野半の里温泉 蔵乃湯老鶴館


花と緑いっぱいの構内
奥に温泉掘削用の櫓が見える。


蔵乃湯老鶴館


飲泉場


風呂上がりはやっぱ、コレ。
軍艦ビール(550円)

 和歌山県かつらぎ町にある老舗酒造会社経営の酒類直販兼飲食施設。1996年の開業で、昨秋(2003年)、温泉入浴施設を増設した。

 浴場の建物は、和歌山県海南市内にあった老鶴酒造(1997年廃業)の酒蔵の古材を使ったもの。年季の入った太い梁が高い天井を支え、扉や窓枠までもが木製という郷愁を感じさせる造りだ。

 東北の湯治場を思わせる、ちょっと薄暗い湯屋の中には、端正な石張り浴槽が2つある。
 正面の主浴槽には、うぐいす色の湯が満たされている。第1源泉の食塩泉を第2・4源泉の水で6倍に薄めたもの。とは言え、源泉自体が抜群に濃いものだから、ちょっとベタベタした食塩泉の感触は十二分に残っている。
 その横にあるのが、第3源泉を使った副浴槽。こちらは鉄とマンガンを除去する処理を行っており、正直言えば限りなく真水に近い。
 露天風呂は、第2源泉を使ったもの。天然の岩のほかに、敷石(?)を再利用しているのが面白い。重曹成分がかなり多いらしいが、すべすべ感は乏しかった。

 いずれの浴槽も完全な掛け流しではないし、源泉そのままの浴槽があるわけでもない。しかし、4つの源泉水を使って、天然温泉の魅力を最大限に引き出す工夫をしているところは、高く評価できると思う。
 水にこだわる酒屋さんらしく、各浴槽に飲泉可能な湯口がある。つまり、3種類の温泉を舌で味わえるのだ。
 主浴槽の湯は、金気と塩味を感じた。副浴槽のそれは、非常にソフトな感触。露天風呂は、打たせ湯自体が"飲泉場"で、その湯を飲める。口に含むと、舌に炭酸特有のピリピリした刺激を感じた。
 サウナや泡風呂などの余計な施設がないのも好ましいと思う。

 蔵乃湯老鶴館のロビーでは生ビールが呑める程度だが、構内には3つの飲食施設がある。
 『湯上がりに冷えたビールをぐいっ...』というのは、左党の温泉ファンにはたまらない瞬間だが、あいにく、クルマで出かけたので、実は入浴前に自慢の地ビールを1杯だけ賞味した。
 蔵乃湯老鶴館の隣にある紀泡館がビアレストランとなっていて、赤銅色に輝く醸造釜を見ながら、地ビールと洋風の食事を愉しめる。
 ジョッキで供される地ビール("軍艦ビール")は、ナショナルブランドのそれよりずっと濃い褐色をしていて、こころなしかコクがあるように思えた。
 ビールを心置きなく呑みたい向きは、ぜひ電車を利用してお出かけいただきたい。(JR和歌山線笠田駅から徒歩6分)

 都市部に多いスーパー銭湯、あるいは田舎にありがちな公営入浴施設のいずれでもないかなり秀逸な施設。オススメである。

お気に入り指数:★★★★☆

施設DATA
温泉名 野半の里温泉
施設名 蔵乃湯老鶴館
施設の種別 日帰り入浴施設
所在地 和歌山県伊都郡かつらぎ町佐野702(→地図)
電話番号 0736-22-1005
公式サイト 野半の里
営業時間 10:00〜22:00(第3水曜日定休)
料金 大人:650円、子供(3歳以上):450円
無料の備品 ボディーソープ・シャンプー・鍵つきロッカー・ドライヤー
浴場施設 内湯、露天風呂
駐車 可能
入浴日 2004年9月26日
備考 <0080>

2012年8月末、運営会社が事実上倒産したとの情報がある。


温泉DATA
源泉名 野半の里温泉(源泉所在地:和歌山県伊都郡かつらぎ町大字佐野字塚本704番地の1)
泉質 含二酸化炭素・鉄-ナトリウム-塩化物強塩泉[中性-高張性-冷鉱泉]
泉温 23.1℃(気温:24.0℃)
湧出量 125L/min(動力揚湯 15馬力)
知覚的試験 黄色混濁にて、弱鉄錆臭、強塩味を有する
pH値 6.9
ラドン ---×10-10キュリー
密度 1.038g/cm3(20.0℃/4.0℃)
蒸発残留物 49.3g/Kg(180℃)
溶存物質総計(ガス性のものを除く) 47.476g/Kg
分析年月日 2002年5月8日
情報源 脱衣場の掲示
1Kg中の成分
     

    

陽イオン mg
ナトリウムイオン 14200
カリウムイオン 247
マグネシウムイオン 760
カルシウムイオン 365
鉄(II)イオン 66.0
マンガンイオン 0.8
水素イオン <0.1
アンモニウムイオン <0.1
陽イオン合計 15638.8
陰イオン mg
フッ素イオン <0.1
塩素イオン 22700
硫化水素イオン <0.1
硫酸イオン 2.4
炭酸水素イオン 6730
炭酸イオン 4.3
チオ硫酸イオン 0.2
メタケイ酸水素イオン 0.3
メタホウ酸イオン <0.1
水酸イオン <0.1
陰イオン合計 29437.2

非解離成分 mg
メタケイ酸 140
メタホウ酸 2260
非解離成分合計 2400
溶存ガス成分 mg
遊離二酸化炭素 1780
硫化水素 <0.1
溶存ガス成分合計 1780

 源泉井戸は全部で4つで、すべて野半の里構内にある。
 第1源泉は、地下741mまで掘削して得た高張泉。この温泉DATAは、恐らく第1源泉のものだと思う。溶存物質:47.476g/Kgという恐ろしく濃い食塩泉である。
 第2源泉は、地下135mで得たもので、重曹成分と鉄分が多く含まれ、第3源泉(50m)は、鉄とマンガンを除去したのちに使用される。
 第4源泉(350m)は、最近掘削に成功したもの。現在は古い酒桶に注いでお子さま用の"水遊び場"となっていた。私が見たところでは、僅かに白濁・黄色みを帯びた鉱泉で、相当な湧出量があるようである。

 


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制作:2004年09月26日 修正:2013年11月09日