に吹かれるのがいいだろう。向かいの旅館に清涼飲料水の自販機がある。

お気に入り指数:★★★★☆