平湯温泉　安房館

　北アルプス周辺の温泉巡りをするにあたって泊った旅館。

　3連休直前の金曜日、インターネットで宿泊を申し込んだら、あっさり予約が成立した。あたりまえだが、人気が高いいい宿は、早々に予約が埋まる。売れ残る宿泊施設は、それなりの訳があるものだが、この安房館に関して言えば、私の予想を覆す好ましい宿であった。

　夕食は、地元特産の飛騨牛を使った料理で、朴葉味噌焼き、しゃぶしゃぶ、刺身、寿司などのご馳走が並ぶ。部屋食ではなく、食事処でいただく方式なので、暖かい料理がタイミング良く配膳されるものよい。
　山間の温泉宿では、その土地で穫れた川魚や獣肉を使った料理が登場することが多いが、じつを言えば、私はこれらの食材が苦手である。けれども、牛肉ならば大歓迎だ。私と同じ思いの人は少なからずいるようで、食事処は若い人たちでいっぱいであった。もちろん、伝統的旅館料理(?)のコースもあり、こちらは中高年の グループに人気が高いようであった。

　さて、肝心の温泉だが、地階にある浴室は、洗い場も含めて総木張りである。ここには若干の硫黄臭がある透明な湯が満たされている。ざばざば溢れる豪快なオーバーフローが心地よい。
　露天風呂はややこぶりなもの。内湯と同系統の湯と思われるが、こちらはわずかに灰色の濁りがある。"含食塩-重曹泉"という以外に成分の詳細は不明だが、口に含むと強い金気とうすい塩味を感じた。浴槽や湯口には茶色の析出物が付着しており、かなりの鉄分が含まれていると思う。

　温泉宿の醍醐味は、いつでも湯につかれることだ。
　殊に就寝前の一浴は、もっとも心安らぐひとときである。夕食前や朝風呂の時間帯と違って、浴室にはたいてい誰もいない。広い湯船を独占して、至福の時間をすごした。

お気に入り指数:★★★★☆