新型特急乗りまくり


783系(博多駅)

■新型特急行ったり来たり

 小倉からは、4本の列車・4種類の車両を乗り継いで鳥栖まで往復する手筈になっている。

 第一ランナーは、883系『ソニック28号』である。
 883系は、1995年に登場した制御付き振り子電車である。カーブが多く、高速バスとの競争が激しい日豊本線系統に投入され、博多-大分間を1時間59分で結んでいる。その外観もさることながら、鉄道ファンの度肝を抜いたのが斬新すぎるシートであった。誰もがあのキャラクターを連想する合成皮革張りのヘッドレストは、鉄道史上例をみない形状である。

 小倉では予想外の乗車があったが、何とか着座することができた。このユニークなシートは、少なくとも1時間足らずの旅行ではまったく違和感がないように思えた。

883系 883系の車内

 博多からは、17時22分発の特急『かもめ35号・みどり21号』に試乗する。車両は783系、JR九州が最初に登場させた特急車だ。車内の各所に、国鉄の"残り香"を感じる車両であるが、車両中央部に出入り口があるのが目新しい。短い編成での分煙などに有効であろうが、鉄道車両の中で最も乗り心地のいい車両中央部をデッキに使ってしまうのは少々もったいない感じがしないでもない。この3月のダイヤ改正では、『みどり』と『ハウステンボス』に集中的に投入されることになり、貫通型の運転台を取り付ける工事が行われている。

 17時45分、今日4度目の鳥栖着。

783系どうしの連結面 クモハ783の車内

 鳥栖では再度古レールの上屋骨組みを観察し、今度は17時55分発の『つばめ18号』に乗る。
 車両は『有明』と同じ787系だが、『つばめ』は遠路はるばる西鹿児島まで運転されるので、ビュフェがついている。ビュフェと言っても、かつての新幹線のそれとは大きく異なるものだ。チャーハンセットやホットケーキ等のメニューがあるが、基本的にはすべて冷凍やレトルト食品を電子レンジでチンするだけである。食器はすべて使い捨て。白い制服を着たコックの姿はないし、少なくとも、客の目に触れるところには、コンロや調理台は見当たらない。これでは単なる売店ではないかと思ったが、車両の片隅に保健所の営業許可書が掲示されていた。やはりこれは食堂車の一種なのだ。

 博多まであと20分しかないが、その営業は続いていた。とりあえずアイスコーヒーを注文。飲み物は紙コップにフタつき、ファーストフード店でおなじみのスタイルで供される。ちょっと期待外れの感がしないでもないが、冷たい氷が入っているので、まあ、よしとしよう。
 ビュフェの隣は、4人掛けのセミコンパートメントとなっている。自由席扱いなので、ビュフェで買ったおつまみを肴に一杯やるには格好の場所であると考えるが、今日はもちろん満席であった。

787系 787系のビュフェ(サハシ787)

 博多からは、19時05分発の『ソニック37号』で小倉に戻る。1日2往復だけ存在する885系使用のソニックである。小倉までの所要時間は45分。それでも、折尾・黒崎といった山陽新幹線を利用にしくい駅にはちゃんと停車するのには感心した。

■ひかりRailStar

 小倉では、わずか5分で『ひかり384号』に乗り継ぐ。

 『ひかり384号』は、この春、JR西日本が投入した新商品、700系『ひかりRailStar』でもある。
 700系は、JR東海と西日本が共同開発した最新鋭車両で、山陽区間では285Km/h運転が可能となっている。JR東海では目下『のぞみ』専用で運用されているが、航空機の台頭に危機感を抱いたJR西日本は、この車両を山陽区間専用の『ひかり』として新造することにした。
 輸送量の違いから、東海道の半分の8両編成。オール普通車であるが、指定席車には4列シートが奢られている。シートピッチそのものはJR東海と同じだが、実際に腰掛けてみると、たった数cmのシート幅の違いがかくも大きいのかと痛感する。東京寄りの8号車には、4人用の個室が準備されている。4人で使えば、ひとりあたりの料金は普通座席と同じというこれまた大サービスの接客設備である。もっとも、実際に車両を見たところ、個室の仕切りはパーテーションとでも言うべきもので、完全に隔離された空間ではない。(おそらく、空調などの関係であろう。)

 このひかりRailStar、小郡、福山、姫路、新神戸と言った準主要駅に停車しながらも、その俊足を活かして新大阪-博多間を平均2時間45分で走破する。客室内にはスピードメーター等はないけれど、小倉を発ってまもなく、ごおーっという250Km/h超特有の振動が感じられた。

700系ひかりRailStar(新大阪駅) 700系指定席車内

8号車の個室部分 幅広のひじかけを利用したドリンクホルダ

 幾度となく乗っている東海道新幹線は、その沿線風景は目に焼き付いていて、たとえ夜間であろうとも、数十秒車窓を眺めればだいたいどのあたりを走っているかの想像がつく。
 けれども、トンネルの多い山陽新幹線はそういう訳にはいかない。トンネルが多いこともあるが、車窓風景は概して平凡だ。たまの"明かり区間"も、目に付く建物は少なく、夜はただ単に闇の中を駈けていく印象である。だから、長い六甲トンネルを抜けて大阪近郊の市街地に入ると、いきなり光の海に放り込まれた感じがする。

 22時22分、新大阪着。東京方面から続々到着する下りの乗客に交じって、乗り換え改札を出た。

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2000.4.20制作 2000.4.21訂補