木部谷温泉 松乃湯


白い水が出始めた...


噴出のピーク

 島根県西部に湧く、我が国には珍しい間歇泉。

 既に夕闇が迫っていたが、温泉が吹き出す様子を見たくて、まずは源泉地に行ってみた。

 金網で囲まれた池に茶色の温泉水が満たされている。更にその奥、地面に10cmほどの穴があいているが、ここが噴出孔のようだ。約30分周期で噴出がみられるというので、しばらく待つことにした。

 周囲はうっそうとした森で、物音ひとつしない。時どき、噴出孔に目をやるが、ちっとも変化がない。することがないので、案内板の説明などを読むことにする。

 それによると、一般的な間歇泉は、高温蒸気の圧力で噴出するものが多いが、木部谷のそれは、炭酸ガスの圧力で吹き出すのだという。
 もともと、当地にはブクブクと温泉水が湧き出る泉があったそうだが、1970年にボーリングを行ったところ、現在のような間歇泉になった。地元有志の人たちによる小規模な入浴施設が作られたが、衛生上の問題などがあり、1988年に現在の松乃湯が完成したのだそうだ。

 しかし、それにしても寒い。風こそないが、昨夜降った雪の上に立つ足先は氷のように冷たく、凍傷になってしまいそうだ。
 もう、諦めて湯につかろう....と思い始めた頃、噴出孔に変化が現れた。

 炭酸飲料の栓を抜いたときのような、白い泡がちょろちょろ出始めたかと思うと、みるみる高さが増して、1mくらいの"噴水"になった。ぼごぼごとガスの吹き出る音が聞こえ、かすかな硫化水素臭が漂う。写真をご覧になれば分かると思うが、細かい気泡が含まれているので、公園などにある人工の噴水とは、飛沫のかたちがずいぶん違う。
 5分くらい噴出が続いたあと、"ぼごっぼごっ"と大きな気泡が出るようになると、だんだん勢いがなくなってくる。地下に溜まった炭酸ガスが尽きたのだろうか。やがて、まるで潮が引くかのように、温泉水の噴出は止んでしまった。

 珍しい間歇泉のショーを見物できたので、大満足で風呂につかることにする。

 浴室はタイル張りで、既に析出物が厚く沈着している。よく見ると茶色の温泉水の水面には、白く薄い膜が浮いているが、これはカルシウムが析出したもので、もちろん入浴客の垢ではない。
 冷たい温泉水のバルブと加熱用の蒸気バルブは入浴客が自由に調節できるようになっていて、適温のかけ流しで入浴できる。長時間の見物で冷えきった身体が、その芯からじわじわあたたまってくるのがわかった。

 中国道六日市ICから約15分と、交通の便も比較的いい。時間に余裕をもって訪問し、間歇泉の吹き出る様子もあわせてご覧になることをお勧めする。

お気に入り指数:★★★★★(但し、間歇泉の見物も含んだ評価)

施設DATA
温泉名 木部谷温泉(きべたにおんせん)
施設名 松乃湯
施設の種別 日帰り入浴施設兼旅館
所在地 〒699-5307 島根県鹿足郡柿木村大字木部谷(→地図)
電話番号 0856-79-2617
参考サイト 柿木村オフィシャルWEBサイト
営業時間 毎月6日・16日・26日定休
料金 外来入浴:1回350円、半日600円、1日1,000円
宿泊:1泊2食6,000円から
無料の備品 石鹸
浴場施設 内湯
駐車 可能
入浴日 2004年12月31日
備考 <0098>

温泉DATA
源泉名 木部谷温泉(湧出地:島根県鹿足郡柿木村大字木部谷字松原1476の1
泉質 含二酸化炭素-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉[低張性-中性-冷鉱泉]
泉温 20.7℃(気温:24.5℃)
湧出量 200L/min(自噴、但し間歇泉)
知覚的試験 無色透明・炭酸味・鉄臭・硫化水素臭
pH値 6.5
ラドン 18×10-10キュリー
密度 1.0045(4℃)
蒸発残留物 5.320g/Kg(110℃)
溶存物質総計(ガス性のものを除く) 6.658g/Kg
分析年月日 1988年9月27日
情報源 ロビーの掲示(温泉分析書のコピー)
1Kg中の成分
     

    

陽イオン mg
ナトリウムイオン 1750.00
カリウムイオン 48.40
マグネシウムイオン 21.40
カルシウムイオン 354.00
鉄イオン 28.70
マンガンイオン 2.20
陽イオン合計 2204.70
陰イオン mg
フッ素イオン 3.00
塩素イオン 1740.00
硫酸イオン 2.50
炭酸水素イオン 2310.00
炭酸イオン 0.40
陰イオン合計 4055.90

非解離成分 mg
メタ亜ヒ酸 8.60
メタケイ酸 89.10
メタホウ酸 290.00
非解離成分合計 387.70
溶存ガス成分 mg
遊離二酸化炭素 1220.00
遊離硫化水素 0.10
溶存ガス成分合計 1220.10

 


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制作:2005年1月3日 修正:2005年1月19日