松本では、昔から『東の扉、西の白骨』とも言われる名湯だという。
けれども、その知名度は白骨とは比較にならないくらいに低い。恥ずかしながら、私も今回の信州旅行を計画して、はじめてその存在を知った。
松本から美ヶ原に向かう県道沿いにある温泉。松本市中心部からは、30分程度の所要時間だ。
深い緑のなかに、2軒の温泉旅館と公衆浴場が点在している。旅館はともに外来入浴を受け付けていないようなので、公営の日帰り入浴施設で一浴あびてみることにした。
木造平屋の湯屋は最近改築されたものらしく、浴場も、ご覧のとおり清潔かつ機能的な造りである。
しかし、その湯船に注がれるのは、ぷうんと硫黄臭が漂ういかにも温泉らしい湯。大量のオーバーフローがそのまま排水口に吸い込まれている。何の疑いもないかけ流しだ。
質素な施設だが、いわゆる共同浴場ではないから、露天風呂もある。
野趣溢れる岩風呂で、男女間の目隠し塀がある以外に、囲いはない。あまりにも開放的な造りだが、周囲は山また山であるから、他人に覗かれることなぞまったく考慮する必要がないのである。浴槽のまわりにはハエタタキが置かれているが、これは時折やってくるアブ退治用。まるで野湯のようなワイルドさである。無論、こちらも源泉ドバドバ系のかけ流しであることは言うまでもない。
畳敷きの休憩室があるが、利用には若干の追加料金が必要である。
湯屋の中には飲食施設はないが、すぐ隣に小さな食堂があって、麺類や丼物などのメニューが揃っている。
松本市内から近い割には、訪れる人は少ないようである。手軽に秘湯を訪ねたい(?)方にはオススメの温泉だろう。
お気に入り指数:★★★★☆
