御所・葛城の郷　かもきみの湯

　御所市にある公営日帰り入浴施設。

　最近、過疎に悩む地方で"村おこし型"の公営温泉施設の建設がブームになっている。
　けれども、ここ御所市は大阪から電車で1時間弱。決して過疎ではないこの地に何で公営温泉か!?----と思って調べてみたら、どうやら"し尿処理場"に併設された浴場であるらしい。
　急増する人口に既存施設はパンク寸前。快適な市民生活には絶対必要なものではあるが、さりとて、近所にかような"迷惑施設"が出来ることを喜ぶ人は誰もいない。そこで、『豪華な温泉と抱き合わせの上で何とかお願いを...』という構図が成立するわけだ。
　たかが温泉ではあるけれど、巨費を投じて公営施設が造られるウラには、私のごときノーテンキな入浴者には伺い知れない複雑かつ深刻な事情が常に存在するのである。

　このような経緯と目的で設けられた入浴施設であるから、その中身は誰もが喜ぶ一般的なものにならざるを得ない。要するに民間のスーパー銭湯と同じコンセプトである。
　かかり湯・主浴槽1・主浴槽2・座湯・寝湯・日替風呂・泡風呂・腰掛け湯・水風呂・サウナ(以上屋内)、檜風呂・岩風呂(大)・岩風呂(小)・石風呂・家族風呂・炭風呂・水晶風呂・ハーブ湯・打たせ湯・足湯(座り湯)・足湯(歩き湯)・塩サウナ(以上屋外)と数えきれないくらいのお風呂がある。私が訪れた日は、浴場入口向かって右側が男湯となっていたが、反対側の女湯は、また違った趣だという。
　2003年春に開湯したばかりだから、どの施設もまだぴかぴか。衝立で仕切られた洗い場は、立派な混合水栓がつき、ボディーソープ・シャンプー完備。これで料金は500円、民間ではとても出来ない相談だ。

　肝心のお湯はというと、成分分析表の数字自体は立派なものだが、無数の浴槽を満たすためにたっぷり水と塩素が加えられているようで、感覚的には単なる水道水と変わらぬ状態になっている。源泉は溶存物質:11.49g/Kgという高張泉だから、たとえ10倍希釈にしても、数字の上では温泉法の規定を満たす立派な"温泉水"ではあるのだが...。

　唯一、屋外のちっちゃな岩風呂だけが湧出した源泉をそのまま使っているらしく、ここだけは芋の子を洗うがごとき盛況ぶりであった。かなり白濁した湯で、塩味がする。浴槽は茶色に変色しているが、"雲母片"や"炭酸ガス湧出"は感じられなかった。

　定番のマッサージコーナーのほか、2階には食堂もある。ただし、メニューは簡易居酒屋程度で、本格的な食事を摂ろうとすると少々物足りないかもしれない。

　温泉ファンが"割烹料理"を期待して訪問すると落胆すること間違いないが、"お子様ランチ"的入浴を愉しむ場所と割り切ってしまえば価値ある施設と言えよう。

お気に入り指数:★★☆☆☆