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■関電トロリーバス(関西電力・黒部ダム〜扇沢)アルペンルート最後の乗り物は、黒部ダムと扇沢を結ぶ関電トロリーバスである。こちらも、路線はほぼ全線トンネルである。 黒部ダム建設にあたっては、まず、大町側からトンネルが掘削された。ダムの建設資材はトンネルを利用して運んだのである。その資材運搬トンネルが、観光ルートの一部となっている。バスの運行主体が関西電力となっているのも、このような歴史的経緯によると思われる。(なお、室堂から黒部湖に至るトンネル・ロープウエイ・ケーブルカーは、純粋な観光開発目的でダム完成後に開業した施設であって、ダム工事とは直接関係がない。) 黒部ダム駅も、駅全体が地下に設けられた構造である。さっきのケーブルカーの駅と較べて施設は小奇麗で、壁には化粧タイルが張られていたりする。恐らく相当の投資を行っているのであろうが、電力会社全体の投資額から見ればハナクソ程度の金額なのであろう。地元に多額のカネをばら撒いて原発を作るよりは、よっぽど経済的と思っているのかも知れない。 黒部ダム駅を出ると、少し勾配を上ってサミットとなり、あとは延々下り勾配が続く。トロリーバスは抑速制動をかけながら一定速度で下っていく。鉄道とするには少々急な勾配だが、内燃機関で運転するには換気が心配だ。そこで、当初からトロリーバスが使われたのだろうと推理する。やはりトンネルの中間地点に待避所があって、対向車が待っていた。 トンネルを出たところが扇沢で、駅舎はかなり大きい。広大な駐車場があって、何台もの貸切バスが止まっていた。 ■扇沢〜信濃大町〜松本〜名古屋〜新大阪団体ツアー客は、ここから再び貸切バスに乗るが、個人旅行の私は路線バスで信濃大町に向かうことになる。バスの乗客は10人ちょっと。トロリーバスから降りた客の大半は、貸切バスと自家用車におさまったことになる。私のごとく、自分で計画をたて、切符の手配をし、鉄道やバスを乗り継ぐような旅行者は、割合からするとごく一部なのだろうと思う。 信濃大町からは、臨時の快速で松本へと向かう。 松本からは、18時41分発のワイドビューしなの30号に乗り継ぐことができる。けれども、この列車の指定席券は早々に売りきれている。列車の始発は長野だし、自由席で座れなければ、かなり辛いことになる。私は、松本で途中下車することにした。 松本駅のコンコースに立ったとたん、私は新宿駅に来たような錯覚を覚えた。構内の掲示物のロゴタイプが、グリーンとダークグレーを基調とするJR東日本式になったからである。駅舎自体は国鉄時代そのままなのだけれど、雰囲気はまったく違うのだ。 松本では、駅前の居酒屋兼そば屋に入って、一杯呑んだ。メニューには、『いなご』や『蜂の子』などの郷土料理(?)が並んでいるが、これはちょっと食べる気がしない。『信州夏野菜』というのを注文したら、大皿に山と盛られたレタスが出てきた。2日間、駅弁や温泉旅館のご馳走などを食べ続けたので、新鮮な生野菜はことのほか旨かった。 時刻は20時を過ぎている。新宿行きの最終特急は既に出たあとで、こんな時間に松本にいて、今日のうちに大阪まで帰れるとはにわかに信じがたい。しかし、すべての列車が時刻どおりに走る限り、あと3時間と少しで、私は新大阪駅のホームに立てることになっている。 4つ目玉を光らせて、ワイドビューしなの30号が到着。 松本を出てしばらくは、ファミレスやコンビニの電照看板が目に付くが、塩尻を過ぎると、車窓には何も見えなくなる。乗客の大半は居眠りをしていて、車内は気味が悪いほど静かだ。 休日をめいっぱい楽しんだ旅行者を乗せて、振り子特急は漆黒の木曽路を駆け下っていった。 |
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2001年10月2日 制作
2001年10月3日 訂補