C57 1 細部拝見


 津和野駅構内には、SLやまぐち号専用の転車台がある。小郡から下り列車を牽引してきた蒸機は、ここで給水・点検を受け、向きを変えたあと、上り列車の先頭に立つ。私が行ったときには、"お客様"であるC56 160は既に方転を終えており、ピットの主であるC57 1が整備を受けていた。

 ピットには、一応『立入禁止』の表示はあるものの、誰でも自由に立ち入って機関車を見ることができた。子供や観光客の姿はなく、20人ばかりの熱心なファンが、静かに蒸気機関車を楽しんでいるといった雰囲気だ。キャブへの立ち入りも自由で、運転席に座ってみることもできる。皆がマナーと良識を守れば、これほど楽しい経験ができるのである。

 蒸機運転23年の歴史が育んだほのぼのとする光景であった。(写真はすべて2001年6月10日に津和野駅で撮影)


ビットに憩うC57 1

 煙突の上にあるのは、1979年の保存運転開始に際して設置された集塵装置の一部。
 各地で蒸機の保存運転が行われているが、山口線ほど大掛かりな設備を持つところは他にない。"国有鉄道"がやったことの壮大さには、感心するばかり。もっとも、それが巨額の赤字の遠因となった訳だけれど。


炭水車

 炭水車上での整備作業とそれを見学する人たち。
 SLやまぐち号は、小郡-津和野間(62.9Km)往復で、石炭約2トン、水約25トンを消費する。
 炭水車の水タンク容量は17トンしかないから、津和野での給水は必須である。石炭の補給は行わない。


キャブ

 運転室の見学も自由であった。

 日本各地で蒸機の保存運転が行われているが、使用されている機関車は、すべて一度は廃車になって静態保存されていたものである。(復活蒸機)
 それに対して、C57 1とC56 160の2両は、新製以来一度も廃車にならず、ずうっと車籍が継続している現役機関車なのだ。


機関士席

 機関士席は想像以上に狭い。
 2つの取手がついた歯車みたいなのが逆転機。機関車の進行方向をコントロールすると共に、速度に応じて締切率(カットオフ)を変化させるもの。
 その上が加減弁。シリンダへの蒸気供給量をコントロールする。
 左側にある真鍮のレバーは、ドレンコックとバイパス弁コック。更に撤砂レバーもある。ブレーキ弁は右側にあって、写真には写っていない。


ボイラ

 ボイラの前では、元国鉄機関士という白髪の紳士が、各機器の扱い方について語ってくれた。
 元機関士が指しているのは、空気圧縮機や発電機など、補機類への蒸気供給をコントロールするバルブ。


動輪

 直径1,750mm。私の背丈と同じ。
 この寸法は、日本の旅客用機関車の標準となり、C62型まで受け継がれた。


 

刻印

 多くのロッド類には、機関車の機番が刻印されている。
 川崎車両の社章が入ったものと、TZ(土崎工場の略号)と刻まれたものの2種類がある。前者は1937年の新製当時のもの、後者は1961年の脱線転覆事故からの復旧の際、補充されたパーツであろうか。

 機械油がしみ込んだ足回りは、思わず見とれてしまうほど美しかった。蒸気機関車は、人間が作った"機械"の頂点にたつものだと思う。


C57の諸元

  1次型
(1〜138)
2次型
(139〜169)
3次型
(170〜189)
4次型
(190〜201)
機関車重量(運転整備) 67.50t 68.33t
炭水車重量(運転整備) 48.00t 47.46t 47.82t
動輪上重量(運転整備) 41.32t 40.72t 41.76t
機関車重量(空車) 60.70t 61.23t
炭水車重量(空車) 19.00t 18.46t 18.42t
最大長 20,280mm 20,330mm 20,260mm
最大幅 2,800mm
最大高 3,945mm
固定軸距 3,800mm
全動輪軸距 3,800mm
全軸距 17,785mm
動輪直径 1,750mm
シリンダ直径 500mm
ピストン行径 660mm
ピストン直径 90mm
使用蒸気圧 16.0Kg/平方cm
火格子面積 2.53平方m
シリンダ引張力 12,820Kg
粘着引張力 10,330Kg 10,440Kg
最大図示馬力 1,290PS
最高運転速度 100Km/h
弁装置形式 ワルシャート
先台車復元装置 エコノミ
従台車復元方式 ばね
ボイラ水容量 6.0立方m 6.3立方m
水タンク容量 17.0立方m
燃料積載量 12.0t
炭水車形式 12-17C 12-17D 12-17E


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2001年6月18日制作
2001年10月7日訂補