平湯温泉 ひらゆの森






 関西に住んでいる私は、東京の温泉ファンを羨ましく思う時がある。なぜなら、関東近郊には、活動中の火山がたくさんあるからである。

 温泉は地熱で温められた地下水だ。従って、活動性の高い火山の周辺には、高温で成分に富んだ個性的な温泉が数多く湧き出ることになる。
 伊豆や箱根、草津や那須の温泉は、いずれも火山性のものだが、東京からは完全な日帰り圏内だろう。ところが、関西には活動中の火山がない。ざっと地図を見たところでは、もっとも近いところにあるのが御岳や乗鞍岳ということになるが、片道300Kmを超える道のりでは、思い立ってもすぐに行けるものではない。

 こんこんと湧き出るアルカリ性単純温泉の魅力も捨てがたいが、たまには荒々しい火山性の温泉にも浸かりたいと思い、1泊2日の日程で雪深い北アルプスの麓を訪れた。

 奥飛騨温泉郷は、乗鞍岳と焼岳に付随する岐阜県側の5つの温泉地の総称である。今年(2005年)2月の市町村合併に伴って、高山市に属することになった。このうち、平湯はもっとも古くから知られた温泉であり、東京や大阪行きの高速バスが発着するバスターミナルもある。

 ひらゆの森は、集落の南のはずれに位置する日帰り入浴施設である。部屋数は少ないが、宿泊も可能だ。経営主体は株式会社となっているが、どうも第三セクターっぽい感じがする。

 築300年の民家の古材を利用したというエントランス部は、高い天井が印象的である。敷地内に点在する浴場や休憩室、レストランは、長い渡り廊下でつながっている。この通路を含めて、館内はすべて畳敷きで、大変落ち着いた雰囲気である。

 湯屋の扉を開けると、そこには心ときめく硫黄臭が充満していた。木張りの浴槽からは白い濁り湯が溢れており、うす暗い照明と相まって、まるで東北の古い湯治場にいるようだ。けれども、施設自体は真新しいものだから、たとえば洗い場はシャワー完備の快適な仕様となっている。

 湯屋の外に出ると、原生林の中にいくつもの岩風呂が点在している。内湯と同じ白濁したお湯が張られた浴槽のほかに、強い金気を感じる透明な湯を満たした風呂もある。どうやら、ひらゆの森では、少なくとも2つの源泉から湯を引いているようなのだ。多彩な源泉をもつ火山性の温泉地ならではの贅沢である。

 3月も下旬とは言え、標高1,300mの平湯に春の匂いは微塵も感じられなかった。厳冬の雪景色の中での入浴となったが、緑の季節には爽快な湯浴みとなることだろう。

 内湯・露天ともに、無粋な吸い込み口はみられず、完全な掛け流しのようである。

 手入れも行き届いており、自然と一体になった温泉を快適に楽しむことができる。入浴料も割安で、★5つの絶対オススメ施設と言えよう。

お気に入り指数:★★★★★

施設DATA
温泉名 平湯温泉
施設名 ひらゆの森
施設の種別 日帰り入浴施設(宿泊も可)
所在地 〒506-1433 岐阜県高山市奥飛 騨温泉郷平湯763(→地図)
電話番号 0578-9-3338
公式・参考サイト ひらゆの森
奥飛騨温泉郷観光協会
営業時間 10:00〜21:00
料金 大人:500円、子供(3から12 歳):400円
無料の備品 ボディーソープ・シャンプー・貴重品 ロッカー・ドライヤー
浴場施設 内湯、露天風呂、サウナ、水風呂など
駐車 可能
入浴日 2005年3月20日
備考 <0120>










温泉DATA
源泉名 未定(湧出地:岐阜県吉城郡上宝村大字平湯763番地の1)
泉質 含硫黄-ナトリウム・カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩・塩化物泉[低張性-中性-高温泉]
泉温 65.2℃(気温:3.6℃)
湧出量 373L/min(動力揚湯、150m 掘削)
知覚的試験 淡青色透明、強硫黄臭
pH値 6.81
ラドン ---×10-10キュ リー
密度 0.9993g/cm3(20℃)
蒸発残留物 1.032g/Kg
溶存物質総計(ガス性のものを除く) 1.386g/Kg
分析年月日 1998年2月3日
情報源 脱衣場の掲示
1Kg中の成分

  
陽イオン mg
ナトリウムイオン 174.3
カリウムイオン 21.8
マグネシウムイオン 48.0
カルシウムイオン 131.4
鉄(II)イオン 0.1未満
マンガンイオン 1.6
アルミニウムイオン 0.1未満
陽イオン 合計 377.1

陰イオン mg
フッ素イ オン 0.6
塩素イオ ン 160.2
硫化水素イオン 1.1
硫酸イオ ン 136.6
炭酸水素イオン 627.2
陰イオン合計 925.7

非解離成分 mg
メタケイ酸 65.6
メタホウ酸 17.4
非解離成分合計 83.0

溶存ガス成分 mg
遊離二酸化炭素 92.5
遊離硫化水素 2.3
溶存ガス成分合計 94.8

 


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制作:2005年3月22日 修正:2005年3月27日